人材育成の設計図
次世代リーダー育成を成功に導く実践ステップと企業事例を徹底解説

VUCAと呼ばれる先の読めない時代において、企業の未来を担う次世代リーダーの育成は経営の最重要課題となっています。少子高齢化やグローバル化、DXの加速により、従来型の管理職育成では対応しきれない場面が急増しているためです。しかし、「何から始めればよいのか」「どのような能力を伸ばせばよいのか」と悩む人事担当者は少なくありません。本記事では、次世代リーダー育成の背景や求められるスキル、成功事例、実践的な育成手法までを体系的に解説します。読み終える頃には、自社に合った育成プログラムを設計する具体的なヒントが得られるはずです。
目次
●次世代リーダー育成が今、企業経営の最重要課題となる理由
- VUCA時代における経営環境の変化
- 多くの企業が抱える育成の現状と課題
●次世代リーダーに求められる資質と本質的な能力
- ビジョンを描く戦略的思考力
- 組織を動かすコミュニケーション力
- 変革を推進する行動力と決断力
●次世代リーダー育成研修で強化すべき4つの力
- 経営者視点で意思決定する力
- 組織課題を解決する変革推進力
- 中長期の成長戦略を描く構想力
- 自己を客観視する内省力
●次世代リーダー育成の成功事例3選から学ぶ実践知
- サントリーホールディングスの選抜型育成
- 日本電気(NEC)のリーダー変革プログラム
- 商船三井のグローバル人材開発
●次世代リーダー育成を成功に導く4つの実践ポイント
- 候補者を早期に見極め自覚を促す
- 修羅場経験と体系的研修を組み合わせる
- OJTとOff-JTを連動させる
- 越境学習で視野を広げる
●まとめ|次世代リーダー育成で企業の未来を切り拓く
次世代リーダー育成が今、企業経営の最重要課題となる理由

次世代リーダー育成は、企業の持続的成長を左右する経営戦略の中核です。なぜなら、経営環境の変化スピードが加速し、従来の延長線上ではリーダーが育たなくなっているからです。実際に、帝国データバンクの調査(2025年)では約7割(67.8%)の企業がリーダー人材の不足を感じています。ここでは、育成が急務となる背景と企業の現状を整理します。
VUCA時代における経営環境の変化
VUCAとは「変動性・不確実性・複雑性・曖昧性」の頭文字を取った言葉で、先を読みにくい時代を指します。デジタル化やグローバル競争、少子高齢化による労働人口減少が同時進行し、過去の成功パターンが通用しません。こうした環境では、指示待ちではなく自ら課題を発見し、変革を仕掛けるリーダーが不可欠です。加えて、事業モデルの寿命が短くなる中で、新規事業を立ち上げられる人材の確保も急務となっています。
多くの企業が抱える育成の現状と課題
多くの企業では、次世代リーダー候補の選定基準が曖昧で、場当たり的な研修に留まっているのが実情です。HR総研の調査では、中小企業(従業員300名以下)で次世代リーダー育成に取り組めている企業は約3割にとどまります。また、候補者を選抜しても「本人に自覚がない」「実践の場がない」といった理由で成果につながらないケースも多く見られます。中長期の視点で育成計画を設計し、経営層が本気でコミットする体制づくりが不可欠です。育成は一朝一夕には進まないため、5年、10年先を見据えた投資として捉える視点が求められます。
次世代リーダーに求められる資質と本質的な能力

次世代リーダーには、従来の管理職とは異なる複合的な能力が求められます。理由は、組織を維持するだけでなく、変革を主導する役割を担うからです。ここでは、特に重要となる3つの資質を掘り下げて解説します。
ビジョンを描く戦略的思考力
戦略的思考力とは、複雑な情報を整理し、中長期の方向性を描く力です。市場データや顧客動向を分析し、自社が進むべき道を明確に示せなければ、部下は迷いなく動けません。例えば、新規事業を任されたリーダーは、3年後・5年後の市場規模を予測し、参入シナリオを複数用意する必要があります。フレームワーク思考だけでなく、直感と論理を統合する力が問われます。
組織を動かすコミュニケーション力
どれほど優れた戦略も、メンバーの共感がなければ実行に移せません。次世代リーダーには、多様な価値観を持つ人材をまとめ、心理的安全性を保ちながら意見を引き出す力が必要です。世代・国籍・雇用形態の異なるメンバーが混在する現場では、一方的な指示ではなく対話型のリーダーシップが機能します。1on1ミーティングやフィードバック文化の醸成も、リーダーの重要な役割です。
変革を推進する行動力と決断力
変革推進力とは、抵抗勢力がいる中でも改革を前に進める力を指します。決断を先延ばしにするリーダーの下では、組織は停滞します。不確実な状況下でも仮説を立て、小さく試して修正する「アジャイル」な進め方が有効です。失敗を恐れず挑戦する姿勢を自ら示すことで、部下も安心してリスクを取れるようになります。
次世代リーダー育成研修で強化すべき4つの力

体系的な育成研修では、実務では身につきにくい経営視点の能力を集中的に鍛えます。ここでは、多くの企業が導入している研修プログラムで重視される4つの力を紹介します。
経営者視点で意思決定する力
経営者視点とは、部門利益ではなく全社最適で判断する視座です。財務諸表を読み解き、投資判断や事業ポートフォリオを考える訓練が有効です。ケーススタディやビジネスシミュレーションを通じて、経営者の疑似体験を積ませる企業が増えています。
組織課題を解決する変革推進力
自社の課題を自分ごととして捉え、解決策を立案・実行する力です。研修では、実在する組織課題をテーマにしたアクションラーニングが効果的です。数か月かけて課題に取り組み、経営層へ提言する形式は、実践力と当事者意識の両方を育てます。
中長期の成長戦略を描く構想力
構想力は、既存事業の枠を超えて未来を描く力です。新規事業立案研修やビジョン策定ワークショップを通じて、ゼロから発想する経験を積ませます。異業種の事例研究や社外専門家との対話も、視野を広げる有効な手段です。
自己を客観視する内省力
内省力とは、自身の強み・弱み・価値観を深く理解する力です。360度フィードバックやコーチングを通じて、無意識の思考パターンに気づかせます。自己認識が深まることで、他者への影響力も高まり、真の意味でのリーダーシップが発揮できるようになります。
ヒーズ株式会社は、人材育成を研修だけで終わらせず、社員教育・組織改善・経営改善を一体で支援しています。人の感情と経営数字の両面から、社員が成長し、会社の成果につながる仕組みづくりをサポートします。
次世代リーダー育成の成功事例3選から学ぶ実践知

理論だけでは育成の全体像はつかみにくいものです。ここでは、実際に成果を上げている大手企業3社の取り組みを紹介し、自社に応用できるヒントを探ります。
サントリーホールディングスの選抜型育成
サントリーホールディングスは、次世代経営者を育てる「サントリー経営塾」を長年運営しています。選抜されたメンバーは、経営陣との対話や自社の重要課題に対する提言を行い、実務と直結した学びを得ます。特徴は、社長自らが講師として関わり、経営哲学を直接伝えている点です。トップコミットメントの重要性を示す好例といえます。
日本電気(NEC)のリーダー変革プログラム
NECは、事業変革を牽引するリーダー育成を目的に「NECアカデミー」を設立しました。デザイン思考やアジャイル開発など、変革に必要なスキルを体系的に学べる仕組みが特徴です。社内公募制を採用し、意欲ある人材が自ら手を挙げられる文化を醸成しています。多様な部門から集まった参加者同士のネットワークも、変革の推進力となっています。
商船三井のグローバル人材開発
商船三井は、海運というグローバル事業の性質上、早い段階から海外経験を積ませる育成方針を採用しています。若手を海外拠点に派遣し、異文化環境で意思決定を経験させる「タフアサインメント」が中核です。加えて、外部ビジネススクールへの派遣も積極的に行い、経営理論と実践経験を両輪で強化しています。
次世代リーダー育成を成功に導く4つの実践ポイント

成功事例から共通して見えてくるのは、体系的かつ実践的な仕組みづくりです。ここでは、自社で育成プログラムを設計する際に押さえるべき4つのポイントを解説します。
候補者を早期に見極め自覚を促す
30代前半など早い段階で候補者を選抜し、「あなたは次世代リーダー候補である」と明確に伝えることが重要です。自覚は成長を加速させる最大の要因だからです。選抜された事実が本人に責任感と当事者意識を植え付け、日々の業務への向き合い方が変わります。
修羅場経験と体系的研修を組み合わせる
修羅場経験とは、困難な事業立て直しや海外赴任など、限界を超えるような挑戦の場を指します。座学だけでは腹落ちしない経営判断も、実際に苦しい状況で意思決定した経験によって血肉となります。研修で理論を学び、実務で応用する往復運動が育成効果を最大化します。
OJTとOff-JTを連動させる
OJT(現場での実践指導)とOff-JT(集合研修)を切り離すのではなく、テーマを連動させることが重要です。例えば、研修で戦略策定を学んだ後、自部門の3年戦略を上司と一緒に策定するといった流れです。学びを即実践する仕組みが、定着率を大きく高めます。
越境学習で視野を広げる
越境学習とは、社外や異業種の環境に身を置いて学ぶ手法です。副業、留学、他社への出向、社会人大学院などが代表例です。慣れた環境を離れることで自社の常識が相対化され、新しい発想が生まれます。同時に、外部ネットワークの構築にもつながり、リーダーとしての人間的な厚みが増します。
まとめ|次世代リーダー育成で企業の未来を切り拓く
次世代リーダー 育成に投資し、変化に強い組織をつくろう
次世代リーダー育成は、単なる人材開発ではなく企業の未来を左右する経営戦略です。VUCA時代においては、戦略的思考力、コミュニケーション力、変革推進力を兼ね備えた人材が不可欠です。成功のカギは、早期選抜による自覚形成、修羅場経験と体系的研修の組み合わせ、OJTとOff-JTの連動、そして越境学習の活用にあります。サントリーやNEC、商船三井の事例が示すように、経営層のコミットメントと中長期視点の投資が成果を生みます。まずは自社の育成体制を棚卸しし、小さな一歩から始めてみてください。5年後、10年後の組織の姿は、今日の育成投資によって決まります。
ヒーズ株式会社は、人材育成を研修だけで終わらせず、社員教育・組織改善・経営改善を一体で支援しています。人の感情と経営数字の両面から、社員が成長し、会社の成果につながる仕組みづくりをサポートします。
監修者
岩井 徹朗(いわい てつろう)
ヒーズ株式会社 代表取締役
都市銀行、インターネット専業銀行、ベンチャー企業など複数業界での経験を経て、2006年に独立。現在は、中小企業向けに組織づくり・経営改善支援を行う。
社員が自走できる仕組みづくりを重視し、「人の感情」と「経営数字」の両面から会社の成長をサポートしている。
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