ミセルチカラの磨き方
「正しいこと」がズレを生むとき
心意気を形にするコトノハ職人、岩井洋美です。

年々桜の開花も早くなっていますが、藤もまたもう満開を迎えて甘い香りを漂わせています。
その匂いに誘われるのは、大きなハチも同じようですけれど。
私は日頃から「言語化すること」をお伝えしています。伝わる言葉にして伝えることが大事だからです。
それには前提として「何を何のために」というものがあるわけですが、ただ「言葉にして言う」ということだけに集中しているように思うことがあります。
バスに乗ると最近は必ずアナウンスがあります。
「バスが止まるまで席を立たないでください」
停留所近くになると早めに席を立つ人はいます。特に降りるときに時間がかかる高齢者に多いこともあって、転倒事故防止のためのアナウンスです。転倒事故防止というのは大事な目的です。
ところが、「転倒事故を起こさないようにする」ではなく、「転倒事故を起こしてはいけない」と禁止事項のようになると、「止まるまで席を立つな」「止まるまで動くな」は伝えなければならないだけのものになります。
「止まるまで席を立たないでください」と停留所ごとに、ぼそぼそと聞き取れないくらいの声で言う運転手。
「危険ですから止まってから席を立ってください」と強い口調で命令のように言う運転手。
確かに言葉で大事なことを伝えてはいるけれど、ルーティンとして言わされているのを聞かされるのはうんざりしてしまいます。
先日のこと。
停留所に停まる前でちょっと動き始めた高齢女性がいました。
停留所前から「危ないから動かないでください」と怒鳴り気味の運転手。いよいよその女性がバスから降りるときです。
「危ないんだからバスが止まるまで動かないでくださいよ。」
とさらに追い打ちをかけ、
「他のバスでも絶対にやらないでくださいよっ!」
と明らかに注意を超えている口調です。
もちろん、転んで事故が起こってしまってからでは遅いというのは分かります。
でもやっぱり「伝え方」というのはあると思うんです。
ちょうどそのやりとりが見える場所に座っていた私は運転手の最後の捨て台詞にぎょっとしてしまいました。
「ちっともうれしくないんで。」
「ちょっとぐらい早く降りてもらっても自分はうれしくない」ということなのでしょうが、それはお客さんのためではありません。「バスで転倒事故を起こされたら自分が困る」ということです。
本来は「お客様の転倒事故防止」のためにアナウンスするはずが、「自分が運転しているときに転倒事故を起こしてはいけない」ためにすり替わっています。
自分がうれしいとかうれしくないとか、お客様の転倒事故防止を考えれば、まったく関係のないことです。それを直接お客様に言い捨てるとは。
「バスが止まるまで動かないでください」を別の言い方でアナウンスする人もいます。
「慌てなくていいですよ」「ゆっくり降りてください」と何度も繰り返します。そして、降りる直前には「良い週末を!」と声をかけることもあります。
同じことを伝えるにしても、お客様視点なのか、自分視点なのかでこんなに違います。
今回のバスで言うなら、「転倒事故防止」という目的の「ズレ」をそのままにして言葉にして伝えているということです。
これは、ビジネスも同じこと。
最初はあったはずの大事な前提も、やり続けていく中で変わってしまうことがあります。それがどんなに良いことであっても、ズレてしまえば意味がありません。
ずっとやってきたことが、「最近なんか違う」「やっている割に上手くいかない」ということはありませんか?
それは「ズレ」が原因かもしれません。「ズレ」は早めに対処することをお勧めします。
それでは、今日も1日お元気で。
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