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2026/05/08

決算が遅い会社は経営判断も遅れる|仕事の期限を短くして業務改善を進める方法

カテゴリー :ステージを上げる

仕事の期限を短くすると会社は変わる

決算が遅い会社では、経営判断が遅れやすくなります。なぜなら、売上や利益、資金繰りの状況を正確に把握できないまま、新年度の経営を進めることになるからです。

では、決算作業や月次決算を早めるには何が必要なのでしょうか。

ポイントは、単に経理部門に急がせることではなく、仕事の期限を短く設定し、全社で業務の進め方を見直すことです。

本記事では、中小企業の経営者に向けて、数字を早く出す会社に変わるための考え方を解説します。

 

仕事の期限を短くすると、やり方そのものが変わる

 

仕事の期限を短くすると、仕事の進め方そのものを見直すきっかけになります。

 

たとえば、社員に仕事を依頼する際、「明日までにお願いします」と伝える場合と、「1週間後までにお願いします」と伝える場合では、依頼された社員の行動は変わります。

明日までであれば、今日中に着手する必要があります。一方、1週間後までであれば、「今日はまだやらなくてもよい」と考え、すぐには取り組まないかもしれません。

 

もちろん、仕事の量や難易度への配慮は必要です。3時間あれば終わる仕事と、朝から晩まで取り組んでも終わらない仕事では、期限の設定は当然変わります。大量の仕事を毎回「これ、明日までね」と指示していれば、社員に無理な残業を強いることになり、ブラック企業と認識されかねません。

しかし、適正な量の仕事であれば、必要以上に余裕を持たせるよりも、期限をできる限り短く設定した方が、社員は工夫するようになります。

 

つまり、期限は単なる締切ではありません。仕事の優先順位を変え、やり方を見直し、業務改善を進めるためのきっかけになるのです。

 

決算作業が遅い会社は、新年度のスタートで出遅れる

 

特に、毎年発生する定例業務では、昨年よりもどれだけ短い時間で終わらせられるかが重要です。その代表例が、決算作業です。

3月決算の会社であれば、4月から5月にかけて経理関係の社員はたいへん忙しくなります。中には、ゴールデンウィーク中も休日出勤をして、決算作業を進めた方もおられるかもしれません。

 

一般的には、期末から2ヵ月以内に決算の数字を固め、確定申告を行う必要があります。毎月きちんと月次決算を行っている会社でも、期末にはより正確な数字を出すことが求められるため、通常よりも負担が増えるのは事実です。

また、銀行が融資判断を行う際には、決算書の数字が非常に重視されます。

 

「黒字なのか、赤字なのか」

「黒字であれば、前期比でどのくらい増減しているのか」

「利益は出ていても、資金繰りに問題はないか」

こうした点を精査するため、決算作業に一定の時間がかかるのはやむを得ません。

しかし、会社経営の流れで考えた場合、決算の数字がなかなか固まらないことには大きな問題があります。それは、新年度の数字を会計的に把握しづらくなることです。

 

毎年この時期になると、「決算の数字がまだ確定していないので、4月の数字がまだ出せません」と言われることがあります。

その結果、決算作業に2ヵ月かかり、4月と5月の試算表が出てくるのは6月後半以降になる。こうした会社は、財務面では新年度のスタートダッシュで大きく出遅れていることになります。

 

月次決算を早めることが経営判断のスピードを左右する

 

数字は、タイムリーに把握してこそ意味があります。

4月の売上や利益、資金繰りの状況が分かるのが6月後半であれば、経営判断はどうしても後手に回ります。

 

本来であれば、4月の数字を早めに把握し、

「今期の売上は計画通りに進んでいるのか」

「利益率に問題はないか」

「資金繰りに危険な兆候はないか」

「営業活動や経費の使い方を修正すべきか」

といった判断を、できるだけ早く行う必要があります。

 

ところが、決算作業が長引き、月次決算も遅れてしまうと、経営者は実態を把握できないまま新年度を進めることになります。

これは、車を運転しているのに、スピードメーターも燃料計も見ていない状態に近いと言えます。感覚だけで経営を進めることはできます。しかし、感覚だけでは、変化への対応が遅れます。

 

特に中小企業では、少しの判断の遅れが資金繰りや人員配置、営業方針に大きく影響します。だからこそ、月次決算を早めることは、単なる経理業務の効率化ではなく、経営判断のスピードを高めるための重要な取り組みなのです。

 

決算早期化は経理部門だけでは実現できない

 

では、決算作業や月次決算を早めるには、何が必要なのでしょうか。

 

まず大切なのは、「制度上2ヵ月以内だから、2ヵ月かけてもよい」と考えないことです。

たしかに、税金の計算には正確性が求められます。法人税や消費税の金額を確定するには、一定の確認作業が必要です。そのため、すべてを数日で終わらせるのは現実的ではありません。

 

しかし、3月決算の会社であれば、2月末から3月初めの時点で、おおよその法人税や消費税の金額を予測することは可能です。つまり、問題は制度上の期限ではありません。

2ヵ月かけて決算作業を行うのか。それとも、1ヵ月以内に決算作業を終わらせ、新年度の数字を早くフォローアップする体制に移るのか。

これは、会社の意思の問題です。

 

ただし、決算早期化は経理部門だけが頑張っても実現できません。

営業部門が売上や請求に関する情報を早く共有する。

製造部門や現場部門が在庫や原価に関する情報を正確に出す。

仕入先から請求書をできるだけ前倒しでもらう。

顧問税理士にも早めに納税額を確認してもらう。

 

このように、社内外の協力が必要になります。

決算作業が遅い会社では、経理担当者だけが悪いわけではありません。多くの場合、数字を早く出すための全社的な仕組みが整っていないのです。

 

業務改善の本質は、従来のやり方を見直すこと

 

決算作業を早めるには、期末だけ頑張っても限界があります。

大切なのは、毎月毎月、正確な数字を早めに出す習慣を積み重ねることです。月次決算が毎月遅れている会社が、決算の時だけ急に早く締めようとしても、なかなかうまくいきません。

 

普段から売上計上のルールが曖昧である。

請求書の回収が遅い。

在庫の確認が後回しになる。

経費精算が月末に集中する。

部門間で数字の共有が遅れる。

 

こうした状態を放置したままでは、決算作業だけを早めることはできません。つまり、決算早期化とは、経理の作業スピードだけの問題ではありません。会社全体の仕事の進め方を見直す業務改善そのものです。

これまでと同じやり方を続けている限り、これまでと同じ結果になります。もし、毎年のように決算作業が申告期限ギリギリまでかかっているなら、それは会社の仕事の進め方を見直すサインです。

 

ツールやシステムより先に、期限に対する意識を変える

 

昨今は、業務効率化のためのツールやシステムが数多く開発されています。

会計ソフト、経費精算システム、請求書管理ツール、販売管理システムなど、決算作業や月次決算を早めるために役立つ仕組みは以前よりも増えています。

 

しかし、ツールを導入すれば自動的に決算が早くなるわけではありません。なぜなら、従来通りのやり方を変える意思がなければ、どれだけ便利なシステムを入れても、仕事の流れは変わらないからです。

たとえば、請求書を早く処理できるシステムを導入しても、請求書を集めるタイミングが遅ければ、数字は早く締まりません。経費精算システムを導入しても、社員が期限ギリギリまで精算しなければ、経理の作業は後ろ倒しになります。会計ソフトをクラウド化しても、部門ごとの数字の確認が遅ければ、月次決算は遅れます。

つまり、業務改善の出発点は、ツールではなく期限に対する意識です。

 

「いつまでに数字を出すのか」

「そのために誰が何を前倒しするのか」

「従来のやり方のどこを変えるのか」

ここを明確にしない限り、決算作業はいつまでも期限ギリギリになります。

 

数字を早く出す会社は、経営の修正も早い

 

一部上場企業の中には、毎年の決算発表日を競うように早めている会社もあります。もちろん、それは一朝一夕にできることではありません。日々の月次決算、部門間の情報共有、社内ルールの徹底、システムの活用など、地道な努力の積み重ねによって実現しています。

中小企業が大企業と同じスピードで決算発表を行う必要はありません。しかし、数字を早く出すことの意味は、中小企業にとっても同じです。

 

数字が早く出れば、経営の実態を早く把握できます。実態を早く把握できれば、問題の発見も早くなります。問題の発見が早ければ、対策も早く打てます。

反対に、数字の把握が遅れれば、問題に気づくのも遅れます。売上の低下、利益率の悪化、資金繰りの不安、経費の増加。こうした兆候を見逃したまま数ヵ月が過ぎれば、修正にはより大きな労力が必要になります。

 

経営は、早く気づいた会社ほど早く手を打てます。だからこそ、数字を早く出すことは、会社を守り、成長させるための重要な経営課題なのです。

 

決算が遅い会社こそ、仕事の期限設定を見直すチャンス

 

もし、前期の決算も申告期限ギリギリまでかかったと感じているなら、それは仕事のやり方を見直すチャンスです。

 

「毎年そうだから仕方ない」

「経理が忙しいから仕方ない」

「税理士から数字が来ないから仕方ない」

このように考えている限り、状況は変わりません。

 

もちろん、経理担当者や顧問税理士に無理を押しつけるだけでは意味がありません。必要なのは、会社全体で期限の考え方を変えることです。

決算作業を2ヵ月で終わらせるのではなく、1ヵ月以内に終わらせるには何を変える必要があるのか。

月次決算を翌月後半ではなく、翌月上旬に出すにはどの業務を前倒しすべきか。

請求書、経費精算、在庫確認、売上計上、部門間の情報共有を、どのタイミングで完了させるべきか。

こうした問いを立てることで、会社の仕事の進め方は変わり始めます。

 

仕事の期限を短くすることは、社員を追い込むことではありません。会社全体で仕事の優先順位を見直し、無駄を減らし、経営に必要な数字を早く出すための取り組みです。

 

まとめ:数字はタイムリーに把握してこそ意味がある

 

決算が遅い会社では、経営判断も遅れやすくなります。

数字が出ていなければ、正しい判断はできません。新年度が始まっているにもかかわらず、4月や5月の数字を把握できるのが6月後半では、経営の修正はどうしても後手に回ります。

だからこそ、経営者は決算作業や月次決算を単なる経理業務として捉えるのではなく、経営判断のスピードを高めるための重要な仕組みとして考える必要があります。

 

その第一歩は、仕事の期限を見直すことです。

期限を短くすれば、やり方を変えざるを得ません。

やり方を変えれば、業務改善が進みます。

業務改善が進めば、数字を早く把握できるようになります。

数字を早く把握できれば、経営判断も早くなります。

 

数字は、タイムリーに把握してこそ意味を持ちます。

毎年の決算がギリギリになっている会社こそ、今年は仕事の期限設定を見直し、数字を早く出す会社へ変わるきっかけにしてみてはいかがでしょうか

 

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