ミセルチカラの磨き方
金利3%時代に中小企業が見直すべきこと|「金利のある世界」で問われる経営判断

日本でも本格的に「金利のある世界」が戻ってきました。
長期金利の指標となる10年国債利回りが3%を超える中、借入金を抱える中小企業にとって、金利上昇は資金繰りや事業投資の判断に直接影響します。
これまでの低金利時代には問題にならなかった経営判断も、今後は見直しが必要です。
では、金利3%時代に中小企業は何を変え、どこを見直すべきなのでしょうか。
30年ぶりの金利水準は「経験したことのない世界」
「今まで経験したことのない」
最近、大雨に関するニュースで、このフレーズをよく耳にします。
一方、経済の世界でも「今まで経験したことのない」状況に直面する人が増えています。
長期金利の指標となる新発10年国債利回りが上昇し、3%を突破したことが、約30年ぶりの水準として話題になりました。
つまり、30歳未満の人にとっては、まさに「今まで経験したことのない」高い金利水準になったわけです。
かつては定期預金の金利が10%だった
40年前に社会人になった私にとっては、正直なところ「3%=高金利」という感覚はあまりありません。社会人1、2年目の頃には、定期預金の金利が10%近い時代を経験しているからです。
単純に考えれば、1億円を定期預金に預けると、年間1,000万円近い利息を受け取れる時代でした。
当時、1年上の先輩がお客様から1億円の定期預金を獲得し、支店で称賛されていました。
その姿を見ながら、「1億円持っていれば、仕事をしなくても不自由のない暮らしができるんだなぁ」と感じたことを、今でもよく覚えています。
もちろん、現在とは物価や経済環境も違います。それでも、長く続いた低金利の時代だけを経験してきた人にとって、金利が上昇する環境そのものが大きな変化であることは間違いありません。
「金利のある世界」で中小企業の経営はどう変わるのか
金利のある世界は、余裕資金を持っている人にとっては有利に働きます。預金などから一定の利息を得られるからです。
しかし、銀行から借入して事業を行っている中小企業にとっては、話が変わります。
「お金が足りなければ借りる」が通用しにくくなる
これまでは借入金利が低かったため、「お金が足りなければ、銀行から借りればよい」という考え方でも、大きな問題にならないケースが少なくありませんでした。しかし、金利が上昇すれば、借入金が多い会社ほど支払利息の負担が増えます。
つまり、これからは「借りられるかどうか」だけでなく、「借りたお金で十分な利益を生み出せるか」まで考えなければなりません。
事業投資では「利益」だけでなく金利負担まで見る
設備投資や新規事業などにお金を投じる際にも、判断基準を変える必要があります。
これまでは、
「売上がどのくらい増えるか」
「利益がどのくらい出るか」
を中心に考えていた会社でも、これからは金利負担まで含めて判断する必要があります。
投資利回りと資金繰りをセットで考える
特に確認したいのは、次の2点です。
- この事業は、金利負担を上回るだけの投資利回りを期待できるのか。
- 収益が上がるまでの間、毎月の利息を支払い続けても資金繰りに問題はないのか。
事業そのものが黒字になる計画でも、利益が出るまでに時間がかかれば、その間も利息の支払いは続きます。だからこそ、売上や利益だけではなく、「時間」と「金利」を含めた資金繰りを見る必要があります。
リスケ中の会社ほど金利上昇への注意が必要
また、注意したいのが、銀行への元金返済を一時的に猶予してもらっている、いわゆるリスケ中の会社です。
リスケによって元金返済が止まれば、一時的には資金繰りが楽になります。しかし、借入金の元金そのものは減りません。そのため、支払利息もなかなか減らないことになります。
さらに借入金利が上昇すれば、元金が減っていないところに利息負担が増えるという状況にもなりかねません。
だからこそ、リスケ期間が終わるまでに、「どうやって収益力を回復するのか」をこれまで以上に真剣に考え、具体的な対策を実行する必要があります。
金利上昇時代のキーワードは「選別」
金利のある世界では、「選別」がより重要になります。
- すべての事業を続ける。
- すべての商品を売る。
- これまでの経費をそのまま維持する。
そのような経営が通用しにくくなっていきます。
事業には必ずリスクがあります。
事業がうまくいき、高い収益を上げられるのであれば、長期金利が3%でも大きな問題にはならないかもしれません。一方で、収益性の低い事業であれば、3%という金利が大きな負担になる可能性があります。
つまり、金利の高低そのものより、「その金利を上回る収益を会社が生み出せるか」が重要になるということです。
これまで問題なかった経営のやり方を見直す
「今まで経験したことがない」時代には、これまで何も問題のなかったやり方が、突然通用しなくなる恐れがあります。
だからこそ、経営者は今まで以上に会社の中身を見直す必要があります。
価格・仕入・固定費を改めて点検する
例えば、
- 商品の販売価格は今のままでよいのか。
- 仕入価格をもう少し下げる余地はないのか。
- 固定費になっているものを変動費化できないのか。
こうした一つひとつの見直しが、金利上昇への備えになります。
売上を増やすことだけが対策ではありません。
- 利益率を上げる。
- 無駄な支出を減らす。
- 資金が固定される期間を短くする。
こうした取り組みを積み重ねることで、金利上昇に耐えられる会社になります。
必要ならビジネスモデルそのものを見直す
場合によっては、商品や経費だけでなく、ビジネスモデルそのものを見直す必要があります。
実際、ある会社では長年続けてきたビジネスモデルを見直し、より付加価値の高い事業を立ち上げるための検討を始めています。
- 今まで続けてきたから続ける。
- 昔からこの方法で利益が出ていたから変えない。
そうした判断は、環境が変わればリスクになります。
金利のある世界では、
- 「何を続けるのか」
- 「何をやめるのか」
- 「どこにお金を投じるのか」
という経営者の選別力が、これまで以上に問われます。
「これぐらいなら大丈夫」という思い込みを捨てる
最近の大雨では、過去の経験からは想像できないような被害が発生しています。「今まで大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」という判断が通用しないケースが増えています。
これは会社経営でも同じです。
「これぐらいの借入なら大丈夫」
「この程度の金利上昇なら問題ない」
「今まで利益が出ていたから、これからも大丈夫」
そうした根拠のない予想に頼るのではなく、数字を確認しながら機敏に対応することが必要です。
大雨対策と高金利対策。
一見するとまったく違う話ですが、その構造はよく似ています。
- 環境が変わったら、判断基準も変える。
- 過去の経験だけに頼らず、今起きている事実を見る。
- そして、問題が大きくなる前に手を打つ。
「金利のある世界」で中小企業が生き抜くために必要なのは、金利の上昇を恐れることではありません。これまで当たり前だと思っていた経営のやり方を一つずつ見直し、変化に合わせて選別することです。
★関連する記事は「ビジネスチャンスをつかむ嗅覚に磨きをかける」

VUCAの時代は、経営者の頭の中で計算している勘定と、実際に会社が直面している勘定を整えることが肝要。視覚も聴覚もフルに活かしてビジネスチャンスをつかむ嗅覚に磨きをかけましょう。
ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。
上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。