ミセルチカラの磨き方
苦手の脇にビジネスチャンスあり|経営者が「不得意」を強みに変える方法

経営者にも、数字や営業、IT、人材育成など、得意な分野と苦手な分野があります。
苦手なことがあると、「経営者なのだから克服しなければならない」と考えがちですが、必ずしもすべてを得意にする必要はありません。むしろ、自分の不得意をきちんと自覚し、経営に必要なポイントだけに絞って取り組むことで、業績改善や新たなビジネスチャンスにつながることがあります。
大切なのは、苦手な仕事から逃げることでも、無理に克服することでもありません。
「何が苦手なのか」「その中で経営者として最低限押さえるべきことは何か」を見極めることです。
今回は、福山雅治さんのギターに関する発言をヒントに、経営者が不得意なことを強みに変え、会社の成長につなげる考え方についてお伝えします。
苦手だからこそ生み出せるものがある
俳優や歌手として活躍されている福山雅治さん。
以前、あるインタビューで、
「自分はギターを弾くのがそれほど上手いわけではない」
という趣旨の話をされていました。
また、ご自身が作曲した歌についても、
「実際にギターで弾いてみると、それほど難しくない」
と話されていました。
ギターはおろか、楽器類がまったく駄目な私からすれば(汗)、ギターを持ってステージで熱唱する福山さんは、十分にギターのプロフェッショナルに見えます。けれども、ご本人は「それほど上手くない」と自己評価されている。
この話を聞いて、私は逆のことを考えました。
もしかすると、ギターがそれほど得意ではないと自覚しているからこそ、数々のヒット曲を生み出すことができたのではないか、と。
得意すぎることが、かえって壁になることもある
もしギターが非常に得意な人が曲を作るなら、自分のテクニックを存分に発揮できる曲を作りたくなるかもしれません。
もちろん、高度な演奏技術に魅力を感じる人もいます。一方で、あまりにテクニックが前面に出ると、「凄いけれど、自分にはついていけない」と感じる人も出てきます。
結果として、好き嫌いが分かれる可能性があります。
これに対して、「自分はギターがそれほど得意ではない」と自覚していれば、自分でも弾きやすい曲を作るでしょう。すると、過剰なテクニックに頼らない分、より多くの人が親しみやすく、心に残る曲になる可能性があります。
もちろん、福山さんの発言には謙遜も含まれていると思います。
ただ、経営の視点から考えるなら、ここには一つのヒントがあります。
つまり、「成果を出すために、すべての能力が高い必要はない」ということです。
経営者にも得意・不得意があっていい
経営者にも、当然ながら得意なことと不得意なことがあります。
営業は得意だけれど数字は苦手。
商品開発は得意だけれど、人材育成は苦手。
人と話すことは得意だけれど、ITはよく分からない。
一人ですべての分野に精通している経営者は、むしろ少数派ではないでしょうか。
問題は、苦手なことがあることではありません。その不得意な分野と、どう付き合うかです。
苦手だからといって完全に避けてしまうのか。
それとも、苦手であることを認めたうえで、経営者として必要な部分だけ押さえるのか。
この違いが、会社の成長にも影響します。
数字が苦手な経営者は「全部」を見なくていい
例えば、「自分は数字が苦手」という経営者は少なくありません。しかし、経営者である以上、数字をまったく見ないわけにはいきません。
日々の経理作業や試算表の作成は社員や顧問税理士に任せることができます。
けれども、
「会社はいま儲かっているのか」
「資金繰りは大丈夫なのか」
「どの商品やサービスで利益が出ているのか」
といった重要な数字は、経営者自身がざっくりとでも把握しておく必要があります。
経営指標を増やしすぎると数字が嫌になる
一口に会社の数字といっても、見るべき数字はたくさんあります。
数字が得意な人なら、
「流動比率が低い」
「売掛金回転日数を短くした方がいい」
「自己資本比率を高める必要がある」
と、さまざまな経営指標を持ち出すかもしれません。
もちろん、どれも意味のある数字です。しかし、「数字の管理があまり得意ではない」という経営者が、最初からすべてを理解しようとするとどうなるでしょうか。
数字を見ること自体が嫌になってしまう可能性があります。それでは本末転倒です。
経営のツボとなる数字を1つ、2つに絞る
数字が苦手なら、まずはチェックする数字を1つか2つに絞る。
そして、「この数字だけは毎月必ず見る」と決める方が、実際の経営改善には有効なことがあります。
実際、あるクライアントさんは2期連続の赤字でした。
そこで私は経営者に、「粗利額と粗利率だけは必ず見てください」とお伝えしました。
経営や財務に関する細かい数字を、すべて勉強してもらったわけではありません。まずは粗利額と粗利率に絞って、毎月確認してもらったのです。
すると、1年後には黒字化することができました。
苦手でも成果が出れば経営者の行動は変わる
経営者には、「会社をもっと良くしたい」という欲があります。
そのため、たとえ苦手な分野であっても、逃げずに取り組み、小さくても成果が出ると、「もう少し良くしたい」「次はここも改善したい」という気持ちが生まれてきます。
先ほどの黒字化したクライアントさんも、その一人です。
以前は、自社のホームページにはほとんど関心がありませんでした。ところが、先日の打ち合わせでは社員に、「そろそろホームページも改修した方がいいよね」と話をされていました。
一つの改善が次の改善への意欲につながったのです。
これは、苦手な分野を完璧に克服したからではありません。必要なところに絞って取り組み、成果を実感できたからです。
苦手は克服するより「活かし方」を考える
苦手なことを、無理やり得意にする必要はありません。
経営者には限られた時間しかありません。不得意なことをすべて克服しようとすれば、本来もっと力を注ぐべき得意分野に使う時間まで減ってしまいます。
一方で、経営者として避けて通れない仕事もあります。
その場合は、「苦手だからやらない」ではなく、「苦手だからこそ、必要なところまで絞る」という発想が大切です。
会社の数字であれば、経理や財務の本に載っている細かな数字や経営指標を、すべて理解する必要はありません。しかし、自社の経営のツボとなる数字だけは、しっかり把握する。
営業が苦手なら、すべての営業手法を学ぶのではなく、自社に必要な営業プロセスだけ理解する。
ITが苦手なら、専門家のような知識を身につけるのではなく、経営判断に必要なポイントだけ押さえる。
不得意であることを前提に仕組みを考えるからこそ、シンプルで続けやすい方法が見つかることがあります。
「苦手の脇にビジネスチャンスあり」
経営者にとって大切なのは、苦手がないことではありません。自分は何が得意で、何が不得意なのかを自覚することです。
そして、苦手な仕事だからと逃げるのではなく、「経営者として、ここだけは押さえる」というポイントを決める。
全部できるようになる必要はありません。むしろ、苦手だからこそ余計なものを削ぎ落とし、本当に必要なものが見えてくることがあります。
高度なギターテクニックがなくても、多くの人の心に響く曲は作れる。
同じように、数字が得意でなくても、経営のツボとなる数字を押さえることで会社を良くすることはできます。
不得意は、経営者としての欠点とは限りません。その不得意とどう付き合うかによっては、新しい仕組みや改善策を生み出すきっかけにもなります。
まさに、「苦手の脇にビジネスチャンスあり」です。
★関連する記事は「赤字会社の立て直し成功の背景に役割を全うする覚悟あり」

必要とされることを自分の中でやりたいことに転換できれば、ビジネスを着実に飛躍させることができる。
ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。
上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。