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社員の不祥事は社長の責任?経営者が果たすべき3つの責任と組織改善の進め方

社員が不祥事を起こしたとき、社長はどこまで責任を負うべきなのでしょうか。
政治の世界では、大臣の不祥事や辞任に伴い、首相の「任命責任」が問われることがあります。企業経営でも同様に、社員の不祥事が発覚すると、経営トップの責任が厳しく追及されます。
しかし、社長が謝罪したり、辞任したりするだけでは、問題の根本的な解決にはつながりません。大切なのは、なぜ問題が起きたのかを明らかにし、同じ問題を繰り返さない組織をつくることです。
そのために経営者が果たすべき責任は、「採用する責任」「教育する責任」「委任する責任」の3つに整理できます。
今回は、この3つの責任を踏まえ、中小企業の経営者が日々の仕事の中で実践できる組織改善の進め方について考えます。
社員の不祥事はなぜ起こる?経営者が問われる3つの責任
政治の世界では、大臣が不祥事を起こして辞任すると、首相の任命責任が問題になります。
会社でも同じです。
社員が不祥事を起こした際、代表取締役など経営トップが謝罪したり、場合によっては辞任したりすることがあります。
もちろん、経営トップが最終的な責任を負うのは当然です。しかし、単に責任者が代われば、問題が解決するわけではありません。
政治における「任命責任」を企業経営に当てはめると、経営者には次の3つの責任があると考えられます。
- 採用する責任
- 教育する責任
- 委任する責任
社員の不祥事を防ぐには、この3つの視点から組織の問題を見直す必要があります。
不祥事の背景には組織の構造的な問題がある
先日、ある保険会社の不祥事について、新聞記事でその背景が取り上げられていました。
記事の内容を前述の3つの責任に当てはめると、次のように整理できます。
- 採用する責任:本部から人材採用のプレッシャーがかかり、保険会社の社員として適性に疑問のある人まで採用していた。
- 教育する責任:社長賞などの制度を導入した結果、売上第一主義の風潮が強まり、顧客本位の姿勢が後回しになっていた。
- 委任する責任:金融庁から問題を指摘されても、業務の根本的な進め方を見直さず、従来のやり方を続けていた。
もちろん、不祥事を起こした社員本人の責任がなくなるわけではありません。しかし、不正や問題行動が起きやすい環境を会社がつくっていなかったかという点は、経営者として検証する必要があります。
つまり、「不祥事は一日にしてならず」。
日々の小さな判断や行動の積み重ねが、やがて大きな問題となって表面化するのです。
社長が責任を取るだけでは再発防止にならない
社員の不祥事が起きたとき、経営トップが責任を取ることと、経営者として責任を果たすことは、必ずしも同じではありません。
仮に社長が辞任しても、採用基準や人材育成の仕組み、仕事の任せ方が以前と変わらなければ、似たような問題が再び起こる可能性があります。
重要なのは、次の3つの問いに向き合うことです。
- 採用する責任:どういう人材を、どのような基準で採用するのか。
- 教育する責任:採用した社員を、どのような考え方に基づいて育成するのか。
- 委任する責任:社員に仕事を任せた後、どのタイミングで進捗や問題点を確認するのか。
経営者がこうした問いを曖昧にしたままでは、組織の問題を根本から解決することは難しいのです。
中小企業で社員の不祥事や問題行動が起きやすくなる理由
中小企業では、大企業と比べて採用や人材育成に十分な経営資源を投入することが難しい場合があります。
例えば、人手不足が深刻になると、本来の採用基準に合致していなくても、人材を採用せざるを得ないことがあります。
また、せっかく優秀な人を採用しても、人材育成の考え方や仕組みが整っていなければ、期待したほどの成果を上げられないこともあります。
仕事を任せる場合も同様です。社員の自主性を尊重することは大切ですが、仕事を丸投げして、途中経過を確認しなければ、問題の発見が遅れる恐れがあります。
社長と社員の距離が近いことは強みにも弱みにもなる
中小企業には、社長と社員との距離が近いという特徴があります。
社員のちょっとした変化にも気づきやすく、何か問題が起きても、社長が直接対応して迅速に解決できることは、大きな強みです。しかし、社員数が増えてくると、社長一人ですべての社員の動向を把握することは難しくなります。
例えば、社員が10名を超える頃から、社長が常にアンテナを張り、全社員の仕事ぶりを観察して、問題に対処することが難しくなるケースもあります。それまで社長の目配りで対応できていたことも、社員数の増加に伴い、見落としが生じやすくなるのです。
そこで必要になるのが、社長個人の能力や努力だけに頼らない組織づくりです。社員の人数や事業規模に応じて、採用・教育・委任の仕組みを整えていくことが求められます。
経営者が実践したい組織改善の3つの方法
では、経営者が「採用・教育・委任」の3つの責任を果たすためには、具体的に何から始めればよいのでしょうか。
私がお勧めしているのは、次の3つです。
- 欲張らないこと
- 仕事の手順とやり方を明らかにすること
- 常に改善することを意識すること
いずれも、特別な制度や多額の費用が必要な取り組みではありません。中小企業だからこそ、日々の仕事の中で実践できる改善策です。
採用する責任:理想の人材を求めすぎず、採用基準を明確にする
社員の採用について経営者に話を聞くと、ついつい理想が高くなりがちです。
「営業もできて、部下の教育経験もあり、人柄もよく、パソコンにも詳しい」
このように、さまざまな能力を兼ね備えた人材を求める一方で、「月給30万円ぐらいで雇いたい」という希望を口にされることもあります。
しかし、求める能力と待遇のバランスが取れていなければ、理想の人材を採用することは難しくなります。そこで大切なのが、欲張らないことです。
例えば、入社時点では「最低限のパソコン操作ができればよい」とするなど、必須条件と入社後に身につけてもらう能力を分けて考えます。
もちろん、誠実さや法令を守る姿勢など、仕事をする上で欠かせない基準まで下げるべきではありません。重要なのは、採用時点ですべての能力を求めるのではなく、入社後に育成できる部分を明確にすることです。
何を必須条件とし、何を教育によって補うのか。
その判断基準を明らかにすることが、経営者の「採用する責任」を果たす第一歩になります。
教育する責任:仕事の手順を明確にして社員が育つ仕組みをつくる
採用した社員がワードやエクセル、メールなどを使いこなせたとしても、それだけで会社の仕事ができるわけではありません。実際の業務では、会社独自の仕事の進め方を理解する必要があります。
例えば、受注から納品までの流れや、お客様から問い合わせがあった際の対応方法などです。
ところが、こうした仕事の手順が明確になっていない会社も少なくありません。その状態で、新しく入社した社員に「自分で考えてやって」と言っても、なかなか戦力にはなりません。
社員に自分で考えて行動してもらうことは大切ですが、その前提となる基本的な仕事の進め方を教える必要があります。
とはいえ、最初から細かい業務マニュアルを作成する必要はありません。
少なくとも、
「何を」
「どの順番で」
「どうするのか」
という基本的な手順を、会社として文書化することから始めれば十分です。
仕事の手順が明確になれば、新しく入社した社員も業務を覚えやすくなります。また、仕事のやり方を共有することで、担当者によって品質や対応に大きな差が生じることも防ぎやすくなります。
社員個人の能力や経験に頼るだけでなく、会社として人を育てる仕組みをつくること。
これが「教育する責任」を果たす上で重要なポイントです。
委任する責任:仕事を丸投げせず、継続的に改善する
社員に仕事を任せることは、社員の成長や会社の発展に欠かせません。
しかし、仕事を任せることと、丸投げすることは違います。仕事を任せた後も、経営者には進捗や成果を確認し、必要に応じて軌道修正する責任があります。
その際、大切なのが、会社として目指す方向性を社員と共有することです。
経営者であれば、「この仕事を通して、こんな世界を実現したい」という思いがあるはずです。
それが経営理念やビジョン、ミッションとして、きれいな言葉にまとまっていなくても、最初のうちは問題ありません。大切なのは、折に触れて、自分が目指している方向性を社員に伝え続けることです。
「社長はまた同じことを言っている」
社員からそう言われるぐらい、繰り返し伝えることが重要です。
すると、その考え方に共感して、「それなら、お客様のために、ここを改善しよう」と、一歩踏み込んで行動する社員が出てくる可能性が高まります。
また、仕事を任せた後は、定期的に進捗や成果を確認し、問題があれば改善していくことが必要です。
確認するのは、単に売上や利益などの数字だけではありません。
お客様に余計な負担をかけていないか、仕事の進め方に無理がないか、会社として大切にしている考え方に沿って行動できているか。
そうした点も含めて確認することが、問題の早期発見や不祥事の予防につながります。
社員は社長の鏡!経営者の言動が組織風土をつくる
「社員は社長の鏡」と言われることがあります。
社員の仕事に対する姿勢や行動には、経営者自身の考え方や日頃の言動が反映されることがあるからです。
例えば、社員が不正をしてまで売上を上げようとした場合。
もちろん、不正を行った社員本人に責任があります。しかし、経営者としては、次のような点も振り返る必要があります。
「不正をしてでも、売上を上げた方が得だ」
そんなメッセージを、自分の言動や会社の評価制度を通じて、社員に伝えていなかったでしょうか。
また、自社の効率ばかりを優先して、お客様に余計な負担をかける仕事の進め方が放置されていた場合はどうでしょうか。
「お客様があってこそ、売上と利益が上がる」
という経営の基本的な考え方が、社員に十分浸透していない可能性があります。
経営者がどれだけ立派な理念を掲げても、実際の言動が伴っていなければ、社員には伝わりません。逆に、経営者が日頃からお客様を大切にし、問題があれば率先して改善する姿勢を示せば、その考え方が社員にも少しずつ浸透していきます。
会社の組織風土は、経営者の毎日の言葉と行動によってつくられていくのです。
不祥事を防ぐ組織づくりは日々の小さな改善から
社員の不祥事や仕事上のミスを、完全にゼロにすることはできません。また、採用基準を見直したり、人材育成の仕組みを整えたりしたからといって、すぐに成果が出るとは限りません。
それでも、経営者として取り組むべきことは明確です。
採用する際には、必要な能力や適性を見極める。
採用した社員には、仕事の基本的な手順と考え方を伝える。
仕事を任せた後も、定期的に状況を確認し、改善を続ける。
こうした日々の積み重ねが、社員の成長を促し、問題が起きにくい組織づくりにつながります。
不祥事が起きたとき、社長が責任を取ることは重要です。しかし、それ以上に大切なのは、経営者として日頃から責任を果たしていくことではないでしょうか。
「不祥事は一日にしてならず」。
だからこそ、問題が表面化する前から、会社の仕事の進め方や社員との向き合い方を見直していく必要があります。
「雨垂れ石を穿つ」という言葉があります。
小さな水滴でも、長い時間をかけて落ち続ければ、硬い石に穴を開けることができます。
会社の組織改善も同じです。一度に大きく変えようとするのではなく、できることから一つずつ改善を続ける。
その積み重ねこそが、不祥事を防ぎ、社員が自ら考えて行動する会社をつくる土台になるのです。
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