知恵の和ノート
社員の軽いルール違反が会社を壊す―経営者が下すべき決断とは?(第591話)
小さな違反を見逃す甘さが、会社の信頼を崩す。情に流されない判断が会社を守る。
「ここでクビにしないと、今度は俺が舐められるからね」
あるクライアントさんが、そう語ってくれたことがありました。
辞めさせる決断をしたのは、実は将来を期待していた幹部候補の社員。私も面識があり、知識も経験も豊富で、第一印象も良い人物でした。
しかし、あるトラブルが起き、会社に損害を与える結果となりました。社長も一瞬は迷ったようです。今ここで辞めさせるのは痛手。反省しているなら、もう一度チャンスを与えてもいいのではないか、と。
けれども最終的に出した判断は「退職してもらう」。本人ともきちんと話し合った上での結論でした。
理由はただ一つ。
「ここで甘い顔をすれば、会社全体が緩むから」
経営者としては、厳しい決断だったと思います。
長く経営を続けていると、どうしても情に流されそうになる瞬間があります。また、目の前の損得や人間関係を優先したくなります。でもそれが、会社の信頼を壊す最初のヒビになることもあるのです。
私自身がかつて勤めていた銀行でも、似たような経験があります。
ある同期が、取引先から預かった重要書類を、戻ってくるのが遅くなったので、金庫に入れず自分の机にしまって帰ってしまったことがありました。理由は単純。「金庫が閉まっていたし、上司に連絡するのも気が引けたから」。
「まあ、一日ぐらい大丈夫だろう」と思ったその瞬間が、運命の分かれ道でした。翌朝、まさかの行内検査。机を開けると、そこにはあるはずのない書類が。
彼はクビにはなりませんでしたが、すぐに人事異動となりました。社内の誰もが「ルールを守らなければ、こうなる」と心に刻んだ出来事でした。
会社にはルールがあります。それは社員を縛るためではなく、「信頼」を守るためのものです。
売上が足りない、成果が出ない—これは時に上司の指導不足や目標設定の誤りが原因かもしれません。しかし、「全員が知っているルールを破る」行為は、言い訳できません。
そこに経営者が目をつむってしまえば、組織は一気に緩みます。
怖いのは、大ごとになる前にはたいしたことないミスに見えるということ。でも、その小さなヒビが次第に広がり、ある日突然、大きな崩壊につながるのです。
会社を守る立場にある社長こそ、時には鬼にならなければならなりません。
それは、社員を追い詰めるための厳しさではありません。全員を守るための、未来に責任を持つ厳しさです。
「今は大丈夫だろう」という情が、未来に後悔へと変わる前に。
一人のために、みんなを傷つけないために。経営者が下す決断が、会社の文化をつくっていきます。
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