知恵の和ノート
社員が「社長の言葉」を誤解する本当の理由—組織が停滞するのは「文脈の欠如」が原因だった(第613話)
社長の言葉が誤解される背景には、伝える側と受け取る側の「文脈不足」あり。判断の前提となる構造を共有できるかが、組織の推進力を左右する。

年末も近くなり、NHKの大河ドラマ「べらぼう」も残り2回となりました。
その「べらぼう」では、江戸時代の絵師東洲斎写楽は、喜多川歌麿など複数の絵師たちの共同プロジェクトとして描かれています。
これに対して、ある歴史評論家の方が「史実無視の設定なので、残念だ」という主旨のネット記事を投稿したところ、「記事は野暮だ」「粋じゃない」といったコメントが寄せられている模様です。
大河ドラマなど歴史を題材にするドラマは史実をどこまで反映するかが、いつも話題になります。
ドラマには原作者や脚本家がおられます。このため、その方々の価値観や考え方が影響する訳ですが、前述の歴史評論家の方もフィクションの質について、記事の中で言及されています。
・史料で確認できる内容と齟齬を来さない
・当該の時代を生きた人たちのものの考え方に即して、形成されている
ことを判断基準とされ、今回の写楽の描き方は、後者の基準では問題ないが、前者の基準からすると、写楽は、昔は謎の絵師だったが、今は既に特定の人物だとハッキリしているので、「残念だ」と感じておられるのです。
私もたまたまそのネット記事を読んでいたので、「なるほど、そういう見方もあるのかぁ」ぐらいしか思っていませんでした。ただ、ネット上ではその記事に批判的な声も少なくない模様です。
言葉は文脈の中で、その意味合いが変わってきます。しかしながら、昨今はその言葉を一部切り取って、議論が行われることがあります。
大河ドラマの設定を巡って、「いいね」と思うか、「残念だ」と感じるかということ自体は、大した問題ではありません。一方、言葉の一部を切り取って議論することが続くと、某国との外交問題のように、大きな問題に発展するので、注意が必要です。
ドラマはフィクションであるという点では共通の理解があります。けれども、例えば、歴史を対象とするドラマで、どこまで史実に忠実であるべきかについては、人によって、また、同じ人でも状況によって判断基準が違います。
先日も、やはりNHKのドラマで戦前のエピソードを題材とした際、モデルとなった人物のご遺族から、ドラマで描かれた人物設定について抗議があったという記事を読みました。
誰かが何かを発言したり、表現したりする時、それを好ましいと感じるか、好ましくないと感じるかは、その人の判断基準によります。そして、お互いに相手の判断基準を理解していないことが多いので、表面的な言葉に過剰に反応して、無意味な議論を重ねることも少なくありません。
会社経営においても、経営者が話した内容について、社員が一部を切り取って、不快に感じることがあります。
その際、管理職の人が、「社長がAだと言っているのは、こういう文脈の中での話だ」と理解して、部下に伝えることができたら、大きな問題にはなりません。しかし、部長や課長が経営者の話を文脈の中で捉えず、「社長がAと言っているのは良くない」と感じていたら、経営者と社員との間の溝がさらに大きくなります。
組織の中で一つの目標に向かって働く中では、異なった意見が出るのは避けられません。その際、その意見の背景にある構造を文脈の中で捉えられるかどうかが鍵。
もし、社員にいろいろ提案しても、反対意見が多かったり、文句が多かったりすると日頃から感じておられるなら、
提案した事項の構造をあわせて伝える
ことで、理解が進みます。
そのプロセスを面倒くさいと思って省略してしまうと、社員からは
・社長は言っていることがコロコロ変わる
・社長は何を目指しているのかよく分からない
・社長の考え方にはついていけない
と思われて、業務が停滞するので、気をつけましょう。
すべての社員が構造を理解するとは限りません。しかしながら、構造をあわせて伝えることを続けていると、やがて、「なるほど!そういうことだったのか」と腹落ちする社員は必ず出てきます。
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会話が噛み合わない場合、「分かりやすい表現を使って言葉の意味を伝え切る」「『なぜ、そう言うのか』という意図も一緒に伝える」ことで改善できます。
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