ミセルチカラの磨き方
完成度の高いストーリーほど、酔いやすい?
心意気を形にするコトノハ職人、岩井洋美です。

秋晴れが続くのは気持ちの良いものです。
日中は夏日でも朝晩との寒暖差を感じると秋だなぁと思いますね。
さて、10日ほど前のことです。
日本ハムのシャウエッセンの容量変更の投稿がSNSで炎上しました。
ご存じの方もいるかもしれません。
最初にそのニュースを見たとき、私は正直、「何これ?」って思いました。
「会社と消費者の景色、ズレすぎ!」と直感的に感じたからです。
事実はこうです。
シャウエッセンは117g→107gに減量して価格は据え置き。
その代わり1本を大きくして肉感や食べ応えを高めたようです。
そして、それをお知らせする際のコピーが「時代に負けてたまるか。」だったわけです。
これに対して消費者からは、
「結局は減ってますよね…」「減らすなら値上げと言えばいい」
「『負けてたまるか』は内容量も価格も変えませんという時に使うのでは」
という反応が出てきました。
会社側ではたぶん、こんなストーリーが成立していたのでは?と想像できます。
物価高という時代 → 苦しい → でもただ減らしたくない → 1本を太くしておいしさを上げた → 私たちは諦めてない →「時代に負けてたまるか。」
でも消費者には、その社内ストーリーを歩いてきた時間がありません。
「内容量が減ります」→「時代に負けてたまるか」→「……いや、減ってるだろ」
になります。
私は正直、コピーに酔っているとさえ思ってしまいました。
「時代に負けてたまるか。」
これはめちゃくちゃ強くてカッコいいコピーです。
コピーそのものが悪いというより、コピーを書いた側には見えている景色を、受け手も見ている前提になっているのではないか?…そう見えてしまいます。
強いコピーだからこそ、作り手側では「これ!」となりやすい。
会社側の見ていた景色は、「総量は減らしたけど、食べ応えは上げた」
消費者側の見ていた景色は、「結局、減った」
「1本あたりの重量を増やしました!」は事実であっても、どの事実を中心に置いて、景色をつくっているかにズレがあります。
そして、さらにこの問題を厄介にしたのは、前日の予告投稿です。
前日の「大事なお知らせがあります」という投稿まで含めると、ただ「コピーに酔っている」で済まなくなります。
会社側では
前日の予告 → 何が起こるんだ? → 発表 →「時代に負けてたまるか。」→ シャウエッセンはこう変わります
というひとつのドラマとして設計していた可能性を想像することができます。
会社側のストーリーの中では、たぶん全部つながっているんです。
「原材料高騰で厳しい」→「でも価格は上げたくない」→「ただ量を減らすだけにもしたくない」
→「1本を大きくして満足感を上げよう」→「こんな時代だからこそ挑戦する」
→ 「時代に負けてたまるか。」
社内から見たら、いい話になっています。
ストーリーを語るというマーケティングのセオリー的には、むしろちゃんとやっていたんだろうと思います。
商品変更という事実だけを告知するのではなく、
「なぜ変えるのか」「何を守ろうとしているのか」「私たちはどうありたいのか」
を物語にする。
さらに予告して期待をつくり、「時代に負けてたまるか。」という強いコピーを置く。
でも、忘れてはいけないのは、自分たちのストーリーが完成すればするほど、「相手からはどう見えている?」の確認が抜けてしまうということです。
最初にこのニュースを知った時の私の「なにこれ?」は消費者の景色が見えなかったからです。
ただ単に「お客様目線を持ちましょう」ということではありません。
自分の景色も、相手の景色も、そこに実際にあるものも含めて、まず景色を見るということ。
自分が見たい景色だけを見ることでもありません。
相手に見せたい景色だけをつくることでもありません。
まず「見る」を飛ばして「見せる」に行ったら、完成度の高いストーリーでも、ものすごくズレることがあるんです。
「これ、明日スーパーで買う人から見たら、どう見える?」
この一言が、どこかで出ていたら、シャウエッセンのストーリーは違うものになっていたかもしれません。
それでは、今日も1日お元気で。
★関連する記事は「問題を解決する前に「景色を見る」」
問題を解決するために必要なのは、目の前の桜をもっと詳しく調べることではなく、一度顔を上げて、景色を見ることなのかもしれません。
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