ミセルチカラの磨き方
想定外の出来事にどう備える?経営者の仕事は「嘆くこと」ではなく「手を打つこと」

円安や物価高、金利上昇など、経営環境の変化によって、中小企業では想定外の事態に直面することがあります。しかし、経営者が自分では変えられない状況を嘆いても、問題は解決しません。
大切なのは、変化を予測して早めに備え、自分でできることに集中すること。
今回は、身近な停電の体験から、想定外の出来事に対する経営者の心構えと経営判断の基本を考えます。
想定外の事態は、事前に計画を立てても起こる
予定より長引いた停電で気づいたこと
今週、自宅で半日ほど停電する日がありました。
電気の配線を交換する工事が行われるため、住んでいる地域の中でも、自宅のある建物と管理事務所の入っている建物だけが停電の対象になったのです。
事前に案内された停電時間は、9時から17時まで。
当初、その日は自宅で仕事をする予定でしたが、停電中はWi-Fiも使えず、何かと不便です。そこで、予定を変更して外出することにしました。
そして、17時半頃に帰宅。
ところが、既に日が暮れている中、他の棟には電気がついているのに、自宅のある建物だけが真っ暗です。
「もしや、まだ停電しているのでは?」
そう思いながら近づいていくと、お隣りの方が様子を見に外へ出ていて、「まだ工事が終わっていないよ」と教えてくれました。
その方によると、
・9時半頃には電気が止まった
・当初は14時半頃には工事が終わり、電気も復旧する予定だった
・しかし、NTT関連の工事と重なったこともあり、工事が長引いている
とのことでした。
実は、最初に停電のお知らせをもらった際、私は「9時から17時と書いてあるけれど、そんなに長く停まっていることはないだろう」と勝手に思っていました。
また、「工事時間は多少余裕を持って設定されているはずだから、17時過ぎに戻れば、電気も復旧しているだろう」とも考えていました。
しかし、実際には17時半になっても工事は終わらず、最終的に電気が復旧したのは18時頃でした。
想定と現実が違うことは経営でも起こる
今回、私は停電の案内を受けて、あらかじめ予定を変更しました。ところが、事前に得た情報をもとに計画を立てても、想定外の出来事によって予定が狂ってしまったのです。
これは、会社経営でも同じです。
例えば、あるクライアントさんでは、「この売上を確保できるなら、このままある事業を続けた方が良い」と判断していました。しかし、その後の状況の変化によって、当初の判断を見直す必要が生じています。
もちろん、事前に計画を立てることは重要です。けれども、どれほど慎重に計画を立てても、すべてが想定通りに進むとは限りません。
むしろ、経営環境が目まぐるしく変わる時代だからこそ、想定外の出来事が起こることを前提に、経営判断を行う必要があるのではないでしょうか。
想定外の事態への対応は「自分でできること」と「できないこと」を分ける
自分で対応できることには、事前に備える
想定外の出来事が起こったとき、まず考えたいのは、
- 自分で対応できること
- 自分では対応できないこと
を分けることです。
今回の停電を例に考えてみましょう。
停電によって困ることの一つが、冷蔵庫を使えなくなることです。
そこで、私は事前に次のような対策を講じました。
- 当日は、なるべく冷蔵庫の中に食材を入れないようにする
- 保冷剤などを使い、冷蔵庫内の温度が上がらないようにする
これらは自分で対応できることです。
実際、事前に対策を講じていたおかげで、停電時間が予定より長引いたにもかかわらず、帰宅後も冷蔵庫の中は冷たいままでした。
つまり、停電そのものを防ぐことはできなくても、停電による影響を小さくすることはできたのです。
会社経営でも、同じことが言えます。
想定外の出来事が起こること自体は防げなくても、その影響を最小限に抑えるための準備はできます。
重要なのは、「何かが起こってから考える」のではなく、「何かが起こる可能性を考えて、先に手を打つ」ことです。
自分では変えられないことに振り回されない
一方、自分ではどうすることもできないこともあります。
今回の停電で言えば、私が電気工事の時間を短縮することはできません。工事が予定より長引いても、それは受け入れて対応するしかないのです。
ところが、世の中には、自分では変えられないことに必要以上に反応する人がいます。
例えば、
「円安を何とかしてほしい」
「石油価格が上がって困る」
「金利が高くなって資金繰りが厳しい」
といった声です。
もちろん、こうした不満が出るのも理解できます。
業種によっては、円安によって仕入原価が大幅に上昇することがあります。また、エネルギー価格の高騰は経費の増加につながり、借入金の多い会社では金利上昇が資金繰りに直接影響します。
しかし、一企業、一経営者がどれほど頑張っても、為替相場や金利の動きを思い通りに変えることはできません。
それならば、自分では変えられないことに不満を募らせるより、今の状況で何ができるかを考える方が、はるかに建設的です。
経営環境の変化に強い会社は、早めに手を打っている
円安・物価高・金利上昇を嘆く前に考えること
例えば、円安によって仕入原価が上昇している会社があったとします。
このとき、「もう少し円高になれば、利益が確保できるのに」と期待するだけでは、経営状況は改善しません。
それよりも
- 仕入先や仕入方法を見直せないか
- 販売価格に原価上昇分を反映できないか
- 利益率の高い商品やサービスに力を入れられないか
といったことを考える必要があります。
また、金利上昇によって借入金の返済負担が増えるのであれば、
- 今後の支払利息の増加額を試算する
- 資金繰り表を使って、資金不足の可能性を確認する
- 借入条件や資金調達の方法を見直す
といった対応が考えられます。
もちろん、これらの対策を講じたからといって、必ずしもすべての問題が解決するわけではありません。しかし、少なくとも「状況が良くなることを期待して待つ」だけではない、具体的な行動につながります。
経営者の仕事は、外部環境が自社に都合よく変わることを期待することではなく、今ある条件の中で、会社が生き残るための方法を考え、実行することではないでしょうか。
変化を予測し、先回りして準備する
また、物価や金利の上昇は、必ずしもある日突然始まるわけではありません。
例えば、今回のような経営環境の変化についても、以前からその兆候は見られていました。
実際、先を見据えて経営している方の中には、早い段階から価格の見直しや資金繰り対策などに取り組んでいる経営者もおられます。一方、状況が厳しくなってから慌てて対策を考えても、選択肢が限られてしまうことがあります。
だからこそ、経営者には、目の前の数字だけでなく、その数字に影響を与える環境の変化にも目を向ける姿勢が求められます。
大切なのは、将来を正確に予測することではありません。
「もし、この状況がさらに悪化したらどうなるか」
「もし、当初の想定と違う結果になったら、どう対応するか」
といった問いを持ち、あらかじめ複数の選択肢を考えておくことです。
想定外の事態に強い会社とは、想定外の出来事が起こらない会社ではありません。想定外の出来事が起こっても、慌てずに次の手を打てる会社なのです。
経営者に必要なのは「嘆くこと」より「手を打つこと」
腹を立てても、問題そのものは解決しない
今回の停電で、最初にお知らせを受け取ったとき、私は正直なところ、「どうしてウチのところだけ停電になるのか。面倒くさいなぁ」と思いました。
また、帰宅後、予定時間を過ぎても工事が終わっていないと分かったときも、「何やってんだよ。もう予定時間を過ぎているじゃないか」と腹が立ちました。
人間ですから、自分の想定とは違うことが起これば、不満を感じたり、腹が立ったりするのは自然なことです。経営者であっても、それは同じでしょう。
ただし、問題は、その感情をいつまでも引きずってしまうことです。
自分ではどうすることもできない状況に腹を立て続けても、事態が好転するわけではありません。むしろ、不満や怒りに意識が向いている間は、本来考えるべき対策がおろそかになる可能性があります。
経営者にとって重要なのは、感情を押し殺すことではなく、感情に振り回されず、次の行動に意識を切り替えることです。
変えられないことには備え、変えられることに集中する
変化の激しい経営環境の中で、事業を継続していくために必要なのは、
- 自分では変えられないことについては、早めに影響を予測して備える
- 自分で変えられることについては、具体的な対策を考えて実行する
という二つの姿勢です。
為替相場を変えることはできなくても、仕入方法や販売価格を見直すことはできます。
金利の動きを止めることはできなくても、資金繰りを見直し、借入金への依存度を下げるための対策を考えることはできます。
そして、売上が当初の計画に届かなかったとしても、事業の進め方や経営判断を見直すことはできます。
経営者が力を注ぐべきなのは、まさにこうした「自分で変えられること」です。
もちろん、すぐに成果が出るとは限りません。それでも、何もしないで状況の好転を待つより、できることから一つずつ手を打っていく方が、会社の未来を切り開く可能性は高まります。
想定外の出来事を、次の経営判断に活かす
今回の停電を通じて、普段は当たり前のように使っている電気のありがたさを改めて実感しました。
同時に、想定外の出来事に対する心構えについても、考えさせられました。
事前に情報を得て計画を立てても、その通りに進むとは限りません。また、自分ではどうすることもできない出来事も、これから先、何度となく起こるでしょう。
しかし、そのたびに不満を募らせたり、誰かのせいにしたりしていても、問題は解決しません。
むしろ、想定外の出来事が起こったときこそ、経営者の真価が問われます。
「なぜ、こんなことが起こったのか」と嘆くだけで終わるのか。
それとも、「この状況で、自分にできることは何か」と考えて、次の一手を打つのか。
その違いが、時間の経過とともに、会社の経営にも大きな差となって表れてくるのではないでしょうか。
経営環境がどう変わるかを、自分で決めることはできません。けれども、その変化にどう向き合い、どのような行動を取るかは、自分で決めることができます。
想定外の出来事が起こったときこそ、変えられないことを嘆くより、変えられることに目を向ける。そして、できることから早めに手を打つ。
それこそが、変化の激しい時代を生き抜く経営者に求められる姿勢だと、今回の停電を通じて改めて感じました。
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