ミセルチカラの磨き方

2026/09/25

数字は逃げれば魔物、向き合えば指標になる|経営者に必要な数字との付き合い方

カテゴリー :ステージを上げる

数字が苦手な経営者へ|会社を良くするために「数字と向き合う」本当の意味

「数字が苦手だから、経営数字を見るのはどうも気が重い」。

そう感じる経営者は少なくありません。

 

しかし、経営に必要なのは、暗算が速いことでも、経理の細かい実務に詳しいことでもありません。大切なのは、売上や利益、資金繰り、新規事業の採算性といった、経営判断に必要な数字から逃げずに向き合うことです。

特に新しい事業に取り組む際には、「面白そう」「うまくいきそう」という感覚だけでは判断できません。本当に利益が出るのか、どのくらいの資金が必要なのか、投資したお金をいつ回収できるのか。こうした点を数字で確かめて初めて、実現可能性が見えてきます。

 

数字は、避け続ければ経営者を不安にさせる「魔物」になります。一方で、きちんと向き合えば、次に何をすべきかを教えてくれる「指標」に変わります。

今回は、数字が得意か苦手かではなく、経営者が会社を良くするために、数字とどう向き合えばよいのかを考えます。

 

経営者に必要なのは「数字が得意」なことではない

私は「勘定を整える」ことを仕事の軸に置いているので、一部のお客様からは「数字が得意な人」と思われています。

しかし、本人にはその自覚がありません。

私は暗算があまり得意ではありませんし、営業ノルマのように「数字に追われる」ことも大嫌いです。大学受験でも、迷うことなく文系を選びました。

 

それでも、仕事では数字をよく使います。

なぜなら、数字には大きく三つの特徴があるからです。

  1. 数字には一定の答えがある
  2. 数字を使えば結果を検証できる
  3. 数字があれば論理的に説明できる

 

つまり、数字が好きだから使っているのではなく、経営判断を曖昧にしないために使っているのです。

経営者に必要なのも、計算が速いことではありません。必要な場面で必要な数字を確認し、その数字をもとに判断できることの方がはるかに重要です。

 

新規事業は「面白そう」だけでは判断できない

経営者と「どうすれば会社がもっと儲かるか」という話をしていると、さまざまなアイデアが出てきます。

中には、話を聞いているこちらまでワクワクして、「それ、面白いですよね」と思うようなアイデアもあります。

経営者の情熱は、新しい事業を始めるうえで大切です。しかし、経営判断では「面白い」という感覚だけで前に進むわけにはいきません。

 

新規事業で確認したい4つの数字

新しい事業に取り組む際には、少なくとも次のような点を確認する必要があります。

  1. 本当に利益が出るのか
  2. どのくらいの資金が必要なのか
  3. 投資した資金をどのくらいの期間で回収できるのか
  4. 今の会社の財務状況で実現できるのか

 

どれほど魅力的なアイデアでも、必要な資金が準備できなければ実行できません。また、売上が増えても、それ以上に経費が増えれば会社にお金は残りません。

だからこそ、新規事業では「やりたいかどうか」だけでなく、「実現できるかどうか」を数字で検証する必要があります。

 

経営者の「肌感覚」を数字で確かめる

長年、経営者の方々と新しい事業について打ち合わせをしていると、私自身にもある程度の肌感覚が身についてきました。

話を聞いているうちに、「これは面白いし、実現できそうだ」と感じることもあれば、「面白いけれど、実現するのはかなり難しそうだ」と感じることもあります。

 

ただし、これはあくまでも私自身の肌感覚です。当然ながら、経営者本人の肌感覚とは違います。また、私が詳しくない業界であれば、私の直感が間違っていることも十分にあります。

だからこそ、「感覚対感覚」で議論するのではなく、数字を使って確認します。

 

「面白くないけれど実現できる事業」もある

経営では時として、「面白いけれど実現するのが難しい事業」よりも、「それほど面白くないけれど実現できる事業」を優先した方がよい場合があります。

もちろん、最終的にどちらを選ぶかは経営者の判断です。

 

ただし、経営資源には限りがあります。使える資金にも、人材にも、時間にも限界があります。

だからこそ、限られた経営資源をどこに振り向けるのかを判断する材料として、数字が必要になるのです。

 

銀行から融資を受けるなら数字で説明する必要がある

数字が特に重要になるのが、新規事業のために銀行から融資を受けるケースです。

銀行の担当者が、その業界や事業について詳しいとは限りません。つまり、自分たちにとっては「絶対にうまくいく」と思える事業でも、その分野を知らない人に理解してもらい、融資の審査を通してもらう必要があります。

そんな時、私は経営者に、「まずは、私にも分かるように事業内容を説明してください」とお伝えすることがあります。

 

本気でやりたい事業ほど数字が出てくる

すると、本気でその事業をやりたい経営者は、

「この価格で販売する」

「これくらいの顧客数を見込んでいる」

「このくらいの費用がかかる」

「何年で投資を回収する」

と、次第に数字を使って説明してくれるようになります。

 

一方で、そこまで本気ではない場合、数字を詰めていくうちに、その事業について語らなくなることもあります。

ここで大切なのは、「数字が得意か苦手か」ではありません。その事業を本気で実現したいと思っているかどうかです。

本気であれば、「分からないから見ない」では済ませず、必要な数字を調べようとします。

 

「数字が苦手」という経営者が本当に苦手なもの

経営者から、「私は数字が苦手なんです」と聞くことがあります。

しかし、よく話を聞いてみると、本当に数字そのものが苦手というケースは、それほど多くありません。

 

苦手なのは、

・勘定科目

・貸借対照表

・細かな仕訳

・経理処理

といった、経理の専門的な実務であることが多いのです。

しかし、それと「経営に必要な数字が分からない」ことは別の話です。

 

むしろ、長年会社を続けてきた経営者ほど、

「この売上ならこれくらい利益が残る」

「この案件ならこれくらい人手が必要だ」

「この価格では採算が合わない」

といった経営の勘所になる数字を把握しています。

私よりもはるかに数字に強いと感じる経営者も少なくありません。

 

数字が苦手でも、数字から逃げてはいけない

問題なのは、「数字が苦手」という意識から、経営数字をまったく見ようとしなくなることです。

本当に数字が苦手だったとしても、会社をさらに良くしたいのであれば、数字と向き合うことは避けられません。

ただし、これは経営者本人がすべての数字を計算したり、自分で資金繰り表を作ったりしなければならない、という意味ではありません。

 

経営者の仕事は数字を「作ること」ではなく「向き合うこと」

自分より数字が得意な社員がいるのであれば、その社員に資料を作ってもらえばよい。社内に適任者がいなければ、お金を払って専門家に依頼する方法もあります。

大切なのは、「自分は数字が苦手だから、あとは任せる」で終わらせないことです。

 

出てきた数字を見て、

「なぜこの数字になっているのか」

「このまま進めて大丈夫なのか」

「どこを変えればもっと良くなるのか」

を考える。

そこまでが経営者の仕事です。

 

勘や経験を数字で裏付ければ経営判断は強くなる

長年会社を経営していれば、経験から生まれる勘や肌感覚があります。それを否定する必要はありません。むしろ、長年積み重ねてきた経営者の感覚は、数字だけでは分からない重要な判断材料になることがあります。

ただし、取引先や銀行、社員など、自分以外の人を巻き込んで新しいことに取り組むのであれば、「私はこう思う」だけでは相手を動かせない場合があります。

その時に役立つのが数字です。

 

勘や肌感覚を数字で裏付ける。あるいは、数字を見ながら自分の勘が正しいのかを確かめる。

この二つを組み合わせることで、経営判断の精度はさらに高まります。

 

数字は逃げれば魔物、向き合えば指標になる

私はクライアントさんに時折、「お金は逃げれば魔物になり、向き合えば指標になる」とお伝えしています。

お金のことを考えるのが怖いからと、資金繰りや利益から目を背ける。すると、不安だけが大きくなり、お金はますます得体の知れない「魔物」のように感じられます。

 

しかし、実際に数字を確認してみれば、

「あとどのくらい売上が必要なのか」

「どの経費を見直すべきなのか」

「どのくらいまで投資できるのか」

といった、次の行動が見えてきます。

 

これは「お金」を「数字」に置き換えても同じです。

数字は逃げれば魔物になり、向き合えば指標になる。

 

会社を良くしたいのであれば、数字が得意か苦手かはそれほど重要ではありません。重要なのは、本気で会社を良くするために、必要な数字と向き合う覚悟があるかどうかです。

経営者として長年培ってきた勘や肌感覚を大切にしながら、それを数字で確かめる。

その積み重ねが、より確かな経営判断につながっていくのではないでしょうか。

 

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