ミセルチカラの磨き方
商品とお客様の間にある「見えない時間」
心意気を形にするコトノハ職人、岩井洋美です。

暑い日が続いていた先週、初めて熱中症になりました。
大量に汗をかいて脱水するというのではなく、汗をかけずに体の中に熱がこもってしまい発熱。
いずれにしても、気をつけないといけないと身に染みて思いました。
体調を崩していた私に、元気を取り戻す「お待ちかね」が届きました。「桃」です。
「ともかくおいしい」と知人に勧められて予約をしていたその桃は、完全無農薬。
桃を作り続けて50年という桃職人が手掛けるものです。「いちばん味が乗ったときに届ける」という桃を、ワクワクしながら心待ちにしていたんです。
いよいよ、その桃が届きました。
箱に並んだ赤くてずっしりと大きな桃には、思わず「わぁ~!」っと声が出ます。
最初に口にした桃は、食べるにはちょっとフライング気味でしたけれど、それでもおいしくいただきました!
その翌日のこと、販売会社から1通のメールが届きました。
「桃が配送会社に引き渡されました。このメール到着後、2~3日で商品が届きます。」
「えっ…?もう昨日の夜食べましたけど…」
予約をしてからワクワクしながら待っていた桃が届いて、おいしいを実感した後に、このとんちんかんなメールが届いたわけです。
システムの問題なのか、単なる送信ミスなのかわかりませんが、お客様に理由なんて関係ありません。
とんちんかんメールが届いた瞬間に、「私たち、お客様を見ていません」と言っているようなものです。運営の雑さを認識してしまうことになりました。
「なんだかな~」で終わらせないのが私です…笑。
これは「桃」が別のものになっても同じ。
ビジネス全般で起こる問題として考えることができます。
この桃にはうたい文句がありました。マーケティングで言うなら、ヘッドコピーです。
「いちばん味が乗ったときに届ける」
HPにも、リーフレットにも、注文確認メールにも書かれていました。だから「発送日を確定できない」ということが、桃の価値を上げる役割を果たしていたとも言えます。
でも、実は「いちばん味が乗ったとき」というのは、「生産者である桃職人にとって」ということ。畑で収穫をする桃職人の肌感覚です。
よく考えればわかるとは言うものの、お客さん側からすれば、この素敵なうたい文句は「届いた今がいちばんおいしいとき」と自然に変換してしまいます。
つまり、同じ言葉で売り手は「収穫のベストタイミング」を伝え、買い手は「食べるベストタイミング」を受け取っています。同じ「ベストタイミング」でも、時間軸が違うということになるわけです。
この時間軸のズレを、くどくどと説明してくださいという話ではありません。
なぜ時間軸のズレが生まれるのか?
そのズレは、お客様が予約をしてから桃の箱を開ける瞬間までの「空白」にあると思います。
注文した日から桃が届くまでの間に、もしもこんなことがわかったらどうでしょう?
「今年は雨が多くて心配でした」
「ようやく色づいてきました」
「あともう少しで糖度が乗ります」
注文した人にこんな様子を知らせるだけで、「どうなってるんだろう…まだかなぁ」が「育ってるんだなぁ」に変わります。
待つ時間が、ただの待機時間ではなくなるわけです。
「いちばん味が乗ったとき」を体験しながら、桃を手にすることができるとも言えます。
でも、実際には注文確認メールが来てから、桃が届くまでは空白の時間で、なおかつ、桃をすでに食べた翌日に発送通知メールです。
これだけで桃の価値が下がります。それは桃そのものの味の話ではありません。
「1つの商品だけを販売しているわけじゃないから、そこまでできない」と思われたでしょうか?
売っている商品やサービスの種類や数ではなく、お伝えしたいのは「お客様の時間を想像できていますか?」ということです。
ホームページは見える。リーフレットも見える。商品も見える。でも、「待っている時間」「期待が育つ時間」「安心する時間」は見えません。
お客様にとっては、確かにそこにある「見えない時間」です。そして売り手がそこに何もつながなければ、その時間は「空白の時間」になります。
商品がどれだけ素晴らしくても、お客様がその商品と出会ってから手にするまでには、目には見えない時間があります。その時間も含めて、お客様は商品を受け取っているんです。
今回の桃も、商品そのものはとてもおいしいものでした。
「いちばん味が乗ったときに届ける」という言葉にも、桃職人としての誇りと経験を感じます。
だからこそ、もったいない。
あの翌日に届いたとんちんかんなメールから見えたのは、メールの送信ミスという小さな問題ではなく、そんな「見えない時間」の存在でした。
それでは、今日も1日お元気で。
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