ミセルチカラの磨き方

2026/08/06

商品とお客様の間にある「見えない時間」

カテゴリー :お客様目線

心意気を形にするコトノハ職人、岩井洋美です。

とんちんかんなメールから見えた「空白の時間」

暑い日が続いていた先週、初めて熱中症になりました。

大量に汗をかいて脱水するというのではなく、汗をかけずに体の中に熱がこもってしまい発熱。

いずれにしても、気をつけないといけないと身に染みて思いました。

 

体調を崩していた私に、元気を取り戻す「お待ちかね」が届きました。「桃」です。

「ともかくおいしい」と知人に勧められて予約をしていたその桃は、完全無農薬。

桃を作り続けて50年という桃職人が手掛けるものです。「いちばん味が乗ったときに届ける」という桃を、ワクワクしながら心待ちにしていたんです。

 

いよいよ、その桃が届きました。

箱に並んだ赤くてずっしりと大きな桃には、思わず「わぁ~!」っと声が出ます。

最初に口にした桃は、食べるにはちょっとフライング気味でしたけれど、それでもおいしくいただきました!

 

その翌日のこと、販売会社から1通のメールが届きました。

「桃が配送会社に引き渡されました。このメール到着後、2~3日で商品が届きます。」

 

「えっ…?もう昨日の夜食べましたけど…」

予約をしてからワクワクしながら待っていた桃が届いて、おいしいを実感した後に、このとんちんかんなメールが届いたわけです。

 

システムの問題なのか、単なる送信ミスなのかわかりませんが、お客様に理由なんて関係ありません。

とんちんかんメールが届いた瞬間に、「私たち、お客様を見ていません」と言っているようなものです。運営の雑さを認識してしまうことになりました。

 

「なんだかな~」で終わらせないのが私です…笑。

これは「桃」が別のものになっても同じ。

ビジネス全般で起こる問題として考えることができます。

 

この桃にはうたい文句がありました。マーケティングで言うなら、ヘッドコピーです。

いちばん味が乗ったときに届ける

HPにも、リーフレットにも、注文確認メールにも書かれていました。だから「発送日を確定できない」ということが、桃の価値を上げる役割を果たしていたとも言えます。

 

でも、実は「いちばん味が乗ったとき」というのは、「生産者である桃職人にとって」ということ。畑で収穫をする桃職人の肌感覚です。

よく考えればわかるとは言うものの、お客さん側からすれば、この素敵なうたい文句は「届いた今がいちばんおいしいとき」と自然に変換してしまいます。

つまり、同じ言葉で売り手は「収穫のベストタイミング」を伝え、買い手は「食べるベストタイミング」を受け取っています。同じ「ベストタイミング」でも、時間軸が違うということになるわけです。

 

この時間軸のズレを、くどくどと説明してくださいという話ではありません。

なぜ時間軸のズレが生まれるのか?

そのズレは、お客様が予約をしてから桃の箱を開ける瞬間までの「空白」にあると思います。

 

注文した日から桃が届くまでの間に、もしもこんなことがわかったらどうでしょう?

「今年は雨が多くて心配でした」

「ようやく色づいてきました」

「あともう少しで糖度が乗ります」

 

注文した人にこんな様子を知らせるだけで、「どうなってるんだろう…まだかなぁ」が「育ってるんだなぁ」に変わります。

待つ時間が、ただの待機時間ではなくなるわけです。

「いちばん味が乗ったとき」を体験しながら、桃を手にすることができるとも言えます。

 

でも、実際には注文確認メールが来てから、桃が届くまでは空白の時間で、なおかつ、桃をすでに食べた翌日に発送通知メールです。

これだけで桃の価値が下がります。それは桃そのものの味の話ではありません。

 

「1つの商品だけを販売しているわけじゃないから、そこまでできない」と思われたでしょうか?

売っている商品やサービスの種類や数ではなく、お伝えしたいのは「お客様の時間を想像できていますか?」ということです。

ホームページは見える。リーフレットも見える。商品も見える。でも、「待っている時間」「期待が育つ時間」「安心する時間」は見えません。

お客様にとっては、確かにそこにある「見えない時間」です。そして売り手がそこに何もつながなければ、その時間は「空白の時間」になります。

 

商品がどれだけ素晴らしくても、お客様がその商品と出会ってから手にするまでには、目には見えない時間があります。その時間も含めて、お客様は商品を受け取っているんです。

今回の桃も、商品そのものはとてもおいしいものでした。

「いちばん味が乗ったときに届ける」という言葉にも、桃職人としての誇りと経験を感じます。

 

だからこそ、もったいない。

あの翌日に届いたとんちんかんなメールから見えたのは、メールの送信ミスという小さな問題ではなく、そんな「見えない時間」の存在でした。

それでは、今日も1日お元気で。

 

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