ミセルチカラの磨き方

2025/10/09

顧客満足を超えて「心を満たす」─感情価値経営のリアル

カテゴリー :ステージを上げる

心意気を形にするコトノハ職人、岩井洋美です。

顧客満足を超えて“心を満たす

今週、「中秋の名月」はご覧になりましたか?

東京はあいにくのお天気で見られなくて残念でした。

 

さて今日は、ぜひみなさんにもシェアしたい話をしようと思います。「これぞ企業経営の本質」という私が体感した出来事です。

 

【はじまりの「うたかい」─母の卒寿祝いから生まれた物語】

 

先週のブログでも卒寿になった母のことを書きましたが、今週日曜日に、母の卒寿祝いのコンサートを開催しました。

ライブハウスに行くことが難しくなった母のための地元開催。歌うのはもちろん、私です。

歌手の岩井洋美です!

「卒寿祝い」ともなれば、家族が一堂に会して祝うものかと思いますが、我が家は夫、私、母という超スモールファミリー。

母とゆかりのある人、母をいつも気にかけてくださる人にお声をかけ、30名ほどの方と共に楽しい時間を過ごすことができました。

 

この「うたかい」に来ていただいたみなさんへのお礼に母からのプチギフトを用意するところから今日の話は始まります。

 

一通のメールに宿る、仕事への“心意気”

「そうだ!やっぱりこれにしよう!」

母にとっても私にとっても、生まれ故郷のお菓子と言えばこれ。

神戸亀井堂総本店の瓦せんべいです。

さっそくネットショップで注文をしたとき、ギリギリのタイミングでもあったので一言書き添えました。

「10/5のイベントで使いたいので、10/4までに届けてください」

 

すると、早速Sさんという女性からとても丁寧なメールが届きます。私のリクエストに応えてくださるための発送日の連絡でした。

早速私は手配をお願いするとともに、神戸生まれにとってお馴染みのお菓子を卒寿祝いに用意したいことをお伝えしました。

 

ここで勝手にSさんからのメールを掲載するわけにいきませんけれど、

発送日の確認

特別な時に瓦せんべいを選んだくれたことへの感謝

卒寿を迎える母への祝福

「幸せ溢れる素晴らしい会になりますようにと、心を込めて手配させていただきます。」

というSさんのお気持ちが溢れる返信が届いたことに私はもちろんのこと、母も大感激していました。

 

ネット注文の一顧客とのメールのやりとりだけでも、これだけ丁寧に心を込めた応対ができる人がいる。そして、自社商品を心から好きで仕事をしている。

企業としても「これはすごい!」と思わざるを得ませんでした。

 

今や「顧客満足度向上」を実現するためにあれやこれやの方法を取り入れる企業もあります。

それが間違っているとは言いませんが、短期間で即効性のある効果は期待できません。

「満足度」は人の感情から生まれるものですから、「どれだけ人の心に関心を寄せられるか」が根本に無ければ、一過性のもので終わるわけです。

 

「感心」が「感動」に変わった瞬間

この出来事には、まだ続きがありました。

「感心」は「感動」に変わります。

 

予定通り注文した商品が神戸から到着。

瓦せんべいが衝撃で割れないように丁寧に梱包されている中に小さな包みがありました。

 

開けてみると、それは手書きのお手紙と瓦せんべい。

お手紙をとてもうれしく読んだ後、思わず「え~っ!」と声を上げる私に、離れたところにいた夫も驚いたほどでした。

その瓦せんべいには「祝」と「卒寿」の焼印が押されていたのです。

もう、そのお気持ちがうれし過ぎて、夫に話しながらウルウル。そして、母は号泣。

感心が感動へ

いただいた瓦せんべいを美味しそうに食べる母が「お礼を言いたい」と言います。

その母の気持を尊重して、「卒寿」の焼印の瓦せんべいを手にした写真を添えて、Sさんにお礼のメールをお送りしました。

そして、ここからまた新たな感動が生まれます。

 

“一顧客の想い”を全社で共有する力

卒寿のお祝いの気持を伝えたいと思ってくださったSさん、特別な焼印の瓦せんべいを添えたいと上司の方に相談したそう。

すると「心から祝福し、是非ともお入れして差し上げるように」とSさんの気持を大切にした上司の方の即決がありました。そして、実際に商品を調達する担当者の方も同じ想いで、用意をしてくださったそう。

 

社内での「情報共有」もまた、よく言われていることですが、単に顧客情報を共有するだけではなく、Sさんの「一顧客に対する気持ち」まで共有しています。そして、共感を生み、それが商品を通して共鳴したわけです。

 

共有が共感を生み、共鳴へとつながる

常々、「共有→共感→共鳴」については、お伝えしていますが、まさにこれです!

頭で理解できても実際には難しいという企業が多いですし、まだまだ「感情価値」を軽視する向きが多いのも実情ですが、企業の姿勢としてお客様には伝わるのです。

 

150年企業に見る、“変わらぬ目的”の重み

自社の商品を愛している社員がいて、顧客の感情に寄り添うことがでる。

すぐに上司に言える関係性ができている。

お客様のためにできることを実行する企業風土がある。

 

時代が変わろうと、商品に対しても、顧客に対しても、企業として変わらぬ目的と想いを持ち続けているからこそ、積み重ねて根付かせた150年という重みと誇り。亀井堂総本店さんが、150年続く老舗企業である所以だと思います。

 

ファンを育てるのは、マニュアルではなく“想い”

自社のファンを大切にして、ファンをベースに中長期的に売上や事業価値を高める考え方があります。

ただ「ファンベース」という考え方は理想的ではあっても、マニュアルや仕組みだけでは難しいという一面も。

やり方や対策はマニュアル化できたとしても、お客様にどういう気持ちで向き合うかはマニュアル化も仕組化もできないからです。

 

瓦せんべいもそうですが、他社製の類似品はいくらでもありますから、「商品」だけでは、ファンにはなりません。

自社のファンになってもらうには、「心が通う」ということが大事なのだと今回改めて教えられた…いやいや…「教えていただいた」という気持ちです。

 

「ありがとう」を渡す母の手──経営の原点に還る時間

コンサート終了後、「感謝」「ありがとうございます」の焼印が入った「招福瓦」をご来場のみなさんお一人お一人に手渡す母。

動く方の左手で1つずつ取りながらうれしそうにしている母の姿は、なんとも微笑ましく、素晴らしい時間になったのは言うまでもありません。

まるで企業とお客様の“信頼の証”を見ているようでもありました。

招福瓦

この一連の出来事、私個人としては、Sさんのお気持ちで格別な思い出に、そして、「経営の本質」に関わる身としては、実体験として改めて考える機会になりました。感謝の気持ちでいっぱいです。

 

母が生まれた時からある亀井堂総本店の瓦せんべい。

私にとってもそうなのですが、「いつでもある」というのが当たり前過ぎて神戸を離れてからの方が、かえって想いが深くなったように思います。

手元に残る瓦せんべい、味わって食べることにしましょう。

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