ミセルチカラの磨き方
「やってみないと分からない」に逃げない|経営者が不都合な事実を直視する力
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
今週「昭和16年夏の敗戦」(猪瀬直樹著)を読み終わりました。今年の夏N H Kスペシャルで放送された「シミュレーション」の原作本です。
日米開戦が迫る中、若きエリートたちが導き出した結論「日米戦日本必敗」がなぜ活かされなかったのかをテーマとする内容。
官僚や軍人、民間企業の社員など、優秀な人たちが情報を集め、分析した結果、アメリカと戦えば、日本は必ず負けるというシミュレーションが出ました。しかしながら、実際の歴史としては、日本は真珠湾攻撃を始めてアメリカと開戦し、結果的に大きな犠牲を払うことになります。
ドラマの中でも、シミュレーションで出された結果について、政府の要人が「これは机上の演習であって、戦争はやってみないと勝つか負けるかは分からない」という主旨の発言をするシーンがありました。
けれども、昭和16年の時点で作成されたシミュレーションは、原爆投下を除けば、ほぼ正確に未来を予想していたことが分かります。
会社においても、新しい商品を開発したり、新規事業を始めたりする際に、いろいろとシミュレーションするかと思います。
その際、「この商品は必ず売れる」という予想が立っても、実際に販売してみると、あまり売れなかったということがあります。まさに、売れるかどうかは「やってみないと分からない」のです。
一方、新商品を売る際には、広告宣伝費がかかったり、販売に力を入れるために追加で人件費がかかったりします。また、広告を出しても、認知度が上がって売れ始めるまでには、一定の時間がかかります。
これらは「やってみなくても分かる」ことです。
前述の本の話に戻れば、当時は石油資源を確保するために、インドネシアなど南方に進出するかどうかを国として結論を出そうとしている時期でした。
南方に進出した場合、2年後には年間200万トンの石油が確保できるという数字の予測がありました。ただし、この数字はいろいろな仮定を設定した結果、算出された予測値であり、まさに「やってみないと分からない」ことです。
一方、日本が南方に進出すると、アメリカが日本の石油輸送船を攻撃し、日本に石油を輸送できなくなる恐れがあるという指摘がありました。その結果、仮に200万トンの石油を現地で採掘できても、日本としてその石油を使えなくなることも予測されていました。
これは言ってみれば、「やってみなくても分かる」ことの一つです。
「日米戦日本必敗」の結論が活かされなかった理由の一つが、シミュレーションの一部だけを使ったということ。
すなわち、2年後には200万トンの石油が確保できるという「やってみないと分からない」数字だけが使われ、石油を採掘できても、日本に運べない恐れがあるという「やってみなくても分かる」予測は無視されたのです。
人は見たくない事実に直面した際、どうしても目を逸らしたくなります。その際、不都合な事実を封印して、「やってみないと分からない」と考えてそのまま進んでいくのか、「やってみなくても分かる」事情を踏まえて、軌道修正するのか。
戦後80年、時代は大きく変わりましたが、私たち経営者も日本的組織の構造的欠陥を踏まえて、日々決断し、行動しなければならないと改めて思い知らされた一冊でした。
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