知恵の和ノート

2015/05/26

マニュアル破りは人命と企業を救う(第64話)

カテゴリー :文書化

マニュアルの規定を守って動きを止めるのは脆い会社
マニュアルの基本に返って動きを変えるのが強い会社

マニュアル破りは人命と企業を救う

1997年7月23日、羽田発新千歳行きの全日空機がハイジャックされました。

犯人は機長を刺殺、自ら操縦かんを握りましたが、当然のことながら上手く操縦できません。そして、あわや墜落直前という危機を救ったのは、たまたまその飛行機に乗り合わせていた非番のパイロットの山内純二さんでした。

今月の日経新聞「私の履歴書」によると、「山内さんはドアを蹴破ってコックピットに突入し、操縦かんを奪い返した」のですが、「山内さんの行動は実は航空会社の定めたマニュアルに反していた」そうです。

当時のマニュアルでは、ハイジャックへの対処方法=犯人の言うことを聞くだったので、犯人の言うことを聞かずに操縦かんを奪い返したのは文字通りで言えばマニュアル違反という訳です。

もちろん、このマニュアルができた背景には、ハイジャック犯の要求を入れてさえいれば、最悪の事態は回避できるという考え方があります。

このようにマニュアルを作る際には、基本となる考え方があってマニュアルの規定ができるという流れがあります。

けれども、多くの場合、マニュアルはいったんできてしまうと、その規定に各人の行動が縛られてしまうというリスクがあります。その場合、必要なのはできるだけ基本の大元に立ち返って行動する習慣を普段から意識することです。

先のハイジャックの例で言えば

  • 基本的な考え方:ハイジャック犯の要求をのんでさえいれば、最悪の事態は回避できる
     ↓
  • マニュアルの規定:ハイジャック犯の言うことを聞く

という構造です。
 

しかしながら、もっと根本に立ち返ると、航空会社のマニュアルにおける基本は乗客の安全を守るということです。

この基本の大元に立ち返れば、まさに飛行機が墜落寸前の状態の時には、マニュアルの規定を順守して犯人の言うことを聞くのではなく、マニュアルの規定を破って犯人から操縦かんを奪い返すことが正しい選択であることは明らかです。

このハイジャックの事例は異例の緊急事態なのでやや極端なケースかもしれません。けれども、会社の日頃の活動の中で「ウチのマニュアルではそれはできない」というマニュアル至上主義が横行して思考停止、ひいては行動が止まっているということはないでしょうか。

皆で考えて作ったマニュアルを守ることは大切です。誰も守らないマニュアルなど作るだけ時間のムダです。

でも、そのマニュアルを作った際には

「会社としてはこうあるべきだ」

「会社にとって一番大事なのはこれだ」

「会社としてこれだけは譲れない」

という基本中の基本があったはずです。そして、基本中の基本はごく当たり前のことが多いためについ意識してないことがあります。

マニュアルは日々進化させてこそ力を発揮します。

常に基本に立ち返ってマニュアルを見直す。マニュアルは変えるためにあります。

山内さんがマニュアルを破ってくれたおかげで乗員乗客516名の命が救われましたが、その中には後に日立をV字回復に導いた川村隆日立製作所相談役もおられました。

もしかすると、マニュアル破りがなければ、日本を代表する大手企業が一つなくなっていたかもしれません。

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