知恵の和ノート
なぜ「気がついた人がやる」は機能しないのか?組織が止まる構造を解説(第634話)
「気がついた人がやる」は助け合いではなく責任放棄である。人の善意に依存する限り、仕事は止まり、事故は必ず起きる。

「気がついた人がやる」
一見、合理的で助け合いのあるルールに見えます。
しかし、この一言がある会社ほど、
- 仕事が放置される
- 特定の人に負担が偏る
- 最終的に誰もやらなくなる
という状態に陥りやすいのです。
問題は人ではありません。構造です。
なぜこのルールは機能しないのか。そして、どうすれば組織として確実に仕事が回るのか。
現場で実際に起きた事例をもとに解説します。
「気がついた人がやる」が機能しない3つの理由
このルールが機能しない理由はシンプルです。
1.気がつかない人は永遠にやらない
そもそも全員が同じレベルで気づけるわけではありません。「気づく力」は個人差があり、教育されない限り揃いません。
2.気づいてもやらない人が必ず出る
人は「誰かがやるだろう」と思えば動きません。責任が曖昧な仕事は、後回しにされるのが自然です。
3.やっていた人ほど、やらなくなる
最初は善意で動いていた人も、「なぜ自分だけ?」という感情が生まれます。やがて、その人も手を止めます。
つまりこのルールは、最終的に誰もやらなくなる構造を内包しているのです。
ヒューマンエラーは防げない前提で設計せよ
もう一つ重要な視点があります。
それは、人は必ずミスをするという前提です。
どれだけ優秀な社員でも、
- うっかり忘れる
- 確認を飛ばす
- 思い込みで判断する
といったミスはゼロになりません。
実際に、痛ましい事故の多くは「あり得ないミスの重なり」で起きています。つまり、「気がついた人がやる」でミスをカバーする設計自体が無理なのです。
必要なのは、ミスが起きても止まらない構造です。
事故は「ルールがあるのに守られない」ときに起きる
例えば、バスの降車確認。
本来は、終点で乗客が全員降りたか確認するルールがあります。
しかし現実には、「今まで問題がなかったから大丈夫」という油断から、確認が形骸化することがあります。するとどうなるか。
- 確認を省略する
- 目視ではなくミラーだけで済ませる
- 結果として見落とす
こうして、事故が発生します。
ここから分かるのは、ルールがあるだけでは不十分ということです。守られる仕組みがなければ、ルールは簡単に崩れます。
成果が出た会社は「仕組み」で動かしている
ある会社では、見積り後のフォロー不足で失注が続いていました。
最初は「気がついた人がフォローする」という運用でしたが、当然ながら機能しません。そこで仕組みを変えました。
- 朝礼で「3日経過した案件」を共有
- 担当者をその場で決定
- 夕礼で実施確認
するとどうなったか。
- 放置案件が減少
- フォロー漏れがほぼ消滅
- 受注率が徐々に改善
ここで重要なのは、優秀な人が増えたわけではないという点です。仕組みを変えただけで結果が変わったのです。
中小企業でもできる「仕組み化」のポイント
「うちはシステムがないから無理」という声もよく聞きます。しかし、仕組み化に高度なツールは不要です。
ポイントは3つです。
1.タイミングを固定する(例:3日後)
→ 人の判断に任せない
2.担当を明確にする
→ 「誰がやるか」を曖昧にしない
3.実行確認の場を作る
→ やったかどうかをチェックする
この3つを押さえるだけで、「やるべきことがやられない状態」は大きく減ります。
「気づく人に依存する会社」から脱却せよ
経営者がやるべきことは明確です。
気づく人を増やすことではなく、気づかなくても回る仕組みを作ること。
「気がついた人がやる」というルールは、一見すると現場に任せているようで、実際には責任を放棄しています。
会社としてやるべきことは、人の善意に依存することではありません。構造で再現性を作ることです。もし今、「気がついた人がやる」というルールが残っているなら、それは改善の余地ではなく、設計ミスです。
組織は、設計通りにしか動きません。だからこそ、気づかなくても動く会社を設計することが、経営者の仕事なのです。
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会社をさらに良くするためには仕事を依頼する際に相互に確認するのはもちろんのこと、チェックリストの活用やデフォルトの設定も織り交ぜて、余計なストレスを減らす。
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