知恵の和ノート

2026/06/09

「考えて仕事をしない社員」を変えるには?経営者が始めたい思考力育成の習慣(第640話)

カテゴリー :社員教育

社員が考えないと嘆く前に、考える場をつくる。日常の出来事を仕事に置き換える習慣が、指示待ち組織を変える。

自ら考える社員はどう育つのか?中小企業でできる思考力強化の仕組み

「社員が考えて仕事をしてくれない」「指示を出さないと動かない」「すぐに上司へ答えを聞きにくる」。

このような悩みを抱えている経営者は少なくありません。特に中小企業では、社員一人ひとりが自ら考えて動くかどうかが、仕事の質やスピード、会社全体の成長に大きく影響します。

 

しかし、社員の思考力は「もっと考えろ」と言うだけでは育ちません。日頃から考える機会をつくり、身近な出来事から仕事のヒントを見つける習慣を積み重ねることが必要です。

 

本記事では、食品メーカーのパッケージ変更という身近なニュースを題材にしながら、社員が具体的な出来事を抽象化し、仕事に応用する力をどう育てるかを解説します。指示待ち社員を減らし、自ら考えて動く組織をつくりたい経営者は、ぜひ参考にしてください。

 

社員が考えて仕事をしない原因は「考える機会」の不足にある

 

経営者であれば誰しも、「自ら考えて仕事をする社員が欲しい」と考えています。

しかし、実際の現場では、

・指示しないと動かない

・考えずにすぐ上司へ答えを聞いてくる

・言われたことはやるが、それ以上の工夫がない

・仕事の背景や目的まで考えようとしない

といった社員の姿に悩むことも多いのではないでしょうか。

 

このとき、経営者はつい「なぜ考えないのか」「もっと主体的に動いてほしい」と感じます。

もちろん、社員本人の姿勢に課題がある場合もあります。けれども、もう一つ見落としてはいけないことがあります。

それは、日頃から「考える訓練」をしていない社員に対して、いきなり高度な判断や主体的な行動を求めても難しいということです。

 

考える力は、急に身につくものではありません。筋力と同じで、日々の小さな積み重ねによって少しずつ鍛えられていきます。

だからこそ、経営者や上司がやるべきことは、「もっと考えろ」と言うことではありません。社員が自然に考える機会を増やし、考える習慣を身につけられる環境をつくることです。

 

社員の思考力を育てるには、身近な出来事を仕事に結びつける

 

社員の思考力を育てるうえで有効なのが、身近に起こった出来事から仕事のヒントを得る習慣です。

難しい経営理論や専門的なフレームワークをいきなり学ばせる必要はありません。むしろ、最初は日常的なニュースや身近な話題を材料にした方が、社員も考えやすくなります。

 

例えば、最近ではお菓子などの食品メーカーが、商品のパッケージを白黒にしたり、使用する色の数を減らしたりする取り組みが話題になりました。

背景には、中東問題の影響によるナフサの供給不安があります。ナフサは石油由来の原料であり、包装資材やインクなど、想像以上に幅広い分野に関係しています。

 

このようなニュースを、単なる「大企業の話」「食品メーカーの話」として聞き流してしまえば、それで終わりです。

しかし、少し視点を変えると、ここから多くの仕事のヒントを得ることができます。

 

原価を下げて利益を確保する視点を持つ

 

まず考えられるのは、原価を下げて利益を確保するという視点です。

ナフサの供給不安がある場合、たとえ必要な量を確保できたとしても、仕入価格が上がる可能性があります。原材料費が上がれば、その分だけ利益は圧迫されます。

 

利益を確保するためには、商品価格を値上げするという方法もあります。しかし、値上げをすれば販売量が減る可能性もあります。

そこで、パッケージに使う色を減らす、白黒にする、仕様を見直すといった工夫によって、原価を抑える動きが出てきます。

 

これは食品メーカーだけの話ではありません。中小企業でも、原材料費、外注費、物流費、印刷費、システム利用料、広告費など、さまざまなコストが上昇しています。

そのとき、「仕入価格が上がったから仕方がない」で終わらせるのか。それとも、「どこに見直しの余地があるのか」と考えるのか。

 

ここに、社員の思考力の差が表れます。

社員が身近なニュースから「自社でも原価を見直せる部分はないか」と考えられるようになれば、仕事の質は大きく変わります。

 

必要な原材料や商品を確保できるかを考える

 

次に考えたいのは、必要な原材料や商品を確保できるかという視点です。

中東問題の影響は、石油関連の原材料に限られるように見えるかもしれません。しかし、実際には多くの商品や部材に石油由来の材料が使われています。

そのため、何かしらの原材料や商品を仕入れて製造・販売している会社であれば、「ウチの原材料は本当に安定して確保できるのか」を確認する必要があります。

 

また、自社が直接そのような原材料を扱っていなくても、主要な取引先が影響を受ける可能性があります。

取引先の仕入価格が上がる。納期が遅れる。生産量が減る。価格改定を求められる。このような影響が派生的に自社へ及ぶこともあります。

 

つまり、社員が考えるべきことは、「自社に直接関係があるかどうか」だけではありません。一見関係なさそうなニュースが、自社の仕入、販売、取引先、資金繰り、利益にどのような影響を与えるのか。

このように考える習慣がつくと、社員は単なる作業者ではなく、会社全体を見ながら動ける人材に近づいていきます。

 

当たり前を見直すことが仕事の改善につながる

 

今回のパッケージ変更から得られるもう一つのヒントは、当たり前を見直すことです。

 

食料品のパッケージは、カラーで美味しそうに見せるもの。売り場で目立つように、見栄えの良いデザインにするもの。

多くの人が、そう考えていたはずです。

 

しかし、今回のように原材料の供給問題が起こると、これまでの常識を見直さざるを得なくなります。その結果、白黒のパッケージや色数を抑えた商品が生まれました。

もちろん、それによって売上が増えるかどうかは、今後の検証が必要です。

 

けれども、ここで大切なのは、「これまでの当たり前は本当に正しいのか」と考えることです。

会社の中にも、長年続いている当たり前があります。

・この書類は必ず紙で保管する

・この会議は毎週必ず開催する

・この業務は特定の人が担当する

・この手順で進めるのが当然である

・この商品やサービスはこの形で提供するものだ

 

こうした当たり前の中には、本当に必要なものもあります。一方で、昔は意味があったけれど、今は見直した方がよいものもあります。

社員が考えて仕事をするようになるには、日常業務の中にある「当たり前」を疑う視点が必要です。

 

先手を打つ会社は広報面でも有利になる

 

今回のパッケージ変更では、カルビーのポテトチップスやかっぱえびせんが特に話題になりました。

他社でも同じような取り組みはありますが、ニュース等を見る限りでは、カルビーの動きが大きく取り上げられている印象があります。

 

ここから学べるのは、先手を打つことの重要性です。

同じような取り組みをする場合でも、最初に動いた会社は注目されやすくなります。二番手、三番手になると、どうしても話題性は薄れていきます。

 

これは中小企業にとっても重要な視点です。

中小企業は、大企業のように多額の広告宣伝費を投じることが難しい場合があります。だからこそ、話題性のある取り組みをいち早く行い、プレスリリースや広報活動につなげることが大切です。

 

もちろん、単なる目立ちたがりでは意味がありません。会社としての方針や社会的な背景、自社の工夫がきちんと伝わる取り組みであれば、広告費をかけずに知名度を高めるチャンスになります。

社員がニュースを見たときに、「ウチなら何ができるか」「今ならどんな発信ができるか」と考えられるようになれば、仕事の幅は広がります。

 

政府や社会の反応からも仕事のヒントは得られる

 

今回の件では、カルビーがパッケージを白黒にすると発表したことについて、政権幹部が「過剰反応ではないか」「他社も不安になる」といった趣旨の発言をしたとの報道もありました。

この報道が事実かどうか、また発言の是非をここで判断する必要はありません。

 

ただ、仕事のヒントを得るという意味では、「なぜ政府が一部企業の行動に反応したのか」と考えてみることも大切です。

企業の行動は、単に自社の利益だけで完結するものではありません。社会不安、消費者心理、業界全体への影響、政治的な受け止められ方など、さまざまな要素とつながっています。

この視点を持つと、社員の考える範囲はさらに広がります。

 

目の前の作業だけを見るのではなく、自社の行動が取引先、顧客、業界、社会にどう受け止められるのかを考える。

これは、管理職や幹部候補だけでなく、これから成長してほしい社員にも身につけてほしい視点です。

 

具体・抽象・具体で考えると、社員の思考力は鍛えられる

 

身近な出来事から仕事のヒントを得るときに有効なのが、具体・抽象・具体の流れです。

流れとしては、次のようになります。

身近で起こったことを取り上げる

 ↓

そこから得られるヒントを一つ考える

 ↓

そのヒントを基に仕事で応用できることを考える

 

例えば、食品メーカーの白黒パッケージという具体的な出来事があります。

そこから、「原価を下げて利益を確保する」「原材料の供給不安に備える」「当たり前を見直す」「先手を打って広報につなげる」といった抽象的なヒントを得ます。

そして最後に、「自社ではどのコストを見直せるか」「主要取引先に影響はないか」「社内の当たり前を一つ変えられないか」「プレスリリースにできる取り組みはないか」と具体的な行動に落とし込みます。

 

ここで重要なのは、最初から正解を求めすぎないことです。

社員が出した意見に対して、「それは違う」「そんなことは無理だ」とすぐに否定してしまうと、社員は考えることをやめてしまいます。

 

大切なのは、正解か不正解かを判断することではありません。具体的な話題から一度抽象化し、もう一度具体的な仕事につなげる。この思考の流れを繰り返すことです。

そして、思いついたことの中から、小さく試せるものを実際にやってみる。そこまで進めて初めて、考える力は仕事の成果につながります。

 

中小企業でもできる社員の思考力育成の仕組み

 

社員の思考力を鍛えるための本や研修はたくさんあります。

もちろん、それらを活用することも有効です。しかし、難しい理論や専門的な手法を知らなくても、日常の中でできることはあります。

 

例えば、あるクライアントさんでは、朝礼の際に新聞やニュースで出た話題を取り上げ、社員がそこから得た気づきを交代で発表する取り組みを行っています。

これは、特別なお金をかけなくても始められる人材育成です。

 

ポイントは、単にニュースの感想を言わせることではありません。

「その出来事から何を学べるか」

「自社の仕事に置き換えると何が言えるか」

「明日から試せることは何か」

ここまで考えることです。

 

最初は浅い意見しか出ないかもしれません。的外れに感じる発言もあるかもしれません。しかし、そこで経営者や上司がすぐに正解を教えてしまうと、社員はまた答えを待つようになります。

大切なのは、考える場を継続することです。

社員の思考力は、短期間で劇的に変わるものではありません。けれども、地道に実践を繰り返すことで、少しずつ確実に身についていきます。

 

指示待ち社員を減らすには、経営者が考える場を設計する

 

「社員が考えて仕事をしない」と感じたとき、経営者はつい社員本人の問題として捉えがちです。しかし、社員が考える機会を与えられていなければ、考える力は育ちません。

仕事の中で考える場面が少ない。いつも上司が先に答えを言ってしまう。失敗を恐れて意見を出せない。考えても評価されない。このような環境では、社員が自ら考えて動くようになるのは難しいです。

 

だからこそ、経営者がやるべきことは、社員に「考えろ」と言うことではありません。

考える機会をつくること。考えたことを発表する場をつくること。小さく試すことを認めること。そして、考える習慣が続く仕組みをつくることです。

指示待ち社員を減らすには、日々の仕事の中に「考える練習」を組み込む必要があります。

 

まとめ:社員が自ら考えて動く組織は、日々の習慣から生まれる

 

自ら考えて仕事をする社員は、突然生まれるわけではありません。

日常の出来事に関心を持ち、そこから仕事のヒントを見つけ、自社の業務に応用する。この小さな積み重ねによって、社員の思考力は少しずつ鍛えられていきます。

 

今回の食品メーカーのパッケージ変更のように、一見すると自社には関係なさそうなニュースでも、視点を変えれば多くの学びがあります。

原価を下げて利益を確保する。必要な原材料を確保する。当たり前を見直す。先手を打って広報につなげる。社会の反応から自社の行動を考える。

このように、身近な出来事を仕事に結びつける習慣が、社員の考える力を育てます。

 

「社員は考えて仕事をしない」とぼやく前に、まずは考える機会を社内につくること。要は、やるか、やらないかです。

社員の思考力を育て、自ら考えて動く組織をつくりたいなら、今日のニュースや身近な出来事を題材にするところから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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