知恵の和ノート

2026/07/14

楽なアドバイスを選ぶ前に|経営者が確認すべき3つの判断基準(第645話)

カテゴリー :経営者

楽な方法を選ぶことが悪いのではない。問われるのは、失うものを理解し、行動量・質・代償を見極め、目的から逆算して自らの決断を正解に変えられるかだ。

経営者はアドバイスを鵜呑みにするな|目的から逆算する意思決定の方法

経営者が仕事を進めるうえで、専門家や経験者からアドバイスを受ける機会は少なくありません。その際、「毎日やるべき」と「週3回でもよい」という2つの意見があれば、多くの人は負担の少ない方を選びたくなるものです。

しかし、楽に実行できるアドバイスが、自社の目的や欲しい成果に合っているとは限りません。行動量を減らすことで生じるデメリット、決めた回数を上限にしてしまう危険性、量と質のバランスまで考えなければ、思うような結果につながらないことがあります。

大切なのは、アドバイスをそのまま鵜呑みにするのではなく、「自社は何を実現したいのか」という目的に照らして判断することです。本記事では、経営者がアドバイスを選ぶ前に確認しておきたい3つの判断基準について、情報発信の事例を交えながら解説します。

 

楽なアドバイスが正しいとは限らない

たとえば、次のような2つのアドバイスがあったとします。

A:毎日取り組んだ方がよい

B:週3回取り組めばよい

 

この場合、たいていの人は、負担の少ないBを選びます。

もちろん、時間や人員、資金に限りがある中で、無理のない方法を選ぶこと自体が間違いなのではありません。ただし、「楽だから」という理由だけでアドバイスを選ぶと、本来得られるはずだった成果を逃す可能性があります。

 

経営者が負担の少ないアドバイスを選ぶ際には、少なくとも次の3点を確認する必要があります。

  1. 行動量を減らすデメリットを受け入れられるか
  2. 決めた回数を行動の上限にしていないか
  3. 回数だけでなく、内容の質も確保できているか

 

判断基準1 行動量を減らすデメリットを受け入れる

会社が見込み客に向けて情報発信する場合を考えてみましょう。

  • 毎日情報を発信する
  • 週3回だけ情報を発信する

 

単純に比較すれば、毎日情報を発信した方が、見込み客の目に留まる機会は多くなります。発信回数が多ければ、必ず成果が出るわけではありません。しかし、接触回数が増える分、会社や商品を知ってもらえる可能性は高まります。

一方、週3回の情報発信は、毎日発信するよりも負担が少なくなります。ただし、競合他社が毎日情報を発信しているのであれば、発信量の差が認知度や接触機会の差につながる可能性があります。

 

できない理由だけでなく、やらない影響も考える

人手や時間、予算の制約から、毎日実行することが難しい場合もあります。そのような事情がある中で、週3回に絞るという判断は十分あり得ます。

ただし、その際に必要なのは、「毎日は難しいから、週3回にする」と考えるだけではありません。同時に、「週3回に減らすことで、どのような機会を失う可能性があるのか」まで考える必要があります。

少ない行動量を選ぶなら、そこから生じるデメリットも理解したうえで決断することが重要です。楽な方法を選びながら、毎日取り組んでいる会社と同じ成果を期待するのは難しいからです。

 

判断基準2 決めた回数を行動の上限にしない

「週3回でもよい」と言われると、それを最低限の目安ではなく、行動の上限として捉えてしまう人がいます。

時間に余裕がある日でも、「週3回と決めたから、これ以上はやらない」と考えてしまうケースです。

しかし、行動量を減らすデメリットを理解しているのであれば、自分で上限を固定してしまうのは、非常にもったいないことです。

 

小さく始めても、徐々に行動量を増やす

最初から毎日実行することが難しければ、まずは週3回から始めても問題ありません。

大切なのは、その回数を固定しないことです。

 

たとえば、

最初の1ヵ月は週3回

翌月は週4回

さらに慣れたら週5回

というように、実行力や体制に合わせて行動量を増やしていく方法があります。

始める時点では同じ週3回でも、その回数を上限と考える会社と、将来増やすための出発点と考える会社では、時間の経過とともに大きな差が生まれます。

 

経営改善や営業活動、人材育成でも同じです。

最初に決めた基準を守ることだけが目的になると、成長が止まります。状況の変化に合わせて行動量を見直し、より高い成果を目指す姿勢が必要です。

 

判断基準3 行動量だけでなく質にも着目する

一方で、回数だけにとらわれすぎるのも問題です。

情報発信では、量とともに内容の質も問われます。

 

「毎日でなくてもよい」というアドバイスの背景には、次のような考え方があるかもしれません。

回数を増やすことだけが目的になっている

内容が薄く、見込み客に役立つ情報になっていない

無理に毎日続けることで、発信内容が陳腐化している

それなら回数を減らして、価値のある情報を届けた方がよい

この考え方には、十分な合理性があります。

 

量を増やして質が落ちれば意味がない

私自身、過去にメルマガを毎日配信していた時期があります。

当初は伝えたい内容があり、継続して発信できていました。しかし、しばらくすると、書く内容が次第に陳腐化していると感じるようになりました。毎日発信すること自体が目的になり、読者に届ける価値よりも、配信回数を守ることを優先していたのです。

そこで、途中から毎日の配信をやめました。

 

行動量を増やすことは重要ですが、量を確保することで質が著しく落ちるのであれば、方法を見直す必要があります。

反対に、「質が大切だから」という理由で行動量を極端に減らすと、そもそも見込み客に届かなくなります。

経営者に求められるのは、量か質かのどちらか一方を選ぶことではありません。必要な行動量を確保しながら、質を維持・向上させる方法を考えることです。

 

アドバイスは目的から逆算して判断する

人からアドバイスを受けた際に、最も重要なのは、「自分が欲しい結果を手にするためには、何をすべきか」という視点です。

アドバイスの内容が楽か厳しいかではなく、自社の目的に合っているかどうかを判断する必要があります。

 

欲しい成果によって必要な行動量は変わる

たとえば、オリンピックで金メダルを獲ることが目標であれば、週3回だけの練習では、圧倒的に練習量が足りない可能性があります。

一方で、毎日過酷な練習を続ければ、身体を痛め、かえって競技力が落ちることもあります。

そのため、週に1回程度の休養日を設けた方が、結果につながる場合もあります。

 

重要なのは、「毎日が正解」「週3回が正解」と一律に決めることではありません。目標、現在の実力、使える時間、体力、競争環境などを総合的に考えて、必要な行動量と休むタイミングを決めることです。

これはスポーツに限らず、会社経営でも同じです。

 

競合他社を意識しながらも振り回されない

多くの会社は、「世界でこの商品を提供できるのは自社だけである」という状況にはありません。ほとんどの場合、同じ顧客を狙う競合他社が存在します。

そのため、自社の行動量を決める際に、競合他社の動向を完全に無視することはできません。

他社が毎日情報を発信し、営業活動や商品開発にも積極的に取り組んでいる中で、自社だけが少ない行動量にとどまれば、差が広がる可能性があります。

 

他社の行動をそのまままねる必要はない

ただし、競合他社を意識しすぎるのも問題です。

他社が毎日情報発信しているからといって、自社も無条件に毎日発信すればよいとは限りません。自社の顧客、商品、発信できる内容、社内体制によって、適切な頻度や方法は変わります。

 

競合他社の行動は、判断材料の一つです。

大切なのは、他社に振り回されることではなく、競争環境を踏まえたうえで、自社の目的に合った行動を選ぶことです。

 

経営には「何を、どこまでやるか」という正解がない

経営では、「何を、どこまでやればよいのか」に唯一の正解はありません。

毎日取り組んだからといって、必ず成果が出るとは限りません。週3回でも、内容や方法が優れていれば、大きな成果につながることもあります。

反対に、「週3回でよい」というアドバイスを都合よく受け取り、必要な行動まで減らしてしまえば、成果から遠ざかります。

経営者は、誰かが示した正解を探し続けるのではなく、自分で決断し、その決断を正解に近づける必要があります。

 

楽なアドバイスを選ぶ前に確認したい3つのこと

耳障りのよいアドバイスであっても、そのまま受け入れることが、自社にとって正しいとは限りません。

 

アドバイスを受けた際には、次の3つを確認してください。

 

1.行動量を減らすデメリットを理解しているか

負担を減らすことで、失う機会や競合他社との差が生じないかを考えます。

 

2.決めた回数を行動の上限にしていないか

最初は少ない回数から始めても、慣れや成果に応じて行動量を増やす余地を残します。

 

3.量と質のバランスが取れているか

回数だけを追い求めて内容が薄くなっていないか、反対に質を理由に行動量を減らしすぎていないかを確認します。

 

自分の決断を正解にするのが経営者の仕事

アドバイスには、発言した人の経験や価値観、前提条件が反映されています。そのアドバイスが有効だった会社と、自社の状況が同じとは限りません。

だからこそ経営者は、アドバイスをそのまま受け入れるのではなく、

全面的に受け入れるのか

一部を修正して取り入れるのか

今回は受け入れないのか

を、自社の目的に照らして判断する必要があります。

 

「楽だから選ぶ」「専門家が言ったから従う」という決め方ではなく、自分が成し遂げたいことから逆算して決断すること。

そして、決めた後も結果を確認しながら、行動量や方法を修正していくこと。

正解のない経営において、自分の下した決断を正解にしていくことこそ、経営者に求められる仕事です。

 

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