知恵の和ノート

2026/06/16

「営業だけが偉い会社」は危ない|中小企業の成長を止める攻守分断の問題点

カテゴリー :意識改革

営業が強い会社より、攻守がつながる会社が強い。売上を取る力と信頼を守る力が噛み合ってこそ、中小企業の業績は安定する。

営業力だけでは会社は伸びない|中小企業に必要な「全員攻撃・全員守備」の組織づくり

営業力だけでは中小企業の業績は安定しない

 

営業力は、中小企業の成長に欠かせない大切な力です。

しかし、契約を取る営業だけが評価され、契約後のフォローやトラブル対応、バックオフィスの仕事が軽視される会社は、長期的に業績が伸び悩みます。

売上をつくる攻めの仕事と、信頼を守る守りの仕事が分断されていると、顧客満足やリピート受注にも悪影響が出るからです。

 

本記事では、「営業だけが偉い会社」が抱える危うさと、中小企業が全員攻撃・全員守備の組織へ変わるための考え方を解説します。

 

会社には「攻めの仕事」と「守りの仕事」がある

 

サッカーには、FW、MF、DF、GKといったポジションがあります。ただし、攻守の切り替えが早い近年のサッカーでは、ポジションに関係なく、時には全員で守りに入ったり、守備的なポジションの選手がゴールを決めたりすることがあります。

一方、野球の場合は、イニングごとに攻撃と守備がはっきり分かれています。

 

会社経営にも、これと似た構造があります。

契約を取ってくる営業の仕事は、いわばオフェンス、つまり攻めの仕事です。

一方で、経理、人事、総務、契約管理、顧客対応、トラブル処理などのバックオフィス業務は、ディフェンス、つまり守りの仕事として位置づけられることが多いです。

 

もちろん、攻めも守りも会社にとって欠かせない仕事です。

問題は、その役割が分かれていること自体ではありません。問題なのは、「営業は営業だけ」「管理部門は管理部門だけ」と考え、会社全体としての連携が弱くなってしまうことです。

 

業績が安定する会社は「全員攻撃・全員守備」で動いている

 

業績が順調な会社では、それぞれの担当業務がありながらも、社員全員がオフェンスとディフェンスの両方の意識を持っています。

営業担当者は契約を取るだけでなく、その後の顧客満足や社内の引き継ぎにも気を配ります。

バックオフィスの社員も、単に事務処理をこなすだけでなく、「どうすればお客様との信頼関係を守れるか」「どうすれば営業活動を支えられるか」という視点を持っています。

いわば、会社全体がサッカー型の組織になっているのです。

 

一方、業績が悪かったり、なかなか安定しなかったりする会社では、攻守がはっきり分断されていることがあります。

営業は「売上を取ってくるのが自分たちの仕事」と考え、契約後の対応にはあまり関心を持たない。

管理部門は「自分たちは言われた処理をするだけ」と考え、顧客価値や売上への貢献を意識しない。

 

このような状態では、会社全体の力は高まりません。

変化の激しい経営環境においては、野球型のように攻守を完全に分ける組織よりも、サッカー型のように全員が状況に応じて動ける組織の方が、業績は安定しやすくなります

 

営業だけが強い会社が伸び悩む理由

 

野球では、毎年ホームランを40本以上打つ選手であれば、多少守備に難があってもレギュラー選手になれるかもしれません。

しかし、サッカーではそうはいきません。得点の機会が限られる中で、よほどの点取り屋でない限り、守備での貢献も求められます。

 

また、野球であれば自分の一振りで得点することができます。けれども、サッカーでは、エースストライカーであっても、味方から良いパスが来なければ得点することはできません。

つまり、個の力だけでは勝てないのです。

これは、会社経営にもそのまま当てはまります。

 

契約を取ってくる営業力が強いことは、たしかに大きな強みです。

しかし、契約後のフォローアップが不十分だったり、トラブルが起きた時の対応が悪かったりすれば、顧客満足は下がります。その結果、リピート受注が生まれず、紹介も増えず、会社の評判が少しずつ下がっていきます。

営業力だけが突出していても、会社全体としての顧客対応力が弱ければ、業績は安定しません。

 

「俺が社員を食わせている」という発想が組織を弱くする

 

営業が得意な経営者の中には、時々このようにおっしゃる方がいます。

「俺が社員を食わせてやっているのだから、いちいちうるさいことを言うな」

お気持ちは分からなくもありません。実際、契約を取る仕事は売上という数字で見えやすく、会社への貢献が分かりやすい仕事です。

一方で、契約後のフォロー、クレーム対応、請求管理、入金確認、社内調整といった仕事は、数字として直接見えにくいものです。

 

そのため、どうしても営業の仕事だけが目立ち、守りの仕事は軽く見られがちです。

しかし、契約前に期待を高めておきながら、その後の対応がいい加減であれば、お客様は二度と戻ってきません。

ましてや、トラブル発生時の対応が不誠実であれば、「あの会社はやめた方がよい」という話が、知らないところで広がっていきます。

 

表には出にくくても、業績の足を引っ張る要素は確実に存在します。数字に見えにくい守りの仕事を軽視する会社は、結果として数字に苦しむことになるのです。

 

バックオフィスの仕事は会社の信頼を守っている

 

経理、人事、総務、契約管理、顧客対応などのバックオフィス業務は、直接売上を生む仕事ではないように見えるかもしれません。

しかし、これらの仕事は会社の信頼を守る重要な役割を担っています。

 

請求書が正しく発行される。

入金確認が遅れずに行われる。

契約内容が社内で共有されている。

トラブルが起きた時に、必要な情報がすぐ確認できる。

社員が安心して働ける環境が整っている。

こうした一つひとつの積み重ねが、会社の信用を支えています。

 

お客様から見れば、営業担当者だけが会社ではありません。契約後に接する担当者の対応、書類の正確さ、連絡の速さ、トラブル時の姿勢も含めて、その会社全体の評価になります。

だからこそ、バックオフィスの仕事は単なる事務作業ではありません。会社の信頼を守り、営業活動を支え、長期的な業績を安定させるための大切な仕事なのです。

 

中小企業に必要なのは「役割分担」よりも「目的の共有」

 

もちろん、役割分担は必要です。

営業担当者、経理担当者、人事担当者、現場担当者が、それぞれの専門性を発揮することは大切です。

 

しかし、リソースの限られた中小企業では、役割分担を固定しすぎると、組織の動きが硬くなります。

「これは営業の仕事だから、自分には関係ない」

「これは管理部門の仕事だから、営業は知らなくてよい」

「これは社長が決めることだから、社員は考えなくてよい」

このような考え方が広がると、会社は変化に弱くなります。

 

本当に必要なのは、役割を分けること以上に、目的を共有することです。

会社として何を大切にするのか。

お客様にどのような価値を届けるのか。

トラブルが起きた時に、誰が、何を、どう動くのか。

こうした共通認識がある会社は、逆風が吹いた時にも大きく崩れません。

 

逆風の時に分かる、強い組織と弱い組織の違い

 

先日、サッカーの試合を見ていた時、印象的な場面がありました。同点に追いついた後に、再び失点した直後、フィールド上の選手たちが輪になって話をしていたのです。

気持ちの面では、当然がっかりした部分もあったと思います。しかし、残り時間が少なくなる中で、どう軌道修正するかを話し合い、情報を共有し、意思統一を図っていたように見えました。

 

これは会社組織にも通じます。

問題が起きた時に、お互いを非難する組織なのか。それとも、解決のために情報を出し合い、前向きに動ける組織なのか。

この違いは、平常時よりも逆風の時にこそはっきり表れます。

 

業績が落ちた時、クレームが起きた時、主力社員が抜けた時、取引先との関係に問題が生じた時。

その時に、営業と管理部門が責任を押しつけ合う会社は、問題解決が遅れます。一方で、全員が「会社としてどう対応するか」を考えられる組織は、立て直しも早くなります。

 

攻守の対立をなくす組織づくりが業績を安定させる

 

もし、「ウチの会社は営業と管理部門の間に対立がある」と感じているなら、注意が必要です。

営業は「自分たちが売上を作っている」と考え、管理部門を軽く見る。管理部門は「営業はいつも無理なことばかり言う」と考え、営業に不満を持つ。

このような攻守の対立がある会社では、顧客対応の質も、社内の連携も、業績の安定性も高まりません。

 

中小企業に必要なのは、誰が偉いかを決めることではありません。営業も、バックオフィスも、現場も、それぞれが会社の信頼と業績を支えているという認識を持つことです。

そのためには、経営者自身が、営業だけでなく、守りの仕事にも目を向ける必要があります。

 

売上を作った社員を評価することは大切です。

同時に、契約後のフォローを丁寧に行った社員、トラブルを未然に防いだ社員、会社の信用を守った社員にも、きちんと感謝の言葉をかけることが大切です。

 

まとめ:中小企業は「全員攻撃・全員守備」の組織へ変わろう

 

日本人は、野球のWBCで何度も優勝しているように、攻撃と守備、役割分担がはっきりした形の方が力を発揮しやすい面があるのかもしれません。

しかし、より厳しい経営環境の中で事業を続けていくには、「営業は営業だけ」「経理は経理だけ」という考え方では限界があります。

 

営業力は大切です。けれども、営業だけが偉い会社は危うい。売上をつくる攻めの仕事と、信頼を守る守りの仕事がつながって初めて、会社の業績は安定します。

特にリソースの限られた中小企業では、全員攻撃・全員守備を前提に、「誰が、何を、どうするか」を前向きに話し合える組織づくりが必要です。

社内に攻守の対立があると感じるなら、それは組織を見直すサインです。

 

営業だけに頼る会社から、全員で顧客価値を支える会社へ。

その転換こそが、中小企業が変化の激しい時代を生き抜くための大切な一歩になります。

 

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