知恵の和ノート

2026/06/23

経営者の承認欲求を成果に変える|顧客から褒められる会社の作り方(第642話)

カテゴリー :経営者

経営者が褒められることより、会社として顧客に選ばれることを優先する。その視点の転換が、承認欲求を成果に変える第一歩である。

褒められたい気持ちは自然なものです。しかし経営では、社長自身ではなく会社として顧客に評価される仕組みを作ることが成果につながります。

経営者が「誰も褒めてくれない」と感じる理由

 

誰も褒めてくれない」と感じたことのある経営者は、決して少なくありません。

社長は、社員から不満を言われ、銀行から厳しい指摘を受け、取引先やお客様への対応にも追われながら、最終的な責任を一人で背負っています。そのため、「少しぐらい自分の頑張りを認めてほしい」と思うのは自然なことです。

 

しかし、経営者の承認欲求を満たすことだけを優先すると、経営判断を誤ることがあります。大切なのは、社長個人が褒められることではなく、会社として顧客から評価される状態をつくることです。

顧客から褒められる会社は、価値ある商品やサービスを提供し、適正な価格で販売し、一定の品質を維持しています。そして、その状態を続けるためには、経営者一人の努力だけでなく、社員や協力先を含めた組織づくりが欠かせません。

 

本記事では、経営者が抱きやすい「褒められたい」という気持ちを否定するのではなく、その承認欲求を会社の成果につなげるために、何を優先すべきかを考えます。

 

経営者は誰に褒められたいのかを考える

 

経営者とお話ししていると、時々このような言葉を耳にします。

「誰も褒めてくれないんですよ」

朝から晩まで一生懸命働き、土日も仕事のことばかり考えている。ゆっくり休む時間もない。それなのに、社員からは文句を言われ、銀行からは厳しいことを言われる。

このような状況が続けば、ぼやきの一つも口にしたくなります。

 

そのような時、私はよく次のように質問します。

誰に褒められたいですか?

社員に褒められたいのか。
銀行に褒められたいのか。
取引先に褒められたいのか。
お客様に褒められたいのか。
それとも、家族に褒められたいのか。

誰に認めてもらいたいのかによって、経営者が取るべき行動は変わります。

 

社員・銀行・取引先・顧客・家族では評価基準が違う

 

社員に褒められたいなら、社員にとって都合の良い社長でいる必要があります。厳しいことを言わず、高い給料を払い、働きやすい環境を整えれば、社員からは感謝されやすくなります。

一方で、厳しく指導したり、会社の業績に応じて給与水準を抑えたりすれば、社員から褒められる機会は減るかもしれません。

 

銀行の場合は、評価基準が比較的明確です。増収増益が続き、財務内容が良ければ高く評価されます。しかし、赤字になったり、資金繰りが厳しくなったりすれば、評価は一転して厳しくなります。

 

取引先の場合は、お金の支払いが早く、細かい注文をつけない会社であれば、喜ばれやすいでしょう。しかし、価格交渉をしたり、高い品質を求めたりすれば、相手にとっては面倒な取引先になります。

 

お客様は、良い商品やサービスを提供すれば評価してくれます。ただし、競合他社がさらに良い商品を出したり、自社が値上げをしたりすれば、あっさり他社に乗り換えることもあります。

 

家族の場合は、さらに複雑です。家族を養うために懸命に働いていても、それだけで「お父さんはすごいね」と褒めてもらえるとは限りません。むしろ、仕事に集中するあまり家庭を省みないと、理解してもらえないこともあります。

 

このように、誰から褒められたいかによって、評価される基準は大きく異なります。

 

社長個人ではなく会社として顧客から評価されることを優先する

 

誰に褒めてもらいたいかについて、絶対的な正解はありません。

ただし、経営者として優先順位を考えるなら、まず意識したいのは、

経営者自身ではなく、会社としてお客様から褒めてもらう

という視点です。

 

社長個人が「すごい」と言われることよりも、会社として「この会社に頼んで良かった」「この会社の商品を選んで良かった」とお客様から評価されることの方が、経営においては重要です。

なぜなら、お客様から評価される会社には、継続的な売上が生まれます。信頼が積み上がります。紹介やリピートにもつながります。

つまり、顧客から褒められる会社をつくることは、単なる理想論ではありません。業績を安定させ、資金繰りを改善し、会社を持続させるための現実的な経営課題です。

 

顧客から褒められる会社に必要な3つの条件

 

会社としてお客様から褒めてもらうには、自社の商品やサービスについて、少なくとも次の3つを満たす必要があります。

 

1つ目は、価値を提供することです。

お客様が抱えている悩みや課題を解決し、「お金を払って良かった」と感じてもらえる価値を提供する必要があります。

 

2つ目は、適正な価格で売ることです。

安ければ良いわけではありません。高すぎても選ばれません。提供している価値と価格が釣り合っていることが重要です。

 

3つ目は、一定の品質を維持することです。

一度だけ良い対応ができても、次に品質が落ちれば信頼は失われます。商品やサービスの品質を継続して維持できることが、顧客から評価される会社の条件です。

 

この3つが揃っていれば、お客様からの評価は自然と高まります。そして、お客様から評価される状態が続けば、売上や利益にも良い影響が出ます。

結果として、銀行などの金融機関からも評価されやすくなります。顧客から褒められる状態と、金融機関から評価される状態には、深い相関関係があるのです。

 

社長一人の努力だけでは顧客満足は続かない

 

ただし、価値を提供し、適正な価格で売り、一定の品質を維持することは、経営者一人の努力だけでは実現できません。

社員の協力が必要です。
外注先の協力も必要です。
仕入先やパートナー企業の協力も必要です。

 

特に昨今は、人手不足が常態化しています。社内だけですべての仕事を完結できない会社も増えています。受注した仕事を最後までやり切るには、社外の協力先との連携も重要になります。

その際、社外の協力先が関わった部分で問題が起きたとしても、お客様から見れば、それは「依頼した会社の問題」です。

「あれはウチの責任ではありません」

このような言い訳をした瞬間、お客様からの信頼は大きく損なわれます。

 

顧客から褒められる会社をつくるには、社長個人の頑張りだけでは不十分です。社員や協力先を含めて、会社全体として価値を提供できる体制を整える必要があります。

 

褒められたい気持ちが強すぎると組織づくりを誤る

 

経営者が「褒められたい」という気持ちを強く持ちすぎると、組織づくりで誤った判断をすることがあります。

たとえば、社員に嫌われたくないから、注意すべきことを指摘しない。
協力先との関係を悪くしたくないから、品質の問題をうやむやにする。
取引先に良く思われたいから、本来必要な交渉を避ける。

 

一時的には波風が立たないかもしれません。しかし、その結果として、商品やサービスの品質が下がれば、最終的にお客様から評価されなくなります。

社長が社員や取引先から褒められることを優先するあまり、会社としてお客様から褒められなくなる。これは、本末転倒です。

経営者に必要なのは、誰からも嫌われないことではありません。会社としてお客様に価値を提供するために、必要なことを必要なタイミングで伝えることです。

 

社長と社員の実力差が大きい会社で起きる問題

 

中小企業では、社長と社員との間に実力差が大きいことが少なくありません。

社長自身が営業をすれば受注できる。
社長自身が対応すればお客様に満足してもらえる。
社長自身が判断すればトラブルを防げる。

 

しかし、その仕事を社員に引き継いだ途端に、ミスやトラブルが続く。結果として、お客様の満足度が下がり、次の受注につながらない。このようなケースは珍しくありません。

この問題を放置すると、会社はいつまでも社長頼みのままです。社長が頑張れば売上は立つが、社員に任せると品質が落ちる。その状態では、会社として顧客から継続的に評価されることは難しくなります。

だからこそ、経営者は自分が褒められることよりも、会社として褒められる状態をつくることに力を注ぐ必要があります。

 

社員が一定の品質で仕事を進められるようにする。
判断基準を共有する。
引き継ぎの仕組みを整える。
ミスが起きた時に改善できる体制をつくる。

これらはすべて、顧客から選ばれる会社をつくるための組織づくりです。

 

業績の良い会社の経営者は自分だけを褒めない

 

業績の良い会社の経営者には、共通する姿勢があります。

お客様から評価されても、

「ウチは社員が頑張っているので」
「弊社には良い協力先があるので」
「取引先に支えてもらっているので」

と、自分ではなく、社員や協力先の貢献を口にすることが多いのです。

これは単なる謙遜ではありません。会社として価値を提供するには、自分一人の力だけでは限界があることを理解しているからです。

 

一方で、中には、こちらから聞いていないのに、

「俺はこれをやった」
「自分のお陰でここまでできた」
「自分がいなければ会社は回らない」

と、自分の実績ばかりを語る経営者もいます。

 

もちろん、誰も褒めてくれないから、自分で自分を認めたくなる気持ちは分かります。経営者は孤独です。結果責任も説明責任も背負っています。

けれども、周囲の人は、社長がわざわざ自慢しなくても、その経営者の実力をある程度見ています。

だからこそ、経営者が本当に力を入れるべきなのは、自分の実績を語ることではありません。会社として顧客から評価される状態をつくることです。

 

経営者の承認欲求を会社の成果につなげる

 

経営環境が厳しくなる中、経営者一人でできることには限界があります。それでも、会社の中で最終的な結果責任と説明責任を問われるのは経営者です。

毎日ゴルフをしていても、業績が良ければ評価されるのが経営者です。毎日睡眠時間を削って働いていても、業績が悪ければ厳しく批判されるのが経営者です。

 

努力しているかどうかだけでは評価されません。大切なのは、その努力が会社の成果につながっているかどうかです。

そして、会社の成果につながる承認欲求の使い方とは、社長自身が褒められることを目指すのではなく、会社としてお客様から褒められる状態を目指すことです。

「自分が認められたい」という気持ちを否定する必要はありません。むしろ、その気持ちを、顧客に選ばれる会社づくりへ向けることが重要です。

 

まとめ|褒められる対象を社長個人から会社へ変える

 

経営者が「誰も褒めてくれない」と感じるのは、けっして特別なことではありません。

しかし、その気持ちをそのまま社員や銀行、取引先、家族に向けてしまうと、経営判断を誤ることがあります。

 

まず考えるべきは、社長自身が褒められることではありません。会社としてお客様から褒めてもらうことです。

お客様から評価される会社は、価値を提供し、適正な価格で売り、一定の品質を維持しています。そして、その状態を続けるために、社員や協力先を含めた組織づくりに取り組んでいます。

 

嫌われる勇気を持つことは、簡単ではありません。けれども、褒められる対象を変えることなら、今日からでもできます。

「自分が褒められる会社」ではなく、「会社として顧客から褒められる会社」を目指す

その視点の転換が、経営者の承認欲求を会社の成果に変える第一歩になります。

 

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