知恵の和ノート
隠してばかりでは成長できない?中小企業の自己開示が未来を変える(第569話)
ありのままの自己開示を実践することは、会社の問題を解決する第一歩。課題が明らかになれば、あとはそれに対応するだけ。
「自己開示」という言葉を聞くと、どんなことをイメージされるでしょうか。
私が従来考えていた「自己開示」とは、自分をさらけ出すことです。本当は他の人にはしゃべりたくないけれど、恥ずかしい経験や封印したい過去などをあえて発表するというイメージです。心理的にもかなりハードルが高そうな感じですね。
しかしながら、私の考えていた「自己開示」とは違う意味での「自己開示」があります。
その「自己開示」とは、ありのままの自分でいることです。言いたくないことは言わなくていいし、逆に思ったことや感じたことはその通りに表現する。つまり、「自然体でいる」ということです。
どうでしょうか?この「自己開示」なら少し意識すればできそうな感じです。
さて、これを会社に置き換えるとどうなるでしょうか。
中小企業の場合、上場企業と違って、会社の情報をどこまで開示するかは経営者の判断に大きく依存します。
税務署に提出する決算書もその一例です。
ただし、税務署の関心は利益を不当に隠していないかどうかに限られます。悪意のある脱税をしていない限り、それほど自己開示を意識しなくても問題はありません。
次に銀行の場合です。
銀行から借入をする際には、決算書はもちろん、試算表や資金繰り表、取引先情報、売上状況といった資料の提出が求められます。これも一種の自己開示です。
ただし、具体的にどこまで開示するかは経営者次第で、未回収の売掛金や売れ残りの在庫、役員関連の取引などについては、あまり開示しないという選択肢もあります。
しかし、このように部分的な開示にとどめると、経営者自身が会社の課題を正確に把握できなくなる可能性があります。実態を曖昧にしたままでは、根本的な改善が難しく、将来的な支援や協力を得る機会を失うことにもつながります。
ここで、ありのままの自己開示という考え方を導入してみます。
例えば、
・いつまでも回収できない売掛金を正直にリスト化し、対応策を検討する。
・売れ残りの在庫を処分して現金化する。
・役員関連の取引について第三者の意見を取り入れ、適切な線引きを行う。
このような行動は、まず経営者自身が事実を受け入れることから始まります。確かに、こうしたプロセスは短期的には痛みを伴うかもしれません。しかし、会社の自然体を維持するためには必要不可欠です。
自然体でいる会社は、周囲からの支援を得やすくなります。なぜなら、会社が直面している課題が明確であれば、それに対する解決策を共有しやすくなるからです。
上場企業の場合、自己開示は義務として求められます。その見返りとして、投資家や金融機関からの信用を得て、資金調達の選択肢が広がります。
一方で、中小企業では、自己開示はあくまで任意です。しかし、その任意性があるからこそ、経営者がどのような姿勢で情報を開示するかが重要になります。
自己開示を「さらけ出す」ではなく、「自然体でいる」と捉えることで、経営者にとっても従業員にとっても心理的な負担が軽くなります。そして、この姿勢が会社全体に広がれば、取引先や金融機関、地域社会など、外部からの支援の輪も自然と広がるのです。
たとえば、取引先に対して売上減少の理由を率直に説明した上で、新たな提案を行うことで、信頼関係が深まるケースがあります。また、従業員とのコミュニケーションにおいても、経営者が自分の弱みや課題を共有することで、従業員が主体的に解決策を提案する場面が生まれることもあります。
さらに、自己開示を促進するツールや仕組みを取り入れることも効果的です。例えば、定期的なミーティングで会社の現状を共有したり、第三者の専門家を招いてアドバイスを受ける場を設けたりすることで、自然体の自己開示を実現しやすくなります。
最終的に、ありのままの自己開示を実践することは、会社の問題を解決する第一歩です。課題が明らかになれば、あとはそれに対応するだけ。逆に、課題が曖昧なままでは、問題が深刻化する恐れがあります。
肩の力を抜いて、地に足をつけた自己開示を目指す。この姿勢が、中小企業の可能性を広げ、成長を加速させる鍵となるのではないでしょうか。
私たち一人ひとりが自然体でいられるように。そして、仕事を通じて、自然体でいられる会社を一つでも多く増やしていきたいと思います。
★関連する記事は
↓ ↓ ↓
社内資料が社外で通用する!経営管理資料の質を高める3つのポイント
業績が良い会社ほど、社内資料がそのまま社外でも通用します。
ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。
上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。