知恵の和ノート
社員が考えて動く会社の共通点|例え話を「行動」に変える経営者の伝え方(第631話)
社員が考えて動く会社の共通点

例え話は便利な道具ではない。思考力を可視化し、組織の質を映し出す鏡である。その使い方次第で、会社の未来は大きく変わる。
なぜ例え話をしても、社員は動かないのか?
会社で社員に何かを伝える際、例え話を使うことは少なくありません。
- 難しい内容を分かりやすくするため。
- 自分事として捉えてもらうため。
- 気づきを得て、行動につなげてもらうため。
いずれも、目的としては正しいものです。しかし、実際にはどうでしょうか。
「なるほどですね」と納得はしているのに、その後、行動が変わらない。
この状態に心当たりがある経営者は少なくないはずです。
ここにあるのは、「伝えた」と「伝わった」の違いです。
頭で理解することと、腹落ちして行動が変わることの間には、想像以上に大きな隔たりがあります。
そして多くの場合、例え話はお勉強で終わってしまっているのです。
例え話が機能する会社に共通する「思考の構造」
例え話が本来の効果を発揮するためには、ある前提条件があります。
それが、次の思考プロセスです。
具体 → 抽象 → 具体
たとえば、「わずかな差が大きな違いを生む」ということを伝えたいとします。
ゴルフが好きな経営者であれば、
「ドライバーで球を打つ瞬間、0.1ミリ角度がずれるだけでOBになることがありますよね」
と伝えると、「なるほど」と納得していただけます。
しかし、ここで終わってはいけません。重要なのは、その後です。
この具体例から、「小さな差が結果を大きく左右する」という抽象に引き上げ、さらに「では自社の業務でどこを見直すか」という具体に落とす。
ここまで到達して、初めて行動が変わります。逆に言えば、このプロセスが抜け落ちると、組織は変わりません。
経営者がやりがちな「例え話の失敗パターン」
例え話が機能しない背景には、いくつかの典型的なパターンがあります。
まず一つ目は、具体の話で止まるケースです。
例え話をそのまま受け取り、抽象的な意味を考えない。
この場合、話は理解しているようで、本質は何も捉えられていません。
二つ目は、抽象で止まるケースです。
「そういうことですね」と理解はするものの、それを自分の仕事にどう活かすかまでは考えない。結果として、行動は変わりません。
三つ目は、例え話自体を拒否するケースです。
「まどろっこしいから、結論だけ言ってほしい」
このタイプは一見、理解力が高そうに見えますが、実は思考を省略している可能性もあります。
いずれにしても、例え話は万能ではありません。使い方を誤れば、むしろ思考を止めてしまうのです。
社員のタイプ別|例え話を行動につなげる伝え方
では、どうすれば例え話を行動につなげられるのでしょうか。
ポイントは、相手の理解度に応じて使い分けることです。
まず、具体で止まる社員には、言葉に配慮しつつも、直球で伝える必要があります。遠回しに伝えても、意図は届きません。
次に、抽象で止まる社員には、問いを投げることが有効です。
「この話を踏まえて、この仕事はどう改善できると思う?」
この一言が、思考を行動に結びつけます。
そして、理解できる社員には、再現させることが重要です。
「同じように例え話で説明してみてください」
ここまでできれば、思考は定着しています。
例え話は思考力を測るツールになる
例え話は、単なる伝達手段ではありません。むしろ、相手の思考力を測るツールです。
同じ話をしても、
- 具体で止まる人
- 抽象で止まる人
- 行動まで落とせる人
に分かれます。
この違いこそが、組織の質そのものです。
そして、この差は会話の中で見極めることができます。
さらに言えば、例え話を使いこなせるようになると、商談や営業においても、相手の理解や感情に合わせた提案ができるようになります。
つまり、例え話は思考と成果の両方に直結する技術なのです。
これからの経営に必要なのは「伝え方の設計」
人材不足が続く中で、企業に求められているのは、「考えて行動する人材」を増やすことです。そのためには、単に伝えるのではなく、「どう伝えれば、行動に変わるのか」を設計しなければなりません。
昨今は、パワハラやカスハラへの配慮から、ストレートな表現を避ける傾向もあります。その結果、例え話が多用される場面も増えています。しかし、重要なのは手段ではなく、構造です。伝え方を変えれば、組織の動きは確実に変わります。
社員が考えて動く会社をつくるために
例え話は万能ではありません。しかし、使い方次第で、組織を大きく変える力を持っています。
重要なのは、
- 具体 → 抽象 → 具体のプロセスを外さないこと
- 社員の理解度に応じて伝え方を変えること
- 思考を行動まで導くこと
です。
例え話は、組織の思考力を映す鏡です。あなたの会社では、例え話を「行動」に変えられているでしょうか。
最後に
伝え方を変えれば、社員の行動は変わる。
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