知恵の和ノート

2025/05/20

「あうんの呼吸」は危険信号?中小企業が成長するための「言葉の定義」の整え方(第585話)

カテゴリー :コミュニケーション

会社の成長を妨げる大きな原因の一つは、「言葉の定義が曖昧なまま進んでいること」。「営業」「信頼」「お客様第一」など、誰もが分かったつもりで使う言葉ほど注意しよう。

言葉を揃えるだけで、会社の成長は加速する

「うちの会社って、なんか『あうんの呼吸』で動いてるよね。」

一見するとチームワークが良さそうなこの状態、実は経営の「成長ブレーキ」になっている可能性があります。

なぜなら、「あうんの呼吸」で成り立っている組織というのは、裏を返せば「言葉の定義が曖昧」ということだからです。社内で使われる言葉が人によって違う意味で使われていたら、行動や判断にもズレが出るのは当然です。

 

たとえば、「営業」という言葉。

ある人にとっては「契約を取ってくる人」、別の人にとっては「売上さえ上げればよい人」、さらに別の人にとっては「フォローまで含めた顧客対応の責任者」かもしれません。

このズレが小さいうちは、表面化しません。ところが、ある日、営業担当が「契約さえ取ればいい」と思って無理な条件で契約を取り、事務側が赤字処理に追われたり、回収が滞って資金繰りが悪化したりすることが起こります。

 

本人は悪気がない。むしろ「数字を上げて評価されるはず」と信じて頑張った結果なのに、社内では責められる─この構図、実は多くの会社で起きています。

ポイントは、「誰が悪いか」ではなく、「言葉の定義がバラバラだった」ことにあります。

 

実際、ある企業では「営業とは、契約を取ること」だった定義を見直し、「営業とは、契約から入金完了まで責任を持つ仕事」と再定義しました。

最初は営業担当から反発が出ました。「そんなの営業の仕事じゃない」と。しかし、再定義の背景や目的を共有することで次第に納得が広がり、結果として回収トラブルが減少。売上は変わらなくてもキャッシュフローが安定するようになりました。

 

言葉の定義を明確にするとは、単に辞書的な意味を共有するという話ではありません。

  • その言葉が社内でどんな範囲を指しているのか
  • どんな行動や成果を期待しているのか
  • どんな価値基準で評価するのか

これらを明確にし、すべての社員が同じ認識で行動できるようにすることです。

 

たとえば、「お客様の満足」といった一見美しい言葉でも、ある社員は「笑顔になってもらうこと」と思い、別の社員は「価格を安くすること」と捉えていたら、戦略や接客方針にズレが生じます。

このような見えないズレが積み重なると、会社全体のパフォーマンスにブレーキがかかります。

 

一方で、成長し続ける会社は、言葉を整えることに非常に敏感です。

「営業とは何か」「顧客とは誰か」「利益とはどう生まれるか」など、当たり前に聞こえる言葉を、当たり前にスルーせず、丁寧に定義し、共通言語として社内に浸透させています。

 

そして、社長自身がその旗振り役を担っています。

経営者にありがちなのが、「そんなこと言わなくても分かるだろ」「普通に考えたら分かるよね」という前提で社員に任せてしまうこと。けれども、その普通が人によって違うから、問題が起きるのです。

 

特に創業期を経て組織が急拡大しているフェーズでは、過去の「あうんの呼吸」が通じなくなります。創業メンバーとは言わずとも通じた話が、新しいメンバーにはまったく伝わらない。このギャップを埋めるには、「言葉を揃える」しかありません。

では、どこから始めるべきか?

 

まずは、あなた自身が「言葉の定義を明確にすることの価値」を認識すること。そして、自社の経営にとって重要なキーワード─たとえば「営業」「信頼」「お客様第一」「利益」「チーム」などを一つずつ取り上げて、

  • その言葉は、誰にとって、どのような意味か?
  • どんな行動を生み出してほしいのか?
  • 何を成果とみなすのか?

を、社員と一緒に言語化するワークショップを開いてみましょう。

 

たったこれだけのことですが、「営業とは、こういう仕事だ」「お客様第一って、こういう意味だ」という共通認識ができると、社内の動きが見違えるほどスムーズになります。

社員の行動も、経営者の意図に沿って整っていきます。社内トラブルも減り、チームの一体感が生まれ、結果として会社全体の成長スピードが加速するのです。

 

言葉を整えることは、地味ですが最強の経営施策。

ぜひ、今日から一つひとつの「当たり前の言葉」に目を向けてみてください

 

★なお、言葉を整えるなら、感情や思考と紐づけることが有効です。

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