知恵の和ノート
経営者の言葉は誤解されている|「できることに集中」が社員の思考を止める瞬間(第630話)
経営者の言葉は、そのままでは伝わらない。「できることに集中」は、現状維持の免罪符にもなる。だからこそ、「やろうと思えばできること」まで定義し、共有せよ。

「できることに集中しろ」と言っているのに、なぜ社員は新しいことに挑戦しないのか。その原因は、社員の意欲ではなく、言葉の解釈にあるかもしれません。
本コラムでは、“できること”の定義を誤ることで起こる組織の停滞と、その乗り越え方を解説します。
言葉は表面的な字面だけを捉えると、真意が伝わらないことがあります。
「自分のできることに集中しろ」という時、その主旨は
「自分がコントロールできないことにあれこれ悩んでも仕方がないので、自分がコントロールできることに集中して取り組んだ方が良い」
です。
例えば、「明日雨になったらどうしよう」と悩んでも、自分の力で天候を変えることはできません。それなら、たとえ雨が降っても仕事に支障がないように、いろいろと準備した方が良いという訳です。
ここまでは、あまり問題ないかもしれませんね。
では、「自分のできること」に関しては、どうでしょうか。
人によっては、「自分のできること」を
- 自分はやったことがあること
- 自分の得意なこと
- 自分が自信を持っていること
と解釈します。
すると
- 自分はやったことがないこと
- 自分の苦手なこと
- 自分が自信を持てないこと
は、取り組もうとしません。
例えば、新商品を売り出すために、広告を出すとします。
広告を出しても、実際に売上に直結するかどうかは、やってみないと分かりません。その結果は自分で100%コントロールすることはできません。
けれども、広告を売上につなげるべく
- 市場調査をする
- 商品の強みを書き出す
- 広告宣伝文を考える
といったことは、やろうと思えばできることです。
しかしながら、
- 市場調査のやり方が分からない
- 商品の強みは深く考えたことがない
- 広告宣伝文を書いたことがない
から、そのまま何もやらずに放置されるケースが少なからずあります。
つまり、「自分のできることに集中しろ」と言われても、新しい挑戦を行わずに、目の前の(今までやったことのある)仕事をやって、新しいことは「忙しくてやる時間がなかった」となっています。
このような場合、「やろうと思えばできること」を具体的に社内で共有しないと、人は本能的に楽を求めるので、「自分のできることに集中しろ」と指示しても、「自分のできるルーティーンの仕事に集中する」恐れがあります。
先ほどの広告の例で言えば、本来は新商品を販売する段階で
- 市場調査をやっており、「誰に」売るかがハッキリしている
- 商品の特徴や商品を使うことによるベネフィットが言語化されている
- キャッチコピーなど、どのような広告を出すかの方針が固まっている
ことが理想です。
しかし、中小企業の場合、そこまできっちりとできていないかもしれません。このため、取りあえず適当に広告を作って、なんとなく広告を出してみるという状況も多いです。
残念ながら、それは、自分のコントロールできないことに依存していることを意味します。
今までやったことないことや自信のないことも含めて、自分のできることに集中することは、自らの主体性を発揮することです。
「為せば成る、為さねば成らぬ、何事も、成らぬは人の為さぬなりけり」
これは、江戸時代の米沢藩主上杉鷹山の言葉ですが、無理だと思って諦め努力をしなければ、何も絶対に実現できないのは、江戸時代からも変わらぬ事実です。
経営者が伝える言葉は、必ずしも、その意図がそのまま伝わるとは限りません。むしろ、伝わらないことを前提に、補足説明したり、表現方法を変えたりすることで、ようやく伝わることが普通です。
この点、社員が無理だと思って努力していないなら、まずは経営者が無理だと思って諦めずに伝え続けることで、初めて活路が見出せます。
★関連する記事は「社員が『社長の言葉』を誤解する本当の理由」

社長の言葉が誤解される背景には、伝える側と受け取る側の「文脈不足」あり。判断の前提となる構造を共有できるかが、組織の推進力を左右する。
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