知恵の和ノート
社員の不満は「差」ではなく「基準の不在」から生まれる(第583話)
明確な基準を示してえこ贔屓するのは社内の一体感を生み、明確な基準を示さずにえこ贔屓するのは社内の不満を生む。
経営者としては同じように接しているつもりでも、社員から「なぜ、社長はあの人ばっかりえこ贔屓するのか?」と不満が出ることがあります。
先日も、あるクライアントさんから「事務担当の社員から『私たちは要らないのですか?』と言われた」というご相談がありました。
社員の中で不満が生まれるケースには携わっている仕事の違いから生まれることが多いです。
・営業VS事務→「社長は『営業』ばかり大事にしている!」
・経営者と直接接する仕事VS経営者とは普段あまり接しない仕事→「社長は秘書には甘いなぁ」
・前向きな仕事VS後ろ向きの仕事→「面倒くさい仕事ばかり自分たちに押し付けて」
特に中小企業の場合、社員に対する評価制度や評価基準が明確に定められていないこともあり、待遇面ではそれほど違いはなくても、経営者との接触頻度が低い社員は、接触頻度の高い社員に対して「なぜ、彼(彼女)ばかりが得するのか?」と捉えることが多いのを実感しています。
つまり
・経営者とよく話す社員=会社から必要とされる社員
・経営者とあまり話さない社員=会社からは必要とされてない社員
となる傾向です。
その際、社内にNo.2的な存在がいて、上手くフォローアップできれば問題が起きません。
しかしながら、管理職がいなかったり、仮にいたとしても部下の教育まで、きめ細やかにできる人材ではなかったりすると、社員の不満は解消せず、突然「私、今月末で会社を辞めます」となりかねません。
対策として、「経営者はもっと社員と会話する機会を作りましょう」と言われます。けれども、日々忙しい中、経営者が一人ひとりの社員と会話する時間を作るのはなかなか難しいのではないでしょうか。
では、どうすれば良いのでしょうか?
冒頭に「経営者は同じように接しているつもり」と書きましたが、私が客観的に観察すると、経営者はやはり自分の気に入っているタイプの社員とより多く接しています。
- レスポンスが早い
- 気がよく効く
- 元気が良い
- 返事が大きい
- 自分でもよく考える
すなわち、まずは仕事に取り組む上で必要とされている要素を兼ね備えていることがポイントになっています。
会社で一緒に仕事をする状況下において、レスポンスの早い人と遅い人であれば、前者のレスポンスの早い人が優遇されるのは、ごく当たり前の話です。
けれども、先ほどあげたような要素は抽象度が高いため、経営者から見れば「あいつはいつもレスポンスが遅い」と思っていても、当人は「自分はレスポンスは遅くない」と考えているかもしれません。
つまり、お互いの認識ギャップがあるために、それぞれが相手に対して少なからず不満を抱いている訳です。
したがって、人事評価に最終的に織り込むかどうかは別として、「会社が社員に対して仕事で求める要素を具体的に明文化して、共通認識とする」ことが改善の第一歩になります。
例えば、レスポンスの件であれば
・上司が部下に仕事を指示する場合は必ず期限を提示すること
・仮に上司が期限を提示しなかった場合は部下が期限を確認すること
というルールを設定することです。
この場合、「この仕事を明日の午前10時までにやってね」と合意できていれば、レスポンスが早い、遅いという問題は第三者も的確に判断できます。
人はできれば仕事のできる人に仕事を任せたいのは当たり前。一方で、人は「自分は一生懸命に頑張っている」と他人から認めてほしいと思うのも、これまた当たり前の話です。
けれども、この場合、「仕事ができる」という基準は何か、「頑張っている」というのはどういうことがハッキリしないために、余計なストレスが生まれます。
この点、オーナー企業の場合は、基準が経営者の頭の中だけにあって、それが一部の社員にしか伝わっていなかったり、社員に伝わっていても、間違って伝わっていたりするケース(例:「社長は営業第一主義だ」)が多いです。
人手不足が続く中、本来であれば避けられる不満を蓄積させて、突然退職する社員が増えると、会社の業務に支障をきたします。
「会社が社員に対して仕事で求める要素を具体的に明文化して、共通認識とする」ことに取り組みましょう。
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