知恵の和ノート

2014/07/01

後継者問題は中小企業経営者の夏休みの宿題(第17話)

カテゴリー :経営者

事業承継を成功に導くには手放す勇気と見守る忍耐から

中小企業経営者の夏休みの宿題

キティちゃんで知られるサンリオ。

6月26日に開いた株主総会では、社長の後継者問題に集中砲火を浴びせられました。

サンリオの辻信太郎社長は現在86歳。後任候補だった長男の副社長が昨年11月に急逝されたため(享年61歳)、現時点ではまだ誰を後継者にするか決まっていない模様です。

株主からの激しい質問に対し、辻社長は「今後2年かけて、誰が社長でも立派にやっていけるような経営体制をつくり上げていく」と理解を求めたそうです。

中小企業の場合、「経営者=オーナー」というケースが多いので、後継者が決まっていないからと言って、経営者が非難されることは稀です。

しかし、誰が社長でも立派にやっていけるような経営体制という点では「ちょっと自信ないなぁ」という経営者もおられるのではないでしょうか。

サンリオの場合はそうは言っても上場会社。たとえ、社長が交代してもやっていける経営体制はできています。また、なんと言ってもキティちゃんという強力なキャラクターがいるので、普通にやっていればそこそこ収益を確保できます。

一方で、中小企業の場合、社長交代は大きなリスクです。

社長の経営手腕に頼っている会社が多いので、社長が交代しても同じような業績を維持できるのかというのは、社長自身があまり気にしていなくても、社員、取引先、銀行など社内外の関係者はすごく関心を持っています。

また、キティちゃんのように何年も稼ぎ続ける強力な主力商品があるとは限らないので、社長の交代が業績の急速な悪化を招く事態だってありえます。
 

実は先日ある中小企業の経営者Aさんが急逝されました。

Aさんは昨年私のセミナーにも一度ご参加いただき、会社の業績も順調に伸ばされていました。しかし、ある時突然連絡が取れなくなり、知り合いの方がご自宅を訪ねると布団の上で亡くなっていたそうです。

Aさんは経理事務所にいたご経験もあるので、数字の管理についてはすごくお得意な方でした。このため、中小企業なのに四半期毎に会社の業況をきちんと銀行に提出しており、銀行からの信用も非常に厚い人でした。

また、業績も良かったので、期末近くになると銀行の方から「そろそろウチから借りてくれませんか?」とセールスに来るようにまさに理想的な経営をされていたのです。

Aさんは独身だったので後継者は未定。しかも、銀行との交渉などお金に関係するところはご自身の得意分野であったため、他の社員は誰も知らない業務になっていました。

その結果、Aさんが亡くなった後、業績が急変するということはなかったものの、お金回りに関する業務ではかなり混乱がありました。

誰が社長でも立派にやっていけるような経営体制を築くためには、まずは社長の最も得意とする分野を他の人でもできるようにすることがポイントになります。

営業が得意な経営者がトップセールスを行えば、かなりの確率で契約がとれるかもしれません。また、技術が得意な経営者は「この商品は俺にしか作れない」のが自慢かもしれません。

しかし、10年、20年と長く事業を続けていくには、社長の分身となる人を育てる仕組みが必要です。

サンリオの場合は後継者と見込んでいた息子さんが突然亡くなるという不幸がありました。また、Aさんの場合は、50代半ばとまだまだお若いので、社員はおろか、ご本人もまさかこんな事態になるとは想像しておられなかったと思います。

サンリオは2年で経営体制をつくり上げていくようですが、経営体制をきちんと整えるにはやはり時間がかかります

特に自分がよく知っている仕事を他の人に任せると、最初は思った通りに進まないので、「なんでこんな簡単なことができないのか」とイライラしたり、「やっぱり自分がやった方が早い」とついつい口ばかりか手も出したりしたくなります。

 

しかし、経営者は自分が退任した後の道筋をつけることも仕事の範疇です。

もうすぐ夏休みの時期になりますが、「自分が1ヵ月夏休みをとっても会社は回っていくのか」を想像してみて、「ここは俺がやらないとちょっと難しいかも」と思われる業務の見直しから始めることをお薦めします。

あるクライアントさんは、昔ご病気で1ヵ月ほど入院された時、「自分がいなくても意外と会社は大丈夫だった」ということを知り、少なからずショックを受けたそうです(苦笑)。

しかしながら、それ以降どんどん社員に仕事を任せるようになり、今では誰が社長でも立派にやっていけるような経営体制ができつつあります。

誰が社長でも立派にやっていけるような経営体制を一番望んでいないのは、もしかすると経営者ご本人なのかもしれません。

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