知恵の和ノート

2014/07/15

奇特なスーパーマンは見つからない前提で仕組みを整える(第19話)

カテゴリー :社員教育

いい人が見つかるのは時の運
いい仕組みが見つかるのは時の力

奇特なスーパーマンは見つからない

クライアント先を訪問すると、経営者から「誰かいい人いない?」というご相談を受けることがあります。

希望される要件を聞いてみると、「人事の経験があって、総務もできて」といったスキル・経験面から、「物事に柔軟に対応して、ストレスにも強く・・・」といった資質・性格面まで、ご要望は多岐に渡ります。

一方で、予算をお伺いすると「他の社員とのバランスもあるので、なんとか月30万円くらいで収めたい」という感じです。

そんな時、私が経営者に申し上げるのは「そんな都合のいい人はいません!」
 

中小企業の場合、せっかく人を採用してもなかなか定着しないことがあります。

もちろん、大手企業に比べると、「給料が低い」「福利厚生が整っていない」ということも一つの要因かもしれません。

しかし、せっかく人を採用してもなかなか定着しない原因の一つとして、会社の現況と求める人材のミスマッチがあります。

大企業では分業が進んでいて「人事の仕事はここまで」とはっきり決まっていたり、同じ人事でも「私は新卒採用が専門です」「給料計算はAさんの担当なので」というように専門分野に細かく分かれています。

仕事のボリュームが多いので、分業せざるを得ないということはあります。しかしながら、一つ確実に言えることは、仕事を分業しても全体として仕事を回していくために業務フローを整備しているということです。

例えば社員を1名中途採用するにしても、「どこに人材募集の依頼をするのか」から始まって、「誰がどの順番で面接するのか」「採用条件はどうするのか」を予め決めておかないといけません。

また、採用が決まった後でも、名刺の発注、座席、電話やパソコンの手配、社会保険関係の手続、通勤定期券の準備、給与振込口座の確認など細かい業務を進めていかないといけません。

このように中途採用の手続を一つとってもかなり複雑で面倒です。

そして、中小企業で求められているのは、全体の業務の流れ個々の業務の中味の両方を理解し、実践できる人物です。

おそらく大手企業の人事部長は中途採用の全体の流れはご理解されています。けれども、ご本人が「個々の業務の中味をどのくらい分かっているか」というと話は別です。

実務担当として細かい作業をやった人なら、個々の業務をスムーズに進めていくためのコツをつかんでおられるかと思います。

しかし、細かい作業は部下に任せ、「人事制度はどうあるべきか」といった全社的な問題に取り組んでいる方の場合、細かい作業は案外苦手だったりします。

一方、「ウチは名刺の印刷をB社に依頼しています」というように、個々の業務の中味は会社によってやり方が異なります。

そして、入社した人が最初に戸惑うのはこの会社によって異なるやり方の部分です。

特に中小企業の場合、「そのやり方が合理的かどうか」という観点よりは、「昔からずっとやっている方法です」「前任者からそう教わったので」「社長の知り合いの人に頼んでいます」というように、属人的な要素で業務フローが決まっているケースが少なくありません。

そして、会社独自のやり方やルールが非合理的であればあるほど人は定着しません

つまり、中小企業では、全体の業務の流れと個々の業務の中味の両方をバランスよく理解し、実践できることに加え、会社独自のやり方をまずは受け入れる柔軟さが求められます。

ある意味マルチなスーパーマンが求められているのです。これはかなり高い要求水準です。そして、このような高いレベルの人を低い給料で雇うのはめったに当たらない宝くじで一攫千金を狙うようなものです。

このため、私がお薦めしているのは仕事を回す仕組みの構築です。

もちろん、すぐにできるものではありません。また、やっていく中で腹の立つことがあるかもしれません。けれども、一つ一つ地道に努力を重ねていけば、着実にできるものです。

当たる確率が極めて低い宝くじにかけるのか、多少手間ひまがかかっても確実に目標に近づく仕組み作りにかけるのか。

決めるのは経営者ご自身です。

最後に今回のW杯で見事に優勝を遂げたドイツ代表のラーム主将の言葉をご紹介します。

「才能ある個人がいなくてもいい。大事なのは良いチームであることで、試合ごとに成長していくことだ。」

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