知恵の和ノート
「最善も最悪も滅多に起きない」現実を踏まえた経営判断のすすめ|感情に振り回されない意思決定法
最善も最悪も滅多に起きない。希望と恐怖の間で、冷静に一歩を踏み出す判断力が経営を安定させる。
「最善」と「最悪」のシナリオをどう扱うか
新しい事業や施策を始めるとき、誰もが考えるのは次の2つです。
- 最も上手くいった場合(ベストシナリオ)
- 最も失敗した場合(ワーストシナリオ)
例えば、「この商品を販売したら売上1億円いくかも!」と想像するのは、ベストシナリオです。しかし現実には、売上は5,000万円で止まるかもしれません。期待値の半分です。
一方で、広告費100万円を使ってもお客様が集まらなかったらというのはワーストシナリオです。確かに、広告をやらなければ100万円の経費は守れます。けれども、広告をやらなかったことで得られたかもしれない売上を逃すリスクも生まれます。
「現実」は両極端の間にある
大事なのは、ほとんどの場合、
- ベストシナリオ通りにはいかない
- ワーストシナリオ通りにもならない
という現実を知っておくことです。
現実は、両極端の間のどこかに落ち着くのが普通です。にもかかわらず、人は感情に引っ張られて、最善か最悪かのどちらかに偏った判断をしがちです。
ベストシナリオに浮かれた失敗例
以前、ある会社がベストシナリオを前提に事業計画を立て、銀行から融資を受けました。しかし、事業開始から数ヵ月で資金繰りが行き詰まりました。
理由は単純です。計画が「順調にいくこと」を前提にしていたからです。
売上の立ち上がりが予定より遅れた瞬間、資金繰りが急激に悪化しました。結果として、借りた資金は返済しなければならないのに、事業の運転資金が尽きてしまったのです。
この会社は融資交渉時に銀行員のアドバイスをほぼ鵜呑みにして事業計画を作ったそうです。銀行から見れば「貸せる計画」でも、会社から見れば「返せない計画」になっていたわけです。
ワーストシナリオに縛られるリスク
逆に、ワーストシナリオを意識しすぎて動けなくなるケースもあります。
「もし広告費が無駄になったらどうしよう」
「もし新規事業が失敗したらどうしよう」
と考えすぎて、一歩も踏み出せない状態です。
もちろん、リスクを検討することは大切です。しかし、失敗を恐れるあまり何もやらないことこそ、大きな機会損失になりかねません。
やらなかったことで得られたかもしれない売上や経験は、二度と取り戻せないからです。
冷静な判断のための3つの視点
経営判断を感情に振り回されずに行うには、次の3つの視点を持つことが有効です。
1.幅を持って予測する
1つの数字に固執せず、「この範囲に収まりそう」というレンジで考える。
例:売上は4,000万〜7,000万円程度と予測する。
2.最悪ではなく「よくある失敗例」を想定する
現実的によく起きる失敗パターンを洗い出し、対策を事前に用意する。
3.小さく試す
いきなり全額を投入せず、小規模で試して反応を確認する。その結果をもとに次の投資額を決める。
こうしたプロセスを踏めば、過度な期待や恐怖に左右されず、現実的な判断ができます。
「感情の揺れ幅」を抑える
経営は、数字だけで動くものではありません。期待に胸が膨らめば、数字の根拠が甘くなり、リスクの見積もりが軽くなります。逆に、恐怖に支配されると、数字が示す可能性を無視して動けなくなります。
経営者に必要なのは、この感情の振れ幅を意識的に抑えることです。最善にも最悪にも引っ張られず、「中庸」の視点から判断する習慣を持つことが、長期的な経営の安定につながります。
まとめ
- 最善シナリオ通りに進むことは滅多にない
- 最悪シナリオが現実になることも滅多にない
- 現実はその間に収まるのが普通
- 感情に流されず、幅を持った予測と現実的な想定で行動する
経営判断の本質は、「希望」と「恐怖」の間で冷静に舵を取ることです。このバランス感覚こそが、事業を長く続けるための最大の武器になります。
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