知恵の和ノート
「社長の奥さんは雇うな」は本当か?言葉の文脈が経営判断を狂わせる理由(第609話)
切り取られた言葉に経営を委ねるな。判断に必要なのは「言葉の背景」を読み解く力だ。

言葉は文脈の中で捉えないと判断を間違います。けれども、昨今は言葉の切り取りが盛んに行われるので、注意が必要です。
先日、ある経営者が書いたメルマガで「会社で雇ってはいけない人」として、社長の奥さんが挙げられていました。
クライアントさんの中には、社長の奥様が会社に入っておられる先もあります。そして、「この奥様がおられるからこそ、上手くいっているなぁ」と感じる会社もあるので、どういう主旨なのかと思いながら、その文章を読みました。
その経営者の主張を要約すると
・会社は時には必要な投資を行うことが求められる
・一方、主婦はお金を節約することを大切にする
・主婦である社長の奥さんが会社に入ると、支出を抑えることに目がいく
・その結果、会社が成長しなくなる
というもの。
中小企業の場合
・社長は営業をベースに受注を取ってくる
・社長の奥様は経理を中心にお金を管理している
ことがよくあります。
このため、社長は
「これをやったら、もっと儲かる」
と考えてお金を使おうとした際、経理担当の奥様が
「そんなにお金を使ったら、来月の支払が足りなくなります」
と反対する場面もあります。
まさに、前述の経営者の主張があてはまる訳です。それゆえ、「社長の奥さんを雇ってはいけない」というのも、ある意味正しいと言えます。
しかしながら、お金の使い方に関して大切なのは
- 会社の資金繰りをちゃんと把握しているか
- 事業投資を行う際は費用対効果や時間帯効果を検討しているか
です。
家庭の場合は毎月もらえる給料がほぼ決まっているため、「いかに支出を抑えるか」が家庭の資金繰りを回すためのポイントになります。
また、お金を投資する際、短期間で儲けようと考えて、リスクを考えずに金融商品に手を出すと、痛い目にあうのはよくある話です。
一方、会社の場合。
売上高が毎月安定して一定のお金が入ってくるとは限りません。また、競合他社もいるので、将来に向けた事業投資をせず、お金を減らさないことばかりに重点を置くと、その間にライバルとの差がついて、そのうち巻き返すのが難しくなります。
つまり、お金が一時的に減るという一定のリスクを取りながらも、会社の将来に向けて必要な投資を続けていかなければなりません。
したがって、経理担当になったら、いわゆる主婦感覚のままでは、その職務を全うするのは難しいです。けれども、もし、社長が勘や過去の成功体験をベースに、やたらと無駄なお金を使うタイプなら、主婦感覚を使って支出を抑えることは一定の効果があります。
それゆえ、「社長の奥さんを雇ってはいけない」という主張は一面では正しいし、一面では正しくありません。
でも、そのような曖昧な言い方をしてしまうと、タイパを優先する人には「結局何なの?」と、本来の伝えたい主旨が伝わらなくなります。そこで、多くの場合、多少誤解が生じることは念頭に置いた上で、「社長の奥さんは雇うな!」といった言葉が使われます。
このような事情を念頭に置いた上で、私たちは受け取る情報をそのまま鵜呑みにせず、「ここから学べることは何か?」をしっかりと考えた上で仕事に活かすことが大切。
分かりやすいフレーズは印象にも残りますが、その言葉をどういう文脈の中で捉えられるか。
「現代人が1日に受け取る情報量は、平安時代の一生分であり江戸時代の1年分」とも言われています。切り取られた言葉に必要以上に振り回されないようにしましょう。
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