知恵の和ノート
後継者は「都合のいい部下」ではない─中小企業の社長が今すぐ手放すべき幻想(第611話)
人を育てながら企業価値も高める─理想を追えぬなら、安易な期待を捨て、どちらに徹するかを決めよ。

中小企業が社員を新たに雇う際、「社長との相性」が判断基準の一つになることが多いです。
能力やスキルが高くても、「この人は社長と相性が合わないかも」となったら、採用されないことがあります。
特にオーナー経営者は個性的な方も多いので、やむを得ない側面もあります。
しかしながら、社員を採用するのではなく、後継者候補を採用するとなったら、どうでしょうか。
社員の場合は社長の指示に素直に従うことが求められます。
一方、後継者となる方は、社長の指示に盲目的に従うだけでは務まりません。時には、社長の判断が間違っていると思われる場合は、あえて苦言を呈することも求められます。
つまり、後継者候補なら、たとえ社長との相性があまり良くないと思われる場合も、会社の業績をさらに伸ばせる可能性がある人を採用することがポイントです。
ここで問われるのが、社長の器。
時に耳の痛いことを言う人を遠ざけたくなるのは、人としては当然のことです。それでも、大切な自分の会社をさらに続けていくために、能力は高いけれど、自分とは相性が合わなそうな人をあえて採用できるかどうかです。
いま放送されているドラマで、オーナー社長が主人公を採用する際に伝えたのは、「絶対に俺を裏切るなよ」でした。
おそらく、多くのオーナー社長も、同じように「自分を裏切らない人」を採用したがります。
しかしながら、長年会社経営に携わっておられる方なら、ご経験あるように、信頼して採用した社員が
・業績を上げてくれるという期待を裏切って活躍しない
・後を継いでくれるという期待を裏切って退職する
・自分を理解してくれるという期待を裏切って反旗を翻す
ことを避けることは難しいです。
それゆえ、ここでも必要以上に「期待する」ことは避けた方が賢明。
ベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」で知られる坂本光司先生は、三つある社長の仕事の一つとして、「後継者を発掘し、育てる」ことを挙げておられます。
この点、後継者がいない企業が日本でたくさんあることは、多くの社長が社長としての大切な仕事をできていないことを意味します。
息子さんや娘さんなど親族が後を継がない場合、理想的には、育てた社員の中から後継者が生まれてくるのがベターです。
けれども、もし、社長ご自身が、自分は
- 人を育てるのがあまり得意ではない
- たとえ能力は高くても、相性の悪い社員は雇いたくない
という自覚があるなら、企業価値を高めることに専念した方がベターです。
キャッシュフローが回り、付加価値の高い企業であれば、M&A等を通して会社を存続させるという道もあります。
絶対に避けたいのは、後継者候補もいないし、会社もキャッシュフローが回っておらず、会社として提供できる価値も低い状態です。
ある会社では、後継者候補と期待していた親族の方が会社を継ぐ意思がないことがハッキリしたので、社長を中心に会社の価値を上げる仕組みの構築をより急ぐ方向で、動き出しました。
野球などのスポーツでも、「育てながら勝ち続ける」のが理想的な姿ですが、かなりハードルが高いのは事実。
「こうあってほしい」という安易な期待はスッパリ捨てて、
- たとえ途中で裏切られることがあっても、じっくり後継者を育てていく
- 後継者を自前で育てるのは諦めて、企業価値を上げることで後継者を発掘する
のいずれかを優先するのかを早めに決めましょう。中途半端は一番良くないです。
★いずれを優先したら良いかが分からない方は「こちら」をご覧ください。
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