知恵の和ノート
オーナー経営の会社はなぜ人材採用で苦戦するのか?風通しが勝敗を分ける理由(第600話)
人材不足時代、オーナー経営の閉鎖性は採用の壁となる。株主・社長・社員が共有する「核」が壁を突破し、人材を惹きつける力になる。
「『オーナー経営』ではないからですかね」
あるクライアント先で、社員の方に「なぜ、この会社に転職したのですか?」とお聞きした際の回答。
タイミング的に従来の株主兼社長から、株主ではない方が社長に就任された後に入社された社員さんだったので、会社のオーナー(株主)と経営者が分離されていることに、大きな魅力を感じた模様です。
創業社長の場合は、「株主=社長」であるケースが多いです。この場合、制度上株主総会や取締役会があったとしても、社長の鶴の一声で会社の経営方針が決まります。
大半の中小企業はこれに当てはまると思いますが、問題は業績が悪くなった時。仮に「社長のやり方ではダメだ」と考える社員がいても、オーナー社長が聞く耳を持たなければ、経営改善が進みません。
一方、当初はオーナー経営であっても、会社が事業を続けていく中で、株主ではない人が経営者になることがあります。この場合、業績が悪くなった際に、株主は社長を解任して、別の人を社長に就任させることができます。
つまり、一定のガバナンスが働く訳です。このため、冒頭の社員さんのように、株主と経営者が分離していることを評価する人もいます。
ただ難しいのは、株主の思惑と経営者の考えが必ずしも一致するとは限らないこと。
業績不振のために、経営者を交代させるのであれば、銀行など金融機関も納得します。
しかしながら、経営者が「この分野で業績を伸ばしたい」と考えていても、株主が「その分野では業績は伸びないので、止めた方が良い」と考えているようなケース。すなわち、これから未来に向けた戦略について、株主と経営者で意見が対立する場合です。
このような場合、どちらの考えが正しいかは実際にやってみないと分からないことがあります。
上場企業の場合は、投資家など経営のプロと呼ばれるような人が株主になっていることも多いので、客観的なデータに基づいて、株主と経営者の主張のうち、どちらがより合理的なものなのかを第三者が判断することもできます。
しかしながら、中小企業の場合、創業者から株式を引き継いだ人が必ずしも経営に詳しいという訳ではありません。このため、明らかに経営者の主張の方が会社のためになると思われるような場合でも、その方針がなかなか通らないことがあります。
こうなってくると、銀行も一種のお家騒動と見做して、融資の審査する際にも少なからず影響が出てきます。
昨今は正解のない時代であり、過去に成功したやり方が将来にわたっても上手くいくとは限りません。また、選択肢が複数あるような場合、どれがその会社にとって正解なのかは、予測するのが難しいです。
このため、株主と社長が同じ人であるか、別の人であるかに関わらず、法人である会社としては、「ウチとしてはこれをやっていくのだ」というコア(核)になる部分がないと
- 株主の意向
- 経営者の力量
- 社員の能力や資質
次第で、会社の成長を妨げられる恐れがあります。
コそして、コア(核)の部分に関しては、株主、経営者、社員の間に上下関係はないのが理想。
例えば、「長期的に会社の利益を伸ばす」というのは、本来であれば、株主にとっても、経営者にとっても、また、社員にとっても、すごく望ましいことです。もし、それに反するような言動があった場合は、株主は経営者の主張に冷静に耳を傾け、経営者は社員の声に素直に耳を傾けて、行動を変えられるかどうか。
言い換えれば、風通しの良い会社なのか、風通しの悪い閉鎖的な会社なのかどうかがポイントです。
昨今は絶対的な人手不足もあり、中小企業では、優秀な人を採用するのが難しい状況が続いています。そして、少なくとも、多くの人は「オーナー経営の会社は閉鎖的だ」というイメージを持っています。
このため、中小企業でも
- 会社には核となるビジョンやミッションがあって、社員にもそれが浸透している
- 社長はオーナー経営者だけれど、社員の意見を会社経営に活かしている
- 株主と経営者の意思疎通は充分図られており、関係も良好である
といったことを採用活動でアピールできたら、それは大きな強みになります。
逆に「ウチは社長と相性が合う人でないと無理」という考え方であれば、優秀な人は絶対に採用できません。
冒頭でご紹介した会社では、ここ数年で入社された社員さんたちが今ではリーダー格となって、会社の業績をさらに良くするために日々奮闘されています。
風通しの良い組織は一朝一夕ではできません。けれども、日々意識して取り組めば、必ず流れは変わります。
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