知恵の和ノート

2014/07/29

東海道新幹線が資金調達に成功した理由(第21話)

カテゴリー :資金調達

使えない新しい技術の自慢は財布を枯らし、使える枯れた技術の組合せは財布を潤す。

東海道新幹線が資金調達に成功した理由

前職のベンチャー企業で資金調達をしている時、ベンチャーキャピタルから必ず質問されたのが、「この技術は特許を取っていますか?」

技術とお金がからんだ話になると必ず特許のことが話題になるので、経営者の中には「特許を取らないとお金にならない」と考えておられる方もおられるのではないでしょうか。

しかしながら、特許に過大な期待を寄せるのはかえって危険です。

特許を取るための要件の一つが新規性です。

表現を変えれば、「新しいものでないと特許として認められない」ということになります。このため、技術系企業の多くが特許の取得を目指し、「これは今までにないまったく新しい技術だ!」ということを自慢します。

一方、当然のことながら、新しいものには実績がないのが普通です。

そこで、会社がぶち当たるのが「これって本当に効果が出るの?」といった懐疑の声や、「実証実験で成果が出てから考えましょう」といった結論を先延ばしする理屈です。

そして、​​​​​​​技術が画期的であればあるほどその評価が固まるまでに時間がかかることになります。

もちろん、大手企業であれば多少時間がかかっても、企業体力が充分にあるので問題はないかもしれません。

しかし、中小企業の場合、大手企業に比べるとどうしても企業体力の点で劣ります。このため、技術の評価に時間がかかってしまうとその技術をお金に変えるまでに資金不足に陥る恐れがあります。

また、仮に運よく特許を取得できたとしても、大手企業が似たような技術を使って競合商品を作ることがあります。この場合、仮に特許侵害でその企業を訴えたとしても、解決に時間がかかればかかるほど、資金面や体力面で勝る大手企業の方が有利です。

このため、前職のベンチャー企業では、できるだけ特許は大手企業と組んで取得することで無用な争いを避けるよう工夫していました。

つまり、特許は一定期間その技術を独占的に利用できるという点で時間稼ぎには使えても、その特許から得られる特許料で大きく儲ける、特許を基に資金調達を成功に導くといったお金稼ぎに使えるとは限らないのです。

実際、「東洋経済」(2012年2月25日号)の中で、鉄道技術ライターの川辺謙一さんが「新幹線は、海外で確立された『ローテク』を集めて構築した高速輸送システム」として、「技術的な新規性が低いことは、世界銀行から東海道新幹線の建設費の一部を借りるうえでも有利だった」と指摘されていました。

つまり、まだ成長途中であった日本が世界からお金を集めることに成功したのは、​​​​​​​新規性のある技術を極力排除し、実績のある技術だけを使ったことが実現性の高い事業と判断されたからだという訳です。

会社も金融機関も新しいものを高めに評価しがち。しかし、実際に使ってお金を生むという意味では、従来あるものを組合わせた方がより現実的です。

中小企業にとって、​​​​​​​特許の取得は自社の防衛手段の一つではあっても、お金を生む手段とはなりえないぐらいの感覚がちょうど良いかもしれません。

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