知恵の和ノート

2014/10/28

数字に敏感な経営者になる(第34話)

カテゴリー :決算書

仕事を丸投げして数字を見ないのは半人前の経営者
仕事は任せるが数字も検証するのが一人前の経営者

数字に敏感な経営者になる

「これ見れば何でも分かるんだね」

先日、あるクライアントさんを訪問した時のことです。ちょうど決算作業を終えて税理士事務所から書類一式が送られてきたところでした。

経営者が「これ見れば・・・」とおっしゃった「これ」は何のことだかお分かりになるでしょうか?

「これ」は総勘定元帳のことです。

クライアントさんでは本社の社員数は少ないので、毎月の記帳は税理士事務所に依頼しています。

経営者ご自身は別途自分で管理資料を作って、毎月の資金繰りや売上や経費の推移を把握しています。一方で、日々の取引を会計ソフトに入力する作業はアウトソーシングしているのです。

そして、でき上がった決算書の数字を見て未払い金の数字が自分の感覚よりも膨らんでいたため、「どうしてこんな数字になるのだろう?」と疑問に思われていたご様子でした。

そこで、私の方から「総勘定元帳を調べてみてはどうですか」とアドバイスしました。

その経営者は会社の全体の数字は把握されていますが、どちらと言えば経理は苦手。今までも総勘定元帳があるのはご存知でしたが、「見方がよう分からん」ということで敬遠されていたのです。

そこで、今回気になった未払い金の勘定科目のところを示して、「ここに全部取引の明細が載っていますよ」とお伝えしたところ、疑問も解消されました。

会社を分析する時、決算書を見ればおおよそのイメージはつかめます。

一方で、総勘定元帳を見れば会社のすべての取引が記載されているので、「あの会社と取引があるのか」、「材料はあそこから仕入れているんだなぁ」ということがより深く分かります。

また、「社長はかなりお酒好きだな」、「毎晩深夜のタクシー帰りか・・・」といったような、あまり他人には知られたくない実態も明らかになることもあります。

毎月取引件数が多くなってくると、経営者が自らすべての総勘定元帳をチェックするのは物理的に難しいかもしれません。

しかし、少なくとも「あれ、この数字、思ったよりも多いな(少ないな)」と感じた項目については総勘定元帳でチェックすることをお薦めします。
 

一方、昨日参加したセミナー。講師の税理士の先生が税務調査でやってはいけないことの一つとして、架空経費の計上を上げておられました。

事例として紹介されていたのが年末近くにアルバイトの社員が「このままだと配偶者控除の枠をオーバーするので休みを取りたい」と申し出たケース。

会社としては年末の忙しい時期に休まれては困る。

アルバイトとしては時間があるので働いてもいいが、配偶者控除の枠は超えたくない。

そこで、会社側から提案したのは、「一定期間高校生の息子さん名義で働いてもらい、息子さん宛に給料を支払う」というもの。

この場合、バレなければ、会社は忙しい時に人員を確保できる、アルバイトは追加で働いた分給料が増えるというメリット(?)がある訳ですが、税務調査で発覚し、問題になった模様です。

このケースは、全体の数字を見ているだけでは分かりません。もし、息子名義を利用するという提案を人事部長が気を回して実施し、経営者に報告していなかったとしたら、経営者はまさに「知らなかった」という状態に陥ります。

これを防ぐには、定期的にサンプリングして取引内容をチェックするという仕組みが必要です。短期的に人員を確保して、その場は乗り切っても、架空経費の計上のために長期に渡って変なレッテルを貼られては元も子もありません。

会社が成長していくためには人に仕事を任せることは必須です。しかしながら、任せることと丸投げすることは違います

  • 自分の感覚と数字が出てきたら必ず詳細をチェックする
  • 定期的に担当者以外の者に数字をチェックさせる

経営者が数字をきちんと見ているという仕組みを回すことで、問題の芽を早い段階で摘み取ることができます。

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