知恵の和ノート

2016/11/15

知恵を絞り工夫を重ねて活路を見い出す(第141話)

カテゴリー :ビジネスモデル

堅い頭と重い腰で、流れに身をゆだねるのは成長が止まる会社
柔軟な頭と軽い足取りで、流れを自ら作るのが成長し続ける会社

知恵を絞り工夫を重ねて活路を見い出す

年々お客様の数が減っている場合、どうしても、新しいお客様を開拓することが求められます。

今まで自社の商品やサービスに関心のなかった人にどのようにすれば興味を持ってもらえるのか

日本の鉄道で言えば、新たな新幹線の開通によって新幹線の利用者は増えていますが、一方で、地方のローカル線は列車の運行本数も減り、さびれていく傾向にあります。しかし、中には新たな観光列車を走らせて顧客開拓に頑張っているところもあります。

先日乗車した観光列車「越乃Shu*Kura」は主に新潟県を走る列車。越後湯沢駅から上越妙高駅まで、約4時間の旅を楽しみました。

そして、この列車をマーケティングの観点から分析してみると、3つのポイントがあります。
 

1.発想を転換する

普通観光と言えば、観光地で楽しむことがメインになります。

大半の旅行客にとっては、観光地までどう行くかという交通手段についてはあまり興味はありません。つまり、早くて、安くて、便利であれば特に問題なし。全国で新幹線の誘致が盛んなのもひとえにこの理由によります。

しかし、この「越乃Shu*Kura」の場合は、列車に乗ること自体をを観光の目的としています。そのために、古い列車を改造し、観光列車として列車の中で楽しむことを狙っています。
 

2.独自の特徴を出す

新潟と言えば日本の米どころ。美味しい日本酒もたくさんあります。そこで、「越乃Shu*Kura」では、日本酒を楽しむことを主なテーマにしています。

旅行商品にセットになっている食事メニューには、ウェルカムドリンクから始まって、おちょこで出される日本酒、ビンに入っている大吟醸酒など、日本酒尽くし。また、サービスカウンターでは地酒の利き酒コーナーが設置されており、日本酒好きにはたまらない列車になっています。
 

3.矢継ぎ早に手を打つ

「越乃Shu*Kura」は3両編成のうち、1両はイベントスペースになっています。そこでは、乗車中にジャズやクラシックの生演奏と地酒の試飲ができる蔵元イベントが各2回行われます。

また、「日本で一番海に近い駅」と言われる駅では、ちょっと長めに停車して景色を楽しむ時間も設けられています。

このため、約4時間という乗車時間もあっという間でした。
 

このような努力の結果なのか、私が乗った時には、鉄道旅行に行くとよく見かける「鉄ちゃん」と呼ばれるいかにも鉄道ファンですというような人をあまり見かけませんでした。カップルや家族連れ、そして、いかにも「日本酒好きです!」というようなおじさんグループなどがほとんど。

昔からの鉄道ファン以外の顧客開拓に一定の成果は出ていたように感じました。

モノがあふれる時代にあって、人が商品やサービスに対して要求するレベルもだんだん高くなっています

単に珍しい列車を走らせるだけでは、普通の鉄道ファンしか乗車しないかもしれません。また、乗車時間が長いと、私のような乗り鉄の人以外は、どうしても途中で退屈になってしまいます。そして、そもそも有名な観光地に行かない旅行なんて、旅行とは言わないと考えている人がほとんどです。

この点、「越乃Shu*Kura」は随所に工夫が見られました。細かいことを言うと、「もっとこうしたら良いのに」という点はいくつかありましたが、今まで乗車した列車の中ではかなり満足度の高い列車と言えます。

今回ご紹介したのは一つの観光列車の事例です。

けれども、

  • 発想を転換する
  • 独自の特徴を出す
  • 矢継ぎ早に手を打つ

という点では、新しい顧客開拓の点で参考になることもあるのではないでしょうか。
 

  • 従来のままの発想
  • 他社と同じような特徴
  • 少ない打ち手

では、なかなか新しいお客様に興味を持ってもらえません。

JR九州も、民営化以来次々と新しい列車を生み出し、鉄道事業以外にも不動産や農業等にも乗り出して、本州以外のJRでは初めて株式上場にこぎつけました。一方で、JR北海道では、北海道新幹線開通という明るい話題はあるものの、新しい列車の開発中止や新たな廃線の発表など、かなり苦戦を強いられています。

経営資源が限られている中小企業では先手必勝。柔軟な発想でオリジナル性を活かし、打てる手はすべて打って、活路を見出しましょう。

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