知恵の和ノート

2023/04/18

楽天銀行がIPOする報道を受けて感じたこと(第476話)

カテゴリー :経営理念

IPOを目指すなど、高い目標を掲げて挑戦するのは視座が高くなるので、素晴らしいこと。ただ、その前提として「本来の目的は何か」をしっかり定義することはより大切。

楽天銀行がIPOする報道を受けて感じたこと

今月21日に楽天銀行が東京証券取引所のプライム市場に上場する旨、報道されていました。

私が楽天銀行の前身であるイーバンク銀行に転職したのが2000年のこと。まだ銀行免許を取得する前の設立準備会社の時です。

転職した際の理由はいくつかありますが、その一つが「IPO(株式公開)を目指しているので、将来お金持ちになれる可能性がある」です(笑)。


当時はいわゆるIPOブームもあって

社員もストックオプションがもらえる
 ↓
株式公開時にストックオプションを行使することで社員も金銭的に豊かになれる

という構図がありました。

そこで、「転職して一時的に年収は下がるけれど、自分も頑張って上場できれば、下がった分はすぐに取り戻せる」という期待があった訳です。


転職して約1年で無事銀行免許を取得でき、銀行を開業することはできました。

ただ、私が在籍していた3年間では上場は叶わず、入社後にもらったストックオプションは自ら作った規程に基づき全額放棄。

このため、今回楽天銀行が上場しても、私には金銭的なメリットは1円もありません。ただ、自分がかつて働いていた会社が23年かかっても最終的に無事上場できることは素直に嬉しいと感じます。


さて、先日もIPOに関する件で、ある経営者の方からご相談を受けました。


上場会社になるには、いろいろな条件があります。

2000年頃は「えっ、こんな業績でも上場できるの?」という会社が上場しているケースがありました。

・売上もたいして大きくない
・中には赤字が続いているケースもある

けれど、将来は大きく業績が伸びる可能性があれば、新興市場を中心に上場する企業がありました。


もちろん、上場するには業績以外にも「会社の管理体制がしっかりしている」ことが求められます。

この点、銀行免許を取得するには、ある意味上場会社以上に会社の管理体制がしっかりしていることが求めらるので、当時の私は「銀行開業を目指しているので、銀行免許取得と株式公開は両立できる」と考えていました。

しかしながら、一時期のIPOブームも去り、上場審査の基準もいろいろと厳しくなる中で、予定よりもかなりの時間を要した感じです。


このため、先日のご相談の際にも「なぜIPOを目指すのか?」について、いろいろと質問させていただきました。

銀行の場合は業務の性質上、上場するかどうかに関わらず、「会社の管理体制がしっかりしている」ことが求められます。

一方、私も最初に勤めていた銀行を辞めてから実感したのですが、会社によってはそれほど管理体制がしっかりしていなくても大丈夫なケースがあります。

 

例えば、業績が右肩上がりで伸びていれば、数字の管理が多少甘くても、その問題がすぐには表面化しないことがあります。

また、何か社員が不祥事を起こしても、それが大勢に影響ないことであれば、「彼(彼女)が悪かった」ということで根本的な問題が先送りされることもあります。

そして、上場会社の場合は、自社の問題を自分で監査してコントロールするという内部統制の仕組みがどうなっているかが審査基準になっていますが、非上場会社の場合、そこは曖昧なケースが多いのが実態です。


このため、前述のご相談の中では、上場を目指す際には社員との関連で

・今までよりも厳しい管理体制が求められる
・それは必ずしも、社員にとって「面白い」ものではない
・ストックオプション等による金銭的なメリットだけでは社員も納得しないことがある

ことなどをお話しました。


何か高い目標を設定するのは視座が高くなるので、とても良いことです。

一方で、「その高い目標はなんのために設定するのか」という本来の目的はより大切です。


少なくとも、2000年当時の私は上場に伴う金銭的なメリットが働くモチベーションの大きな部分を占めていました。

けれども、もし、そういう社員が大半を占めていると、外部からも上場に伴う金銭的なメリットを目的とする人たちを引き寄せてしまう
恐れがあるのではと今では考えています。


経営者は企業活動を通して、どういう未来を実現したいのか

そこがしっかりしてくると、選択肢はいろいろと広がるのではないでしょうか。

メールマガジンのご登録

ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。

上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。

最新の記事

アーカイブ