知恵の和ノート

2024/10/22

人材育成こそ会社の未来をつくる:離職率を恐れない経営戦略とは(第555話)

カテゴリー :社員教育

人材育成は長期的な視点を持ち、個々の社員の成長に賭け続けることが重要。たとえ、大事に育てた社員が離職しても、愚直に人材育成を積み重ねることが会社の未来を切り開く鍵となる。

離職率を恐れない経営戦略とは

ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。

一生懸命育ててきた社員が、ようやく一人前に成長したと思った矢先に退職してしまう。

これは多くの経営者にとって、非常にショッキングな出来事です。特に、中小企業やスタートアップにとっては、貴重な戦力を失うことは会社の存続にも影響を与えかねません。

 

人材育成がもたらす経営の未来

今年で起業41年を迎える、ソフトウェア開発会社のベテラン経営者・N会長も、この経験を何度もしてきました。

IT業界は転職が活発な業種であり、経験豊富な理系の人材を採用することが一般的です。しかし、設立間もない頃、N会長の会社は理想的な即戦力をなかなか採用できず、むしろコンピュータの知識がゼロの人材を採用し、一から育てる道を選びました。

 

それにも関わらず、時間と労力をかけて育てた社員が、より良い待遇や給料を求めて他社に転職してしまうことが後を絶たなかったといいます。経営者として、これは非常に悔しい経験です。多くの経営者がこの状況に直面すると、心が折れ、「もう人を育てるのはやめよう」と思うかもしれません。

しかし、N会長は違いました。「人材育成は会社だけでなく、社会全体にとっての貢献である」と考え、社員が退職することに対して過度に悲観せず、新たな人材を採用し、育て続けました。その結果、次第に会社に残り、幹部として活躍する人材が増えてきたのです。

 

そして、6年前、N会長は社長職を自社で育てた生え抜きの社員に引き継ぎ、会長に就任されました。経営の大半を後継者に任せられる体制を築けたことは、人材育成の成果と言えるでしょう。

 

離職は避けられないが、その先に見えるもの

経営者の立場からすれば、採用と育成に多大なコストをかけた社員が離職することは、避けたい現実です。多くの企業が「どうやって離職率を下げるか」に頭を悩ませています。

しかし、どれほどの対策を講じても、全ての社員が会社に残るわけではありません。

 

N会長の後を継いだ新しい社長もこう語っています。

「N会長は常に社員にチャンスを与えようとしていました。しかし、そのことに気づかずに転職してしまう社員もいました。」

また、「当社は福利厚生が充実しているが、特に新卒で入社した社員は他社と比較する機会がないため、当社の待遇を当然と考え、さらに多くを求めることもあります」とも話されていました。

これはどの企業にも言えることですが、どれだけ経営者が社員のためを思って施策を講じても、そのすべてを社員が理解し、感謝するわけではありません。経営者として大切なのは、そうした状況に直面したとき、どう自分自身と折り合いをつけるかという点です。

 

人材育成の持続が未来をつくる

もし、N会長が社員の退職が続いた時に「もう育成はやめた」と決断していたら、今の後継社長が育つこともなく、会社も40年以上続かなかったかもしれません。

人材育成は長期的な視点を持ち、個々の社員の成長に賭け続けることが重要です。

 

人材を育て、彼らに自らの未来を託すことで、会社は持続可能な成長を遂げます。どれほど優れた経営戦略があっても、実行するのは人です。そして、会社は経営者の器を超えることはありません。

ベテラン経営者の話をお聞きし、改めて人材育成の重要性とその積み重ねが、会社の未来を切り開く鍵であると強く感じました。

 

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