知恵の和ノート

2026/10/06

「社長の言うことは絶対」が会社を弱くする|社員が意見を言える組織のつくり方(第657話)

カテゴリー :コミュニケーション

社員が意見を言える仕組みを作るだけでは、会社は変わりません。大切なのは、社長自身が耳の痛い意見にも向き合い、経営判断を修正できる組織風土です。

社長に意見を言えない会社は危ない|経営判断を誤らせる組織風土とは

「社長の言うことは絶対」という空気が社内に広がっていると、社員は問題に気づいていても意見を言えなくなります。

特にオーナー経営者や創業社長の会社では、社長の経験や勘が強い影響力を持つ一方、それが行き過ぎると経営判断の誤りや組織の硬直化につながることがあります。

変化の激しい時代に強い会社をつくるには、社員が社長に対しても率直に意見を言える組織風土が欠かせません。

 

「社長の言うことは絶対」という組織風土

「お父さんの言うことを聞きなさい」

子供の頃、母がよく口にしていました。

現在NHKで放送中の朝ドラの主人公の父親ほどではないものの、私の父も、一度言い出したらなかなか指示を変えない人でした。

 

このため岩井家では、白いモノでも父が「黒だ」と言ったら「黒」。

下手に反論すると、かえって話がややこしくなるので、「これは黒ですね」と、まずは従った方が良いと教わってきたのです。

 

会社でも、これと似たようなことが起きる場合があります。

特に、オーナー経営者、それも創業者が現役の社長として強いリーダーシップを発揮している会社では、

「社長の言うことを聞きなさい」

という組織風土が、知らず知らずのうちに出来上がっていることがあります。

 

社員が社長に意見を言えない会社のリスク

社長の指示に従うこと自体が悪いわけではありません。

問題なのは、

「社長の言う通りにしないと大変なことになる」

「社長の指示に従うことが会社のためになる」

と社員が思い込み、自分で考えることをやめてしまうことです。

 

実際、企業の大小を問わず、社員によるコンプライアンス違反やデータ改ざんが不祥事につながるケースがあります。

その中には、経営者が直接、「法律を破れ」「数字を書き換えろ」と指示したわけではなくても、社員が社長の意向を必要以上に忖度した結果、会社に大きな損害を与えてしまうケースもあります。

つまり、「社長の言うことは絶対」という組織風土は、社員の主体性を奪うだけでなく、会社そのもののリスクにもなり得るのです。

 

社長の勘と社員の数字、どちらを優先するのか

法律違反や不祥事につながらなくても、社長に反論できない会社では、経営判断を誤る可能性があります。

先日、ある会社の打ち合わせで、収益を上げるための対策について意見が分かれました。

社長は、「この施策をやれば効果がある」と考えていました。

一方、担当している社員は、「本当にそれで利益が出るのだろうか」と疑問を持っていました。

 

私はその打ち合わせに同席していたので、「まずは粗利の予測数字を計算してから、実行するかどうかを決めましょう」と提案しました。

その結果、感覚だけで結論を出さず、数字を確認してから判断することになりました。

 

第三者がいなければ社長の意見が通っていたかもしれない

しかし、もし私のような第三者がその場にいなかったら、どうなっていたでしょうか。

担当社員が心の中で、「本当に社長の言う通りになるのかなぁ」と思っていたとしても、最終的には社長の意見がそのまま採用されていた可能性があります。

 

私が見る限り、その案件については、社員の考え方の方が理にかなっていました。

なぜなら、その社員は数字を細かく把握した上で判断していたのに対し、社長は重要な数字を十分に確認しないまま、長年の経験と勘から、「これをやれば儲かる」と考えておられたからです。

 

経営者に必要なのは社員の意見を聞く姿勢

その話題が終わり、担当社員が席を離れた後、私は社長に申し上げました。

「もっと社員の意見に耳を傾けましょう」

 

その社員は、社長の右腕として活躍されている方です。特に数字については社長以上に細かく把握しているため、話を聞いていても考え方が論理的で、説得力があります。

もちろん、だからといって社員の意見が常に正しいわけではありません。

 

社長と社員とでは、立場が違います。見ている景色も違えば、経験の蓄積も違います。社員には見えていないリスクや可能性を、社長だからこそ感じ取れることもあります。

だからこそ、社員の意見をそのまま採用すればよい、という話ではありません。

 

社員の反論は社長への反抗ではない

大切なのは、「社員が社長と違う意見を言えるかどうか」です。

社員からの反論を、「社長に逆らっている」と受け取ってしまうと、社員はだんだん何も言わなくなります。

一方で、「自分には見えていない何かがあるのかもしれない」と受け止めることができれば、社員の意見は経営判断を磨く材料になります。

 

社長の経験や勘と、社員が持っている現場の情報や数字。

どちらか一方だけではなく、両方をぶつけ合わせることで、より良い判断につながるのです。

 

社員が問題に気づいていても言えない会社は多い

私のような外部の人間にコンサルティングを依頼される会社は、社員だけでは解決しにくい課題を抱えているケースがほとんどです。

ところが、社内でいろいろなお話を聞いていると、必ずしも社員が問題に気づいていないわけではありません。

むしろ、

「社員はいろいろな問題に気づいている」

「しかし、その問題について社長に意見を言えない」

という会社が少なからずあります。

 

これは非常にもったいないことです。

会社の問題を一番近くで見ている社員が、その問題を口にできない。せっかく社内に貴重な情報があるのに、それが経営判断に活かされていないことになります。

 

意見を言う仕組みを作るだけでは変わらない

最近では、

「社員の声を聞きましょう」

「心理的安全性を高めましょう」

「1on1ミーティングをやりましょう」

といった取り組みも広がっています。

 

もちろん、そうした仕組みを作ることには意味があります。

しかし、本当に重要なのは、その仕組みを作ることではありません。社員が社長と違う意見を言った時に、社長がどう反応するかです。

 

社員が勇気を出して、「私は違うと思います」と言った瞬間に、「お前は分かっていない」「余計なことを言うな」と否定されたら、社員は次から何も言わなくなります。

どれだけ意見を言う場を作っても、経営者自身に異論を受け止める姿勢がなければ、その仕組みは形だけになってしまいます。

 

強い会社は社員が社長に反論できる

では、

社員が黙って何でも社長の指示に従う会社

社員が時には社長の指示に反論できる会社

変化の激しい時代に、どちらの会社が生き残る可能性が高いでしょうか。

私は、後者だと考えています。

 

社長一人がどれだけ優秀でも、すべての情報を把握することはできません。会社が成長すればするほど、現場で起きていることを社長が直接見ることは難しくなります。だからこそ、社員が感じている違和感や、現場で把握している数字が重要になります。

その情報を社長まで届けられる会社と、途中で止まってしまう会社。

時間が経つほど、その差は大きくなっていきます。

 

オーナー経営者に求められる「異論を受け止める度量」

「社長の言うことを聞きなさい」

私の母のように、直接そう口にしていなくても、同じような空気が社内に広がっている会社は要注意です。

オーナー経営者であれば、「自分の会社なのだから、自分の好きなようにやりたい」と思うのは自然なことです。

最終的な経営責任を負っているのも社長です。だから、最後は社長が決めればよい。

 

しかし、「自分で最終判断すること」と、「周囲の意見を聞かないこと」は、まったく違います。

自分とは異なる意見が出てきた時に、「そういう考え方もあるのか」と、いったん受け止めることができるかどうか。

 

その上で、

「なぜそう思うのか」

「数字で見るとどうなのか」

「自分が見落としているものはないか」

と確認する。

その積み重ねが、経営判断の質を高めます。

 

まとめ

社員が意見を言える会社は経営判断に強くなる

社員から反論されることを歓迎する必要まではありません。しかし、少なくとも、違う意見が出てきた時に耳を塞がない。それが経営者には必要です。

社員が問題に気づいていても、社長に何も言えない会社では、その問題は放置され続けます。

一方で、社員が社長に対しても、「私は違うと思います」と言える会社なら、経営判断を修正するチャンスが生まれます。

 

社員が意見を言える仕組みを作ることよりも、まず必要なのは、経営者自身が異論を受け止めることです。

その度量がなければ、いくら立派な制度や仕組みを作っても、砂上の楼閣に終わります。

 

★関連する記事は「オーナー経営の会社はなぜ人材採用で苦戦するのか?」

会社の風通しが勝敗を分ける理由

人材不足時代、オーナー経営の閉鎖性は採用の壁となる。株主・社長・社員が共有する「核」が壁を突破し、人材を惹きつける力になる。

メールマガジンのご登録

ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。

上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。

最新の記事

アーカイブ