知恵の和ノート
中小企業は大企業を真似るな!高校野球に学ぶ小さな会社の勝ち方(第661話)
中小企業の差別化は、何を足すかではなく、何を捨てるかで決まる。すべてのお客様に応えようとせず、特定のニーズに集中する。その決断が、大企業に負けない競争力を生み出す。

中小企業が大企業との競争に勝つには、資金力や技術力だけで勝負しないことが重要です。高校野球がプロ野球とは違う魅力でファンを引きつけるように、小さな会社にも独自の勝ち方があります。
今回は、高校野球をヒントに、顧客ニーズを絞り込むことで大企業との差別化を図る経営戦略について考えます。
高校野球がプロ野球に負けない人気を集める理由
プロ野球は日本シリーズも終わり、もっぱらの話題は松井秀喜さんの巨人監督就任。
一方、大リーグのワールドシリーズも、日本人選手が出場しなかったこともあり、日本では例年ほど盛り上がらないまま終わってしまった印象です。
私が子供の頃は、巨人の試合がある日は、ほぼ必ずテレビ中継がありました。しかし、昨今は日本シリーズこそ放映されるものの、リーグ戦をテレビで見る機会はぐんと減りました。
大リーグも、日本人選手が出場する試合は注目されますが、日本人選手が出ない試合となれば、関心はそれほど高まりません。
まさに、ニーズが少なければ供給も減る典型です。
ところが、高校野球はどうでしょうか。
言ってみれば、高校の部活動の一つですが、春と夏の甲子園大会は、毎年必ずテレビで放映されます。
出場チームや選手が毎回入れ替わっても、一定の人気を維持している訳です。
技術力だけでは決まらない顧客の支持
体力やテクニックの面では、プロ野球と高校野球には大きな差があります。当然ながら、選手の実力を比較すれば「プロ野球>高校野球」です。
それでも、高校野球には熱心なファンがいます。普段はプロ野球を見なくても、甲子園大会だけは欠かさず見る人も少なくありません。
なぜでしょうか。
高校野球の魅力として、次のような要素が挙げられます。
- ひたむきさ:勝利に向かって全力で取り組む姿勢
- スリリング:負けたら終わりというトーナメント方式
- つながり:地元の代表校を応援する地域との一体感
つまり、体力やテクニックではプロ選手に及ばなくても、それ以外の魅力で人の心をつかんでいるのです。
ここに、中小企業が大企業と競争する際の重要なヒントがあります。
中小企業が大企業に勝つための差別化戦略とは?
高校野球とプロ野球の関係を会社経営に置き換えると、次のように捉えることができます。
- 大企業:プロ野球
- 中小企業:高校野球
資金力や人材、設備、技術開発力といった企業の体力では、中小企業は大企業に対して劣勢に立たされることが少なくありません。しかし、高校野球がプロ野球とは違う魅力でファンを引きつけるように、中小企業にも大企業に勝てる市場があります。
大切なのは、大企業と同じ基準で競争しようとしないことです。
無理に違いを作るだけでは差別化できない
もちろん、大企業が持っていない優れた技術力や独自のノウハウを持つ中小企業もあります。その場合は、その強みを活かした経営戦略が有効です。
一方、業種や業態によっては、大企業と提供している商品やサービスがそれほど変わらず、特別な技術やノウハウも持っていない会社も多いかと思います。
そこで、差別化を図ろうとして、「ウチはここが違う」と無理やり違いを作るケースがあります。
しかし、その違いがお客様に伝わらなければ、選ばれる理由にはなりません。会社側が考える特徴と、お客様が感じる価値は必ずしも一致しないからです。
では、どうすれば良いのでしょうか。
何かを足すのではなく、あえて捨てるという発想
中小企業が大企業との差別化を図る際、私がおすすめしたいのは、「何を足すか」ではなく「何を捨てるか」を考えることです。
資金力や技術力で劣っている部分を無理に補おうとすると、お金も時間もかかります。しかも、ようやく大企業に近づいた頃には、大企業がさらに先へ進んでいるかもしれません。
それよりも、足りない部分は受け入れた上で、自社が勝てる分野に経営資源集中させる。
その方が、小さな会社にとって現実的な競争戦略ではないでしょうか。
顧客ニーズを絞り込むことでヒット商品を生み出す方法
実際に、顧客ニーズを絞り込むことで、ヒット商品を連発している会社があります。
その会社が着目しているのは、お客様のお困り事をリサーチした際に、3番目以降に挙がるニーズです。
一般的には、顧客調査で最も多く挙がるニーズを優先して商品を開発するのが自然です。しかし、その会社は、あえて優先順位の低いニーズに注目しています。
大企業が対応する上位ニーズをあえて狙わない
例えば、お客様のニーズを調査した結果、次のような優先順位が明らかになったとします。
1番目:最も多くのお客様が求めていること
2番目:次に多くのお客様が求めていること
3番目:一定のお客様が求めていること
4番目:一部のお客様が強く求めていること
5番目:さらに限定されたお客様が求めていること
通常、大企業は1番目や2番目のニーズに対応する商品を開発します。場合によっては、1番目から5番目までのニーズを幅広く網羅した商品を作ることもあります。
資金力や開発力があるからこそ、幅広いニーズに対応できる訳です。
一方、中小企業が同じことをしようとすると、開発費用がかさみ、商品が完成するまでに時間もかかります。そこで、先ほどの会社は、あえて3番目以降のニーズに特化した商品を開発しています。
すると、「そうそう、こういう商品が欲しかった」というお客様が反応するのです。
すべてのお客様に支持されなくても、特定のニーズを持つお客様から強く支持されれば、商売は成り立ちます。
これこそ、中小企業が大企業との競争を避けながら、独自の市場を見つける方法です。
顧客ニーズを絞ることで得られる2つのメリット
顧客ニーズを絞り込むことには、大きく2つのメリットがあります。
1.開発費用と開発時間を抑えられる
しかし、対応するニーズを限定すれば、必要な機能も絞られます。
その結果、開発費用や開発時間を抑えられ、販売価格を安くできる可能性があります。
2.商品の特徴が明確になる
多くのニーズに対応した商品は便利ですが、何が一番の特徴なのか分かりにくくなることもあります。
一方、特定のニーズに絞った商品であれば、「この商品は、こういう悩みを持つ人のための商品です」と明確に伝えられます。
お客様も、自分に必要な商品かどうかを判断しやすくなります。
ただし、ニーズを絞れば必ず売れる訳ではありません。そのニーズに十分な需要があり、お客様が対価を払ってでも解決したいと考えていることが前提です。
大切なのは、単に市場を小さくすることではなく、自社が選ばれる可能性の高い市場を見つけることです。
小さな会社が大企業に勝つために、今すぐできること
中小企業が大企業と同じ土俵で戦おうとすると、どうしても資金力や技術力の差が問題になります。しかし、資金力や技術力の問題は、すぐに解決できるものではありません。
だからといって、何もできない訳ではありません。発想を転換すれば、今すぐ社員が取り組めることや、お客様に伝えられることは必ずあります。
自社が勝てる市場を見つける3つの問い
例えば、次の3つについて考えてみてはいかがでしょうか。
- お客様が抱えている不満のうち、大企業の商品では十分に解決できていないものは何か?
- 今の商品やサービスから、あえて削っても問題のない機能や対応は何か?
- すべてのお客様に選ばれなくても、特定のお客様から強く支持される商品やサービスは何か?
この3つを考えるだけでも、これまでとは違った市場の見方ができるはずです。
重要なのは、自社の弱い部分を無理に強くすることだけに目を向けないこと。
今ある経営資源を活かして、どの分野ならお客様に選ばれるのか。
その視点から、自社の競争戦略を見直すことが大切です。
大企業への憧れを捨て、自社ならではの勝ち方を見つけよう
小さな会社が大きな会社に憧れを抱き、「あのような会社になりたい」と考えるのは自然なことです。
しかし、大企業のやり方をそのまま真似しても、同じ市場で勝てるとは限りません。
高校野球がプロ野球の真似をするのではなく、高校野球ならではの魅力でファンを引きつけているように、中小企業にも独自の勝ち方があります。
大切なのは、足りないものを嘆くことでも、無理に違いを作ることでもありません。自社の特徴を見極め、お客様が求める価値に焦点を絞ることです。
そのためには、あえて捨てるという決断も必要になります。
「憧れるのはやめましょう」ではありませんが、憧れだけでは大企業に勝つことはできません。
動かせるお金は小さくても、発想を変えることは今すぐできます。
大企業と同じことをするのではなく、自社だからこそ選ばれる分野を見つける。そして、限られた経営資源をそこに集中させる。
小さな会社には、小さな会社なりの勝ち方があります。
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