知恵の和ノート
地域密着ビジネスの集客戦略|「知ってもらう」から「ファンであり続けてもらう」まで(第656話)
集客は「知ってもらう」だけでは終わらない。ファンになってもらい、選ばれ続ける仕組みまでつくってこそ、地域密着ビジネスは強くなる。

地域密着ビジネスで安定した売上をつくるには、まず地域のお客様に「知ってもらう」ことが欠かせません。しかし、集客に成功して一度利用してもらえたとしても、それだけで事業が安定するわけではありません。
大切なのは、知ってもらった後に「ファンになってもらう」こと、そして、その後も「ファンであり続けてもらう」ことです。
広告やチラシ、イベントなどで認知を広げることはできます。しかし、長く選ばれ続けるためには、商品やサービスの質、接客、価格、使いやすさなどを継続して磨いていく必要があります。
今回は、近所で新規開業するクリニックと、私自身が50年以上通い続けている飲食店の事例から、地域密着ビジネスにおける「知ってもらう→ファンになってもらう→選ばれ続ける」という集客と顧客維持の基本について考えます。
地域密着ビジネスは、まず「知ってもらう」ことから始まる
来月、近所で新しいクリニックが開業するのですが、その開業前の取り組みがなかなか興味深いです。
もともと大きな看板が設置されているので、それだけでもかなり目立ちます。
さらに9月に入ってからは、毎週土日に開業に向けたイベントを開催しています。キッチンカーを呼んで、ちょっとしたお祭りのような雰囲気をつくるだけではありません。
「親子で学べる救急実技体験」
「ナイトクリニック謎解きスタンプラリー」
など、子供も楽しめそうな企画を週替わりで行っています。
病院やクリニックが新たに開業する際、近隣にチラシを配ることは珍しくありません。ただ、多くの場合は開業の1週間ほど前から告知を始める程度ではないでしょうか。
それに比べると、このクリニックはかなり早い段階から時間とお金をかけ、知恵を絞って地域との接点をつくっています。
新規開業では「技術力」より先に認知が必要になる
私たちが病院を選ぶ際には、いくつかの判断基準があります。
- 場所:家や会社から近いか
- 技術:先生の腕は確かか
- 対応:医師や看護師は親切か
- 時間:診療時間が利用しやすいか
このうち、場所や診療時間については、事前に調べることができます。しかし、先生の技術力やスタッフの対応については、実際に診療を受けてみなければ分からない部分があります。
すでに開業している病院であれば、近所の人に評判を聞いたり、口コミを参考にしたりすることもできます。しかし、まったくの新規開業であれば、まだ誰も診療を受けたことがありません。
どれほど腕の良い先生がいても、どれほど親切なスタッフが揃っていても、その存在を知られていなければ、患者さんが来院するきっかけは生まれません。だからこそ、最初の段階では「どうやって知ってもらうか」が非常に重要になります。
今回のクリニックが開業前からイベントを繰り返しているのも、そのためではないでしょうか。
集客の次に必要なのは「ファンになってもらう」こと
もちろん、知ってもらえば、それだけで経営が安定するわけではありません。
病院の場合、一度診療を受けて、
「先生が親切だった」
「説明が分かりやすかった」
「治療にも満足できた」
となれば、よほどのことがない限り、別の病院へ変えることは少ないのではないでしょうか。
実際、私も引っ越して以前より遠くなったにもかかわらず、前に住んでいた家の近くにある歯医者さんへ今も定期的に通っています。
最初は「近いから」という理由で利用したとしても、満足できる経験が積み重なることで、「ここなら安心」という信頼に変わります。
これは病院に限った話ではありません。
地域密着ビジネスには3つの段階がある
飲食店、美容院、小売店、学習塾、整骨院、工務店など、地域密着型のビジネスで考えると、大切なのは次の3段階です。
- どうやって最初に知ってもらうか
- どうやってファンになってもらうか
- どうやってファンであり続けてもらうか
まず必要なのは認知です。
チラシを配ったり、広告を出したり、SNSで情報発信したりするのも有効でしょう。しかし、チラシを配ればよい、広告を出せばよいという話ではありません。「誰に、何を伝えるのか」が問われます。
この点、先ほどのクリニックは、病院を利用する機会が比較的多い子供や、その親を強く意識していることが伝わってきます。
単に、「〇月〇日開業します」と伝えるだけではなく、開業前から家族で足を運ぶ理由をつくっているわけです。
知ってもらうためには、広告の量だけではなく、その中身が重要です。
リピーターを増やすには「ファンであり続けてもらう」必要がある
新規のお客様に来てもらい、一度ファンになってもらえたとしても、そこで安心するわけにはいきません。
事業を長く続けていくには、その後も選ばれ続ける必要があります。
たとえば、
- 商品やサービスの質が以前より悪くなった
- 担当する人が代わったら対応のレベルが落ちた
- 店が汚くなった
- 価格に見合う価値を感じられなくなった
といったことが起これば、お客様は離れていきます。
「以前は良かった」という評価だけで、お客様がいつまでも利用し続けてくれるわけではありません。
だからこそ、ファンであり続けてもらうためには、不断の努力が必要です。
長く選ばれる店は「当たり前」を守り続けている
私がたまに行く老舗の飲食店があります。
私がその店を最初に知ったのは、小学生の頃です。当時、祖父母の家がその店の近所にあり、それがきっかけで利用するようになりました。それ以来、50年以上ファンであり続けています。
もちろん、その間に料理をする人も代わっていますし、接客をする人も代わっています。
それでも、
- いつ行っても店が清潔
- 料理が美味しい
- 価格がリーズナブル
という基本的な価値は大きく変わっていません。
だから、「また行こうか」となります。
特別な仕掛けがあるから50年間通っているわけではありません。期待している価値を、長い間きちんと提供し続けているからです。
口コミが生まれる会社は「集客し続けなくても売れる」
ここまで地域密着型ビジネスを例に挙げてきました。
しかし、「ファンであり続けてもらう」という取り組みを徹底できれば、その影響は地域の中だけにとどまりません。
お客様が満足すれば、人に話したくなります。知人や友人に紹介することもあります。そして今は、口コミやSNS、インターネットを通じて情報が地域を越えて広がる時代です。
時には、「どうして、こんな場所に外国人がたくさん来ているのだろう?」と思うような店もあります。
その店が大規模な広告を行ったからとは限りません。実際に利用した人の体験が口コミとなり、その情報を見た人が訪れ、さらに次の口コミにつながっている場合もあります。
ファンが新しいお客様を連れてくる
「どうやって知ってもらうか」を考えることは大切です。
しかし、長く選ばれる状態をつくることができれば、既存のお客様が新しいお客様にその存在を伝えてくれるようになります。
つまり、
知ってもらう
↓
利用してもらう
↓
ファンになってもらう
↓
ファンであり続けてもらう
↓
口コミや紹介が生まれる
↓
新しいお客様に知ってもらう
という循環が生まれます。
この循環がうまく回り始めると、「どうやって知ってもらうか」だけに多くのお金や労力を使わなくても、自然と売上が上がり、利益も確保しやすくなります。
集客戦略の基本は「認知・ファン化・継続」の積み重ね
新しくビジネスを始めるのであれば、
まずは、「どうやって知ってもらうか」を意識すること。
次に、「知ってもらった後、どうやってファンになってもらうか」を考え、実践すること。
そして、「どうすれば、その後もファンであり続けてもらえるか」を考え続けることです。
ある程度結果が出ても、それで終わりではありません。商品やサービス、接客、価格、仕組みを常に見直し、改善を続ける必要があります。
言ってみれば、どれも当たり前のことかもしれません。
しかし、
「知ってもらう」
「ファンになってもらう」
「ファンであり続けてもらう」
という当たり前のことを、何年も、何十年も愚直に実践し続けるのは、言うほど簡単ではありません。
だからこそ、その当たり前を続けられる会社が、地域のお客様から長く選ばれ、やがて地域を越えて知られる存在になるのではないでしょうか。
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