知恵の和ノート
猫の手も借りたい採用が生む負の資産|成長を止める社員への対処法(第602話)
人材不足を恐れて問題社員を放置すれば、会社全体が弱くなる。経営者は会社の未来を最優先に。
かつて、フィリピンに駐在していた時のことです。
当時は日系企業の海外進出が盛んだったので、そのサポートする目的もあって、銀行が駐在員事務所を開設したのですが、日系企業がトラブルに巻き込まれる典型的なパターンがありました。
それは、「会社設立当初に採用した社員がトラブルの火種になる」というケースです。
日系企業の現地法人の社長に就任される方の中には、必ずしも英語が得意だとは限りません。このため、社長の補佐役として、「日本語ができる」ことを優先して、現地スタッフを採用することがあります。
そして、工場の建設が始まり、そこでの生産も開始されて、事業も本格的にスタートした際、当初は一担当者だった社員が幹部社員に就任することが多いです。
この場合、その社員が元々かなり優秀であったり、会社の成長と共に自分も成長していくようなタイプだったりするなら、問題はありません。
しかしながら、一定の割合で、日本語は達者だけれども
・管理職として社員をマネジメントしていく力がない
・設立当初から社長の身近にいることを社内で鼻にかける
・社長向けと社員向けにたくみに言動を使い分ける
人がいます。
そして、このような問題がある社員を早めに見極めて、それなりの手を打てば良いのですが
・創業時のたいへんな時期にサポートしてくれた恩義を社長が感じている
・技術出身の社長の中には人のマネジメントにあまり関心がない人もいる
・事業が本格稼働するまではたいへん忙しく、社員の育成や評価はどうしても後回しになる
といった事情もあり、問題となる社員をそのまま放置して、野放しにしていることもあります。
その結果、ある時、その問題社員を中心に労働組合を結成して会社との対決姿勢を示したり、不満を抱いている社員がいきなりストライキを起こしたりするといったパターンが何社かありました。
忙しい時に「猫の手も借りたい」とよく言われます。けれども、「猫の手」はあくまで、「猫の手」。
採用時に採用基準を下げて人材を確保することは、やむを得ない側面があります。けれども、人は猫の世話をすることはできても、猫の状態のまま、進化しない人を野放しにすると、会社として大きな損失を招く恐れがあります。
会社が創業期、成長期、安定期と発展していくにつれて、必要とされる人材も変わってきます。その際、残念ながら社員も会社のステージに応じて成長するとは限りません。
そして、苦労した時期にお世話になったけれど、会社のステージが変わっても、成長の兆しが見えない社員をどうするのかに関しては、経営者は会社全体への影響を最優先にして、対策を立てなければなりません。
「朱に交われば赤くなる」ではありませんが、能力もあり、意欲もあって新たに入社した社員も、昔からいて会社の事情に詳しい古株社員が「まぁ、仕事はこれくらいのレベルでいいんだよ」という姿勢を続けていたら、せっかくの能力も活かせず、意欲も減退していきます。
人材不足が続いているため、「いま社員に辞められたら困る」と思う気持ちは理解できます。けれども、よほど特殊性のある仕事は別にして、一人社員が辞めても、多少の混乱はあっても、そこは時間が解決してくれます。
一方、問題のある社員をそのまま放置することは、時間の経過とともに、見えない負の資産が積み上がっていく可能性があります。
特に「猫の手も借りたい」時期に採用して、そこから成長が止まっていたり、注意しても一向に聞く耳を持たず、改善する傾向が見えなかったりする社員は、期限を切って対応するようにしましょう。
「辞められたら困る」よりも「残したら危険」。経営者の勇気ある判断が、組織を強くします。
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