知恵の和ノート
売上ランキングで分かる改革のツボ|「意味のある赤字」と「意味のない赤字」の見極め方 (第603話)
売上や件数に惑わされず、採算を見極めよ。「意味のない赤字」の放置は会社を蝕む。
複数の商品やサービスを提供している会社で、売上高ランキングや取扱件数ランキングを作ってみると、いろいろな発見があります。
ある会社では一番売れている商品が、広告費や配送費などを勘案すると、実質的には赤字であることが判明しました。
赤字には
- 意味のある赤字
- 意味のない赤字
の2種類があります。
「意味のある赤字」とは、会社がある意図を持って販売しているため、それ単独で見た場合には、赤字になっているケースです。
例えば、通販などで、初回限定で定価の半額などで商品を売っている場合などがそれに当たります。まずは、赤字覚悟で商品をお試ししてもらい、定期購入につなげます。
初回限定の特別価格での販売だけで終わってしまうと、赤字を出して終わりです。けれども、一定の割合で定期購入につながる流れができていれば、トータル的には黒字を確保できます。
つまり、原価ギリギリや、時には原価を下回る価格で販売しても、「意味のある赤字」となります。
一方、たとえ、粗利段階では黒字になっていても、
・多額の広告宣伝費がかかっている
・商品の販売や発送に関わる費用がかなりかかっている
・価格が割安だから購入するお客様ばかりが集まっている
ために赤字が続いていると、「意味のない赤字」である可能性があります。
前述の会社では、一番売れている商品が実質的には赤字であることが判明したため、商品単価を上げる、商品の構成を変えるなどの手を打つことになりました。
別の会社では、取扱件数の多い工事で、かなり職人さんの時間が取られていることが判明しました。
金額的に小さく、採算もあまり良くなかったので、社長さんには
「この工事は縮小された方が良いのでは」
とアドバイスしました。
けれども、社長さんからの回答は
「この工事をやっているからこそ、大口の工事も受注できている」
でした。
そこで、本当にそうなのかを詳しく調査したところ
・同じ会社から大口の工事を受注しているのは事実
・けれども、取扱件数の多い工事をやっていることと大口受注とは因果関係はない
ことが判明しました。
つまり、その会社では
得意とする分野の工事でしっかり対応してくれる
↓
大口の工事を発注しても大丈夫という信頼がある
から、大口の受注につながっていたのであって、(他社でも対応できる)取扱件数の多い工事を止めても支障がないことが分かったのです。
最終的には、取引先とも協議をして、それまで取扱件数の多かった工事は今後やらない方針が決まりました。その結果、会社としては、時間的な余裕ができたので、これまでよりも、金額が大きく、より採算の取れる工事に力を入れるようになり、売上も利益も増えるようになりました。
このように、売上高別や取扱件数別に商品やサービスを並べてみると、
- 売上高が大きい割には採算が悪い
- 取扱件数が多い割には採算が悪い
ものが見つかることがあります。
- 売上高が大きい→大きなお金が入ってくるので安心感がある
- 取扱件数が多い→毎日仕事があるので、仕事をやっている実感がある
かもしれません。
しかしながら、現在の延長線上で、本当は採算が悪いにも関わらず、惰性的にそのような仕事を続けていると、中長期的には必ず会社の業績の足かせになります。
これを防ぐためには
1.売上高や取扱件数別に商品ベスト5を並べてみる
↓
2.商品毎に粗利だけでなく、人件費や広告費等も含めた取引採算を見極める
↓
3.赤字だったり、黒字でもかなり低かったりする場合は価格や販売戦略を見直し、場合によっては販売を止める
という手順で進めていきましょう。
通販会社などでお得な商品を出しているのは、損失可能な範囲を予め想定した上で、「意味のある赤字」を戦略的に出しているからです。
しかしながら、「売れ行きが良いから」「次から次へと依頼が来るから」といった理由だけで対応し、会社として戦略を立てていないと、「意味のない赤字」を垂れ流している恐れがあります。
特に人手がかかっている商品やサービスは、単価を上げるだけでなく、「IT化を進める」「業務プロセスを見直す」など、これまでのやり方そのものを変革しないと、赤字は解消しないので、気をつけましょう。
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