知恵の和ノート
「やりたいこと」を仕事にするな―経営者が越えるべき自己満足の壁(第618話)
仕事とは、自己満足ではなく価値提供。経営者の「やりたいこと」が社員や顧客の共感を失った瞬間、それは仕事ではなく趣味になる。

「やりたいことを仕事にするな」
マーケティングでよく言われる言葉。自分のやりたいことではなく、「お客様から求められることを仕事にしよう」という訳です。
このため、「単にやりたいことをやるのは『趣味』だ」とも言われたりします。
それゆえ、年末のNHKスペシャルで大谷選手が「趣味としての野球は消したくない」と発言しているのを見て、少し驚きました。
「大谷翔平であり続けるために、大切にしていきたいことは何か」という問いに対する回答だったのですが、大谷選手の口から「趣味」という言葉が出てきたのは意外でした。
もちろん大谷選手の場合は、やりたい野球を仕事にしています。けれども、仕事である限り、責任もありますし、かなりのプレッシャーもかかります。
このため、スポーツ選手の中には引退後に現役時代を振り返って、「楽しいことより、辛いことの方が多かった」と口にする人も少なくありません。
けれども、世界一の選手ともなれば、責任を果たすのは当然のこととして、趣味として自分の満足を満たすことを求めているのかもしれません。
さて、会社の経営者の場合、「やりたいこと」はあっても、「やるべきこと」や「やらなければならないこと」がたくさんあります。
中には自分のやりたいことを優先して、本来やるべきことをやっていない経営者もおられます。けれども、そのような経営者の会社は、例外なく業績に問題があります。
一方、中には「仕事が趣味」と言う経営者もおられます。たいていの場合、会社の業績等に問題はないのですが、では、そのような経営者に憧れるかと言えば、必ずしもそうとは言えません。
なぜなら、「仕事が趣味」と言う経営者の中には、それを当たり前と考えて、猛烈に働くことを社員にも強要する人もいるから。
趣味である以上、あくまで自己満足の世界。自分はそれが楽しいからやっているのであって、それを他者に強いるのは論外です。
創業者の場合は、「仕事が趣味」とおっしゃる方が多いのを感じます。けれども、それが二代目や三代目になると、そのような価値観が通用しません。
この観点から、前述の大谷選手の発言を振り返ってみると、「趣味としての野球」というのは、ご本人にしか分からないものであり、それを他者に強要するものではありません。
それゆえ、「大谷翔平であり続けるために、大切にしていきたいことは何か」という質問に対しては、まさに的確な回答だったのではないでしょうか。
経営者がやりたいことの中には
・お客様の役に立つこと
・社会の役に立つこと
・あくまで自己満足のためにやりたいこと
が含まれています。
最初の二つは社員も共感できますが、最後の自己満足のためにやりたいことは趣味であり、社員は共感しません。
やるべきことをやった上で、やりたいことをやるのは自由。しかしながら、そのやりたいことが、何らかの形でお客様や社会に価値を提供するものでない限り、それはあくまでも個人の趣味。
そして、趣味は自己満足を満たすものであって、人から称賛されたり、人に同意を求めたりするものではありません。
スーパースターは仕事を極めた上で、仕事を趣味に転化することができます。しかし、私のような凡人はなかなか仕事を極めること自体が難しいし、さらに仕事そのものを趣味として楽しむのも難しいのが現状。
では、どうすれば良いか。
少なくとも、すぐできることは
- 自己満足を追求する趣味を仕事にしないこと
- 仕事では自己満足よりもお客様満足を常に心掛けること
- 仕事で得られた収入で実行できる趣味を楽しみに仕事で頑張ること
ではないでしょうか。
仕事を楽しいと感じられたら、それはそれでたいへん素晴らしいことです。けれども、いわゆる成功者と言われる人が仕事を楽しんでいるように見えた際、そうではない自分と比較して落ち込むぐらいなら、「仕事は仕事」として割り切って淡々とやるのも、プロフェッショナルとしてはありです。
そして、昨今はいろいろな解決方法があるので、「お客様にどのような価値を提供するのか」がハッキリしていないと、淡々と取り組む仕事も簡単にはいただけません。
また、嫌々やっているような仕事は、その気持ちがお客様にも伝わるので、一度は受注できても、リピートにはつながりません。
つまり、自分は「仕事を楽しんでないなぁ」と感じていても、その仕事を淡々とやり続けているなら、それは一定のお客様には価値を提供できている証拠です。
世の中では大谷選手のように、凄い人の話題が取り上げられます。そして、そのような凄い人に憧れるのは自由。
けれども、単に憧れだけで終わってしまっては無意味。そのような凄い人に自分もなれるように、さらに努力を重ねる道もあれば、「大谷選手はそうだけれど、では、自分の場合はどうするか」を模索して、凄い人とは違う道を歩むのもありです。
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