知恵の和ノート
「その仕事、本当に必要ですか?」中小企業が成果につながらない仕事を見直す方法(第653話)
「やった方がいい」は無限にある。しかし、人も時間も有限。成果につながらない仕事を見極め、やめることも経営者の重要な仕事である。

「その仕事、本当に必要ですか?」
中小企業では、人手も時間も限られています。それでも、「昔から続けているから」「やった方が丁寧だから」といった理由で、手間がかかる割に成果につながらない仕事を続けているケースは少なくありません。
もちろん、仕事へのこだわりや品質を高める姿勢は大切です。しかし、お客様がそこまで求めていなかったり、時間や労力に対して得られる効果が小さかったりするなら、一度立ち止まって仕事を見直す必要があります。
会社の生産性を高めるには、新しい仕事を増やすだけでなく、「やめる仕事」を決めることも重要な経営判断です。
今回は、弊社で実際にある作業をやめた経験をもとに、成果につながらない仕事をどのような視点で見直せばよいのかを考えます。
手間がかかるのに成果につながらない仕事はないか
会社の中に、
- お客様からはそこまで求められていない
- 手間がかかる割には、それほど効果がない
にもかかわらず、なんとなく続けている仕事はないでしょうか。
自分たちでは「やった方が良い」と思っているため、こうした仕事は意外と見直されません。
弊社でも最近、そんな仕事を一つやめました。
コラムの「ページ内リンク」をやめた理由
弊社では6月から、新しいコラムとして「人材育成の設計図」を掲載しています。
このコラムでは複数の見出しを使っているため、読んでいただく方の利便性を考えて、記事の冒頭に目次を掲載しています。
そして当初は、目次の項目をクリックすると該当する見出しまで移動できる「ページ内リンク」も設定していました。例えば、目次の3番目をクリックすると、そのまま3番目の項目まで移動できる仕組みです。
読者にとっては便利なので、やらないよりは、やった方が良い。
そう考えて設定していました。
「やった方が良い」が投稿の妨げになっていた
ところが、弊社が使っているウェブサイトでは、目次を作っただけではページ内リンクが自動的に設定されません。記事ごとにHTMLコードを設定する必要がありました。
やり方そのものはウェブサイトの管理会社に教えてもらったのですが、不慣れな私にとっては毎回それなりに時間がかかります。通常のブログやコラムを投稿するよりも、余計な作業が一つ増えることになります。
その結果、「ページ内リンクも設定しないといけない」と思うと、ついつい投稿そのものを後回しにするようになっていました。
そこで先日、SEO対策の専門家との打ち合わせで、「時間と手間がかかるので、ついつい投稿を後回しにしてしまうんですよ」と相談しました。
すると、
・ページ内リンクは、やらないよりやった方が良い
・ただし、SEO対策としての効果が非常に大きいわけではない
・設定が負担になって投稿回数が減るなら、やめて記事を増やした方が良い
というアドバイスを受けました。
仕事は「目的」から逆算して見直す
「人材育成の設計図」を始めた目的は何か。
それは、ネット検索などを通じて記事を見つけていただき、弊社へのご相談やお問い合わせにつなげることです。ページ内リンクを設定すること自体が目的ではありません。
もちろん、ページ内リンクがあれば多少は読みやすくなります。しかし、その設定に時間がかかることで記事の投稿回数が減ってしまうなら、本来の目的から考えると本末転倒です。
そこで、ページ内リンクの設定はいったんやめることにしました。すると、投稿時に毎回感じていた余計なストレスがなくなり、以前よりコラムを投稿しやすくなりました。
「やった方が良い」と「やるべき」は違う
経営の現場では、「やった方が良いこと」はいくらでもあります。
丁寧に資料を作る。
細かくチェックする。
お客様への対応を手厚くする。
社内のルールを細かく整備する。
どれも、やらないよりはやった方が良いかもしれません。しかし、会社の時間、人、資金には限りがあります。すべての「やった方が良いこと」を実行することはできません。
だからこそ、「やった方が良いか」だけではなく、「本当にそこまでやる必要があるのか」という視点が必要になります。
自社のこだわりをお客様は評価しているか
成果につながらない仕事をやめるのが難しい理由の一つは、「自分たちは良いことをしている」という感覚があるからです。特に品質やサービスに対するこだわりは、社内では否定されにくいものです。
以前、インターネットで日本の半導体企業について書かれた記事を読んだことがあります。
そこでは、日本企業が海外企業との競争で苦戦した一因として、品質に対する考え方の違いが取り上げられていました。
日本メーカーは高い品質を実現するために、厳しい品質検査を行う。その分、時間がかかり、コストも高くなる。
しかし、市場によっては、お客様がそこまで高い品質を求めているとは限りません。一定の品質を満たしていれば、それ以上の品質よりも、価格や納期を重視するお客様もいます。
もしそうであれば、会社側が時間とコストをかけて高い品質を追求しても、その努力がお客様から評価されるとは限りません。
「良い仕事」と「売れる仕事」は同じとは限らない
自分なりのこだわりを持って仕事をすることは大切です。むしろ、そのこだわりが会社の強みになることもあります。
ただし、大切なのは、「そのこだわりを、お客様がお金を払ってでも評価してくれているか」という点です。
会社側から見れば素晴らしいサービスでも、お客様から見れば「そこまでは求めていない」ということがあります。
反対に、会社側では当たり前だと思っていることが、お客様から高く評価されることもあります。
つまり、重要なのは「自分たちが何にこだわりたいか」だけではありません。「お客様は何を評価しているのか」という視点を持つ必要があります。
中小企業が仕事を見直す2つの判断基準
では、今やっている仕事を続けるべきか、やめるべきか。
私は、少なくとも次の2つの視点から考える必要があると思っています。
1つ目は、「そのこだわりや仕事を評価してくれるお客様がいるか」ということです。
そして2つ目は、「そこに時間と労力をかけることで、他に失っているものはないか」ということです。
ページ内リンクの例で言えば、設定そのものには一定の意味がありました。しかし、その作業に時間を取られることで記事の投稿回数が減るなら、別の機会を失っています。
仕事には必ず「その仕事をしている間にできなかったこと」があります。この機会損失まで含めて考えることが、経営者には求められます。
社内の「当たり前」は市場の「当たり前」とは限らない
同じ会社で長く仕事をしていると、
「これはやって当然」
「ここまでやるのがうちの仕事」
「昔からこの方法でやっている」
という社内の常識ができあがります。
もちろん、それが会社の強みを支えているケースもあります。
一方で、外部環境が変わっているのに、仕事のやり方だけが昔のまま残っているケースもあります。
特に昨今は、技術、お客様のニーズ、働き方、競争環境が急速に変化しています。以前は常識だったことが、今ではそれほど意味を持たなくなっていることもあります。
だからこそ経営者は、ときどき社内の「当たり前」を疑ってみる必要があります。
「やめる仕事」を決めることも経営者の仕事
会社の生産性を高めようとすると、
- 新しい仕組みを導入する。
- 新しいツールを使う。
- 新しい取り組みを始める。
といった「何かを増やすこと」に目が向きがちです。
しかし、限られた経営資源を有効に使うには、「何をやめるか」を決めることも欠かせません。
特に、「これは面倒くさいけれど、本当に効果があるのだろうか?」と感じている仕事があれば、一度立ち止まって考えてみる価値があります。
社内だけで考えていると、
「昔からやっているから」
「やらないよりは、やった方が良いから」
という理由で、そのまま続けてしまうこともあります。
そんな時は、外部の専門家や第三者に客観的な意見を聞いてみるのも一つの方法です。
自分たちが当たり前だと思っている仕事が、本当にお客様から求められているのか。
そこにかけている時間と労力は、得られる成果に見合っているのか。
仕事を増やす前に、まず今の仕事を疑ってみる。
「その仕事、本当に必要ですか?」
この問いを定期的に投げかけることが、限られた人員と時間で成果を出す中小企業にとって、大切な経営習慣ではないでしょうか。
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