知恵の和ノート
社員が動かないのはなぜ?指示より「問いかけ」が有効な理由(第649話)
社員が動かない時、指示を増やしても本音は見えてきません。まずは問いかけて考えを引き出すこと。それが「やりたくない」を動かす第一歩です。

「仕事を頼んでも、社員がなかなか動いてくれない」「指示を出すたびに、できない理由ばかり返ってくる」。そんな悩みを抱えている経営者や管理職は少なくありません。
社員が動かない時、つい指示を細かくしたり、自分で仕事を引き取ったりしがちです。しかし、社員の行動を妨げているのは、仕事の難しさや能力不足ではなく、その奥にある「やりたくない」という感情かもしれません。
そこで重要になるのが、指示を増やすことではなく「問いかけ」を変えることです。
社員に何をやらせるかだけを考えるのではなく、本人が何を課題と感じ、どのように考えているのかを引き出す。今回は、社員が動かない理由を「感情」の面から捉え、社員の本音や考えを引き出して行動につなげるための、社長や上司の問いかけ方について考えます。
社員が動かない時は「やる前提」か「やらない前提」かを見る
打ち合わせをしていて、話がどんどん前に進む時と、いつまでたっても話がまとまらない時があります。
その違いの一つが、「やることを前提にして考えているか」「やらないことを前提にして考えているか」です。
やることを前提にしていれば、
「どうやったらできるのか」
「何から始めればよいのか」
「誰に協力してもらえばよいのか」
といった話になります。
そのため、自然と議論が具体的になり、打ち合わせも前に進みます。
一方で、やらないことを前提にしている場合は、
「それは難しい」
「今は忙しい」
「そのやり方では無理だ」
と、できない理由が次々と出てきます。
いわゆる「ああ言えば、こう言う」という状態になり、時間をかけて話している割には、なかなか結論にたどり着きません。
「やりたい」と「やりたくない」では話し合いの出発点が違う
やることを前提にしている時、その背景には多くの場合、「やりたい」という気持ちがあります。反対に、やらないことを前提にしている時には、「やりたくない」という感情がベースにあることがあります。
そして、この「やりたくない」を「やりたい」に変えるのは簡単ではありません。
現実的には、「やりたい」まで持っていくのではなく、「やる必要がある」「やらざるを得ない」と本人が納得できる状態をつくれれば十分な場合もあります。
社員が動かない本当の理由は言葉の奥に隠れている
問題は、社員が「やりたくありません」と本音をそのまま言うケースは、むしろ少ないということです。
たとえば、
- 面倒だ
- 難しい
- やり方が分からない
といった理由が出てくることがあります。
そこで社長や上司は、
- 面倒だ→できることから小さく始める
- 難しい→一部を手伝ったり、代行したりする
- やり方が分からない→具体的なやり方を教える
といった形で問題を解決しようとします。
もちろん、こうした対応そのものが間違っているわけではありません。しかし、それでも社員がなかなか動かない場合があります。
なぜなら、表面に出てきた「面倒」「難しい」「分からない」は理由のすべてではなく、その奥に「そもそも、やりたくない」という感情が隠れていることがあるからです。
理屈だけを解決しても社員が動かないことがある
人は、必ずしも理屈だけで行動しているわけではありません。仕事の進め方が分かっていても、気持ちが乗らなければ動かないことがあります。
反対に多少難しい仕事でも、「やってみたい」と思えば、自分なりに調べたり、周囲に聞いたりしながら前に進むことがあります。
だからこそ、社員が動かない時には、「どうすればできるか」という方法論だけでなく、「本人は何を感じているのか」という感情にも目を向ける必要があります。
社員に指示するだけでは行動につながらないこともある
特に最近は、「これは会社の仕事だから、やって」と指示しただけでは、なかなか動かない社員もいます。その時に注意したいのが、社長や上司が、「分かった。だったら自分でやる」と仕事を引き取ってしまうことです。
その場では仕事が早く片づくかもしれません。しかし、同じような場面が起きた時には、また社員ではなく、社長や上司が自分で対応することになります。
これを繰り返すと、「結局、最後は社長がやる」「上司がやってくれる」という状態ができあがり、社員が考えたり動いたりする機会はさらに減ってしまいます。
社員を動かすには「指示」ではなく「問いかけ」を変える
では、どうすればよいのでしょうか。
一つの方法は、指示の内容を変えることではなく、問いかけ方を変えることです。
たとえば、新しい取り組みを全社で共有したいとします。
「この取り組みを全社で共有して」
と指示するのではなく、
「この取り組みを全社で共有したいのだけれど、どうやったら良いと思う?」
と聞いてみます。
この質問であれば、相手はまずアイデアを出せばよいだけです。自分自身がその取り組みを広げたいと思っているかどうかとは、いったん切り離して考えることができます。
そのため、「それなら、こうした方が良い」「この方法なら社員にも伝わりやすい」といった客観的な意見が出てくる可能性があります。
反対意見が出た時こそ社員の本音を知るチャンス
逆に、「それはやめた方が良いと思います」という意見が出てくるかもしれません。
その時に、すぐ否定する必要はありません。「どうして、そう思うの?」と、もう一段質問してみます。
すると、「現場では〇〇が難しいと思います」「今のやり方だと、社員が混乱すると思います」といったように、本人が課題だと感じている論点が見えてくることがあります。
ここで初めて、社員がなぜその仕事に消極的なのか、その背景を具体的に考えられるようになります。
社員の本音を引き出すために社長が意識したい3つのこと
社員との対話で大切なのは、最初から仕事をやらせようとしすぎないことです。
特に意識したいのは、次の3点です。
1.その仕事をやってもらうことを前提としない
最初から、「あなたが担当することは決まっている」という前提で話をすると、社員は身構えます。
まずは一歩距離を置き、「あなたはどう思う?」と意見を聞くところから始めます。
2.社員の意見や考えを引き出す
正しい答えを求めるのではなく、本人がどう考えているのかを知ることが大切です。
意見を聞くことで、
- 何を課題だと感じているのか
- 何に関心を持っているのか
- どのような視点で仕事を見ているのか
が少しずつ分かるようになります。
3.出てきた意見をすぐに否定しない
せっかく社員が意見を言っても、「それは違う」「そんなやり方では無理だ」とすぐに否定されれば、次から意見を言わなくなります。
特に、社員の本音を引き出したいのであれば、まずは最後まで聞くことが重要です。
「提案者=担当者」の会社では社員は意見を言わなくなる
会社によっては、社員が何か提案すると、「それなら君がやって」と、そのまま担当者になるケースがあります。
もちろん、自分の提案に責任を持つことは大切です。しかし、毎回「提案者=担当者」になると、社員は次第にこう考えるようになります。
「何か提案すると、自分の仕事が増える」
「余計なことを言わない方がよい」
すると、会社にとって有益なアイデアを持っていても、口に出さなくなります。これは人材育成という面でも、組織づくりという面でも大きな損失です。
まずは社員が自由に意見を言えるハードルまで下げる
最初から「実行する責任」まで背負わせるのではなく、まずは自由に意見を言ってもらう。このハードルの低さが重要です。
社員の発言を継続的に聞いていると、
- どのようなことを課題として捉えているのか
- どのようなことに関心があるのか
- どのような思考の癖があるのか
が段々と見えてきます。
社員の能力を活かすためには、仕事を任せることだけではなく、その人がどのように考えているかを知ることも欠かせません。
社員が自ら考えて動く会社は「聞くこと」から始まる
特に若い社員の場合、本音をなかなか口にしない一方で、ITスキルをはじめ、経営者や上司にはない能力を持っている人も少なくありません。
だからこそ、「これをやって」「この通りに進めて」と指示を出して終わりにするだけでは、その能力を十分に活かせない可能性があります。
社員が動かない時に必要なのは、必ずしも指示を強めることではありません。
まずは、
- 「どうしたら良いと思う?」
- 「何が問題だと思う?」
- 「なぜ、そう考えるの?」
と問いかけ、社員の考えに耳を傾けることです。
その過程で、本人が抱えている課題や抵抗感が見えてくれば、「やりたくない」という状態から、「それならやってみる」「これはやる必要がある」という状態へ近づけることができます。
社員を動かそうとする前に、社員が何を考え、何を感じているのかを知る。
社長や上司が「指示する人」だけではなく、「問いかけて聞く人」になることが、自ら考えて動く社員を育てる第一歩ではないでしょうか。
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